贈り物
それから何を思ったのかオズワルト公爵家からリリアーナあてに頻繁に贈り物が届くようになった。
「お嬢様~またスチュワート様から贈り物が届いています。」
「あぁ~…。ありがとう。贈り物は部屋に置いておいてくれる?それと贈り物は絶対に封を開けないでね。」
「は~い。」
リーシャはのんびりとそう返事をして贈り物の整理をしに行った。リーシャは仕事はできるのだが、どこかのんびりしていて、返事が間延びするのだ。
リリアーナまた送られてきたオズワルト公爵家からの贈り物に頭を抱えていた。
スチュワートとのあの再会をきっかけにオズワルト公爵家からは頻繁に物が届く。
離縁したリリアーナへの慰謝料とでもいうのだろうか。
それにいつも手紙もなにもなく物だけがぽんっと送られてくるのだ。なにかの意図がある気がしてならない。
(いつ贈り物を返せって言われるかわからないものね。オズワルト公爵家はそんなに財政難じゃなかったからそんなこと言われることはないと思うけど、念のため使わずに保管しておくほうがいいでしょう。)
そして贈り物のほかに変化したことがもう一つ。
「あ、お嬢様~そういえばついでに公爵様も来られています。」
「リーシャ…公爵様のほうが贈り物のついでみたいに言わないのよ。」
「へへ。すみませ~ん。」
「公爵様は、いつものところに?」
「はい~。いつものところにご案内しています~。」
そう、いつものところという
言葉で会話が成り立つほど、スチュワートが頻繁に訪ねてくるようになったのだ。
(丁寧にもてなされるわけでもないのに、なんで何度も来るのかしら…。)
実際今でもスチュワートが訪ねてきたときに案内するのは一貫して”庭”だ。
今まで一度だって屋敷に招きいれたことはない。
暑い日も寒い日も、雨の日も風の強い日も頑なに庭に案内し続けた。
それに”庭”に案内することで、いいこともある。
例えば突然雨でも降ってくれば、
「あら、雨が降ってきてしまいましたね。もうお開きにしましょう。」
と早々に切り上げることができるし、
少し肌寒い時には、
「すみません。少し寒くなってきましたので、私は先に部屋にあがらせていただきます。ごきげんよう。」
と引き上げることができるのだ。
だから、スチュワートと再会してから長くお茶を楽しむなんてことは全くないし、会話も数えるほどだ。
だからなにが目的でこう何度もスチュワートがくるのか、リリアーナは本気で困惑していた。