気に食わない
天気は快晴で庭でお茶をするには絶好の日和だが、肝心の相手が気に食わない。
しかもその元夫はまるでこの世に絶望しきったような顔をしていて、一見すると今回の離縁の被害者みたいな顔をしているのだ。
(…なんであなたのほうが被害者面なの?)
リリアーナは元夫に怒鳴りたいのを堪えて、口を引きつらせながら必死に笑顔を作った。
「あの、公爵様。私に何かお話があると聞きました。御用を窺ってもよろしいですか?」
「…。」
「…あぁ!なにか書類に不備があったとかですか?すみません、再三確認はしたのですが…。」
「…書類ではない。」
スチュワート自身が訪ねてくるくらいだからきっと離縁に関する重大な書類か何かに不備があったのだろうと思い、リリアーナは話しかけたがそれは違うという。だったらスチュワートが直接訪ねてくるとはいったい何ごとなのか。
「そうですか。ではわざわざ公爵様がうちに来られたのはどういうご用向きでしょう?」
なかなか話し出そうとしないスチュワートにリリアーナはいらだつ。
しかし、とうの本人はそんなリリアーナには気づかず視線をテーブルの上に移した。
「…公爵様か。…そうだよな。」
「?」
「…いや、失礼する。このように非常識に訪ねてくるべきではなかった。また日を改める。」
そう言うとスチュワートはすっと音もなく流れるように立ち上がると、リリアーナに礼をしてそのまま公爵紋付きの馬車に乗って去っていった。
「いや、また来られても困るんですが…。なんだったの?」
庭に一人残されたリリアーナは一人そうぼやいた。