シンギング バーズ バック トゥ オールド ネスト:10(エピローグ)
闘いは終わり、歌うたいの鳥達は自らの巣に帰る。
本エピソードは、これにて完結です!
白磁色の小鳥はぴりり、と鳴くと、魔法少女の肩に飛び乗った。
「了解しました。ドレスに接続……拡張プログラム“ホークアイ”、起動します」
艶やかに白い片眼鏡が形成されてマジカルハートの左眼を覆う。マギフラワーの視界は遥か遠景に照準を合わせ、波にもてあそばれるメタリック・ブルーの車体を捉えた。
「『ナイチンゲールから話があった通りだよ、マギフラワー』」
インカム越しにマダラが呼びかけると、視界の端にデジタル表示の数字が浮き上がる。45、50、60……。数字は瞬く間に上昇を始めていた。
「『コロッセオの発電プラントから、根こそぎエネルギーを送りこむ! だから、後は任せたよ!』」
「了解!」
波を切り裂いて、岩肌のような魚体がうねる。刃のように鋭い背びれが、尾びれが海面を切り裂き、再び海中に消えるたびに新たな波が巻き起こり、海上のホバー・バイクを激しく揺さぶった。
「やっぱり、逃げ切れないか!」
メタリック・ブルーの“ウォーターパワーフォーム”に戻った雷電はホバー・バイクを駆る。水を被りながら波の中を突っ切り、海風を受けて海上を滑った。海中に引き込もうとする水流から逃れ、突き上げてくる大怪魚の大顎をかわしながら、大きく円を描いて走り続けていた。
「この大波! コロッセオに近づけるわけにはいかない、けど……」
大鮫は恐るべきスピードで飛ぶように泳ぎ、海上の厄介者を追い回す。海岸に押し込もうとする攻勢をいなして、その場に留めおくのが精いっぱいだった。
「『マスター!』」
ヘルメットに、再びナイチンゲールの声が響いた。
「『マギセイラーの“ブルームアロー”により、陸上から“アンカーヘッド”を狙撃します。準備ができ次第お伝えしますので、どうか……』」
「わかった」
雷電は波の上から飛び出して、迫りくる“アンカーヘッド”の背中を乗り越えた。
「仕留める隙は、こっちで作る!」
背びれの一撃をかわすと、すぐに頭が突き出した。海面に打ち付けるように、大鮫がバイクに喰らいつく。
「やられるか、っての!」
雷電はジェット・パックを噴射させ、装甲バイクを水平方向に吹っ飛ばした。紙一重で獲物を仕留め損なった大怪魚は海面を大きく揺らしながら、海中に潜り込む。ナイチンゲールは淡々とカウントを続けていた。
「『80、100、120……』」
海中に引き込む、猛烈な水流! ホバー・バイクは急加速して、アリジゴクのような渦から飛び出した。けれど、これは予備動作に過ぎない。“アンカーヘッド”は海中で反動をつけ、頭上の雷電を一気にかち上げるために飛び上がってくるつもりだろう。
「ナイチンゲール! いつまで待てばいい?」
「『今しばらく。185、190、195……今です!』」
「よっしゃあっ! “ヴォルテクスストリーム”!」
ナイチンゲールの声を聞くや、雷電は左手の丸盾を海面に向けて叫んだ。
「『Vortex Stream』」
ベルトの人工音声が応えると盾の中央から、渦を巻いた水流が噴き出した。装甲バイクのホバー・パックも、最高出力でうなりを上げる。噴射された水と空気に押し上げられ、雷電は空中に浮きあがった。
かち上げた“アンカーヘッド”の大顎はバイクを仕留め損ね、機体に喰らいつく直前で勢いよく閉じられた。
大鮫は勢いよく海中から飛び上がり、錨のように張り出した頭はホバー・バイクを突き上げる。10メートルを裕に超える巨体の半分以上が露わになった時、空を飛ぶ雷電はインカムに向かって叫んだ。
「今だ!」
杖を構えた魔法少女のインカムに、雷電の声が響く。モノクルの視界にターゲット・サイトが現れた。空中に浮かんだ大鮫の頭にターゲットが固定されるのを見て、マギフラワーは音声コマンドを叫ぶ。
「“ブルームアロー”! “フルブーム”……シュート!」
杖の先に開いた花弁の中から、ピンク色の閃光が走る。極太のレーザービームはまっすぐに海上を貫き、“アンカーヘッド”の頭部に突き刺さった。
電力が全て放出され、コロッセオ内の照明が消える。音響や照明設備をコントロールする機材が次々と停止していく中、マダラは楽しそうに笑っていた。
「『ははは! やった、命中だ!』」
発達した電気エネルギーセンサーを撃ち抜かれ、大鮫は絞り出すようなうめき声をあげて魚体をよじる。全身を硬直させながら水しぶきをあげて海に落ちていくと、海中に潜ったまま沖に消えていった。
「ふう」
沈んでいく“アンカーヘッド”を見届けたマギフラワーは杖を下ろすと、ため息をついて額の汗をぬぐった。
「やった……雷電?」
「『ああ、俺は無事だ。ありがとう、助かったよ』」
呼びかけると、すぐに雷電の声が返ってくる。インカムが捉えた視界の中、穏やかな沖の海中にホバー・ボートが浮かんでいた。
巻き上げられた水流が小雨のように降り注ぎ、手を振る雷電の上に小さな虹を描いていた。
「はあっ……はあっ……はあっ!」
緑色のスカーフを首に巻いたスーツ姿の中年男が、人目を避けるように薄暗い非常階段をのぼっている。普段はぴたりと整えている前髪も振り乱し、眼鏡がずり落ちかけているのも構わず、男は手すりにしがみつきながら薄暗い階段を上り続けていた。
「『すまんな、しくじっちまった。前金を受け取ってる分、あんたの事はバラさない……と言いたいところだが』」
“穏やかなるこもれびの会”、副代表まで上り詰めた男の頭の中で、自作アプリケーションんの秘匿回線を通じて送られてきたボイス・メッセージが鳴り響くように繰り返されていた。
「『パクられちまった上、連中に恩ができたんでな、前金分の契約もチャラだ。俺たちは金のためなら何だってするが、それでもテメエの命は一つだけだからな。……その命をターゲットに、ましてやミュータントに助けられたとあってはな』」
「クソ! クソ、クソ……!」
腹立たしい! 何とも腹立たしい!
「『それでも前金の分、大っぴらになる前にバラしてやってるんだ。あんたも早いとこ、身の振り方を決めておくんだな。……じゃあな』」
「どいつもこいつも役に立たん……!」
しかし、どうする? どうしよう……!
激しく脈打つ心臓を押さえ、“穏やかなるこもれびの会”の副代表は階段を上りながら考えた。
このままでは、すぐに露見する……! 何とか証拠を隠しきらなければ……誰か替え玉を立てるか、組織の力を使って、何とか……いや、ダメだ! 代表に知られてしまえば終わりだ! あの方は何があっても、身内の不正をお許しにならない! そうなれば今度は、誰が俺を裏切るかわからない! くそ、どうすれば……
踊り場で副代表は立ち止まる。袋小路に入りかけた思考を吹っ切ると、男はニヤリと口の端を釣り上げて笑った。
「ヒ、ヒヒヒ……!」
いや、わかりきってるじゃないか! “どうすればいいか”なんて……!
副代表は両頬を膨らませると「ふーっ……!」と勢いよく息を吹きだした。汗に濡れた前髪を手ぐしでなでつけると、胸ポケットに収めていた、カード状の超小型拳銃に手を当てる。
俺が、“代表になればいい”んだ……!
痛いほど暴れる胸に手を当てたまま、男はゆっくりと、残りの階段を上っていった。突き当りの階段を僅かに開き、外の様子をうかがう。人影が見えないことを確かめて、副代表は非常扉をすり抜けた。
「はあっ……」
オーサカ・セントラル・サイトの中心部、ナカノシマ・アイランド地区に建てられた高層ビルの最上階……“穏やかなるこもれびの会”の本部は人の出入りがほとんどなく、その名に相応しい平穏な空気に満ちていた。
白い壁に作られた大きな窓から、昼下がりの陽射しが注ぐ。反対側の壁には静物画が等間隔に並んでいた。足元に敷き詰められた絨毯を踏みしめながら、男は廊下を歩いていく。
足音こそ聞こえなかったものの、自らのスーツがたてる衣擦れの音、そして騒ぎ続ける心音と乱れる息の音が、耳について離れなかった。廊下の突き当りまで歩くと、“会長室”と彫られた金属板がはめ込まれた、一際立派な造りの扉の前に立った。
「はあっ……ふーっ!」
副代表は胸ポケットに手を入れながら大きく息を吐き出し、深呼吸する。そして扉を開けようと伸ばした、その手がひねり上げられた。
「ぐっ! 何を……ムグ!」
振り向きながら、叫ぼうとした口がふさがれる。金縛りにあったように、上体をねじった姿勢のまま身動きが取れない。そして全身に走る、締め付けられるような痛み。
「ム、ムグ……!」
腕を掴まれた瞬間に全身をワイヤーが走り、縛り上げられたのだった。冷たい空気の塊が耳を撫でる。それは人の吐息にしてはあまりに冷たく、男は身震いした。
「副代表、本部への銃器の持ち込みは禁止されているはずでは?」
フイゴによる空気音が混ざるような、人工声帯によって発せられる無感情な声がささやく。口を塞いでいたカーボン製の義手が外されると副代表は大きく息を吐き出し、不快感を振り払うように首を振った。
「ふうっ、ふう……! 私は、そんなつもりは……!」
ワイヤーが巻き付けられ、直立したまま固定された男の胸ポケットから、するりとカード型拳銃がひきぬかれた。全身を義体に換装した人物が目の前に立ち、カード型拳銃をつまみ上げて、もてあそぶようにぶら下げている。
カーボン製の外皮と金属フレームから構成された無機質な顔面。義眼から放たれた光が、眼鏡のレンズ越しに副代表の目に突き刺さった。
目の前にいる相手が代表を護衛しているというサイバネ兵だと、縛り上げられた男はようやく気付いた。
「おい、それは! ……ぎゃっ!」
サイバネ兵がもう一方の手を軽く引くと、男を拘束するワイヤーが引き絞られた。副代表が短く悲鳴をあげるが、サイバネ兵は気にする素振りも見せなかった。男の釈明に耳を傾けることもなく、カード型拳銃を男の目の前に突きつける。
「このような仕込み武器を持ち込まれては、疑われても仕方ありますまい。……まあ、いいでしょう。詳しい話は、内部の方々にお任せしましょう」
指を鳴らすと“会長室”の隣室の扉が開いた。待機していた屈強な男たちがぞろぞろと現れる。“穏やかなるこもれびの会”のメンバーであることを示す、灰色のスーツに揃いの緑色の腕章。それに加えてオレンジ色のバッジを、シャツの襟につけていた。
「き、君たちは……!」
彼らは“穏やかなるこもれびの会”の内部調査を担う、監査部の精鋭部隊。これまで顎で使っていた“組織の犬”に取り囲まれ、副会長は哀れな声をあげた。
「ご、誤解だ、私は……!」
「どうぞ、後はお任せします」
サイバネ兵は押収した拳銃を監査部員の一人に渡すと、腕から伸びるワイヤーを自切した。拘束から解放されてよろめき、倒れ込もうとする副代表の両腕を監査部員たちがつかむと、ひょいと持ち上げて起き上がらせる。
「待て、待ってくれ、おい……ああ!」
絶望に満ちた哀れな声を上げながら、副代表は監査部員たちに引きずられて廊下を歩いていく。サイバネ兵がエレベーターの扉が閉まるのを見届けた時、ドアの向こうから「はい、どちら様でしょうか」と問いかける声が聞こえてきた。サイバネ兵は数回ノックした後、“会長室”の扉を開いた。
白を基調とした、清潔感のある室内。入口前に大きな丸テーブルが置かれ、その前に白いドレス姿の娘が立っている。
「イクシス様、どうかなさいまして?」
“穏やかなるこもれびの会”会長のケイカが微笑むと、サイバネ傭兵はため息をついた。
「その名前は“オモテ”の仕事では使わないと、言っているはずですが」
「あら、この部屋にはわたくし達しかおりませんわ。今は“お友達”としてお話したいと思ったのですが……かまいませんこと?」
「やれやれ」
サイバネ兵はため息をつくと、義体の顔面パーツに手を当てた。偽装用の外殻パーツを取り外すと、下から”X”と”Y”に似た形のスリットが入った、特徴的なフェイス・パーツが露わになる。
「これで構いませんか」
「ええ、ええ。……ふふふ、そちらのお顔の方がお似合いですわ、イクシス様」
「全く、困ったお方だ……」
楽しそうに笑う会長を見て、サイバネ傭兵“イクシス”は自らのフェイス・パーツに手を当てる。
「それで、どうかなさいましたの? まさか本当に、わたくしの話し相手になってくださるために、ここまで来てくださったの?」
大きな瞳が、じっとサイバネ兵のアイ・スリットを見上げている。イクシスは小さく首を振った。
「いえ、少し気になったことがあったので様子を見に来ましたが、大した問題ではなかったようです。それでは」
「あらあら。けれど、それは喜ぶべきこと、でしょうね」
踵を返して背を向けたイクシスに、ケイカは残念そうに返した。
「忠告させていただきますが、身の回りのものには注意を払うべきかと」
傭兵は立ち止まり、振り返らずに告げる。ケイカは穏やかに微笑んだ。
「ええ、大変デリケートな状況であることは存じておりますわ。今回の自治祭に歌姫様をお呼びすることを行政局に提案したことで、少なくない脅迫状も届きましたから……」
イクシスは立ち止まって、ケイカの話を聞いていた。
「でも、そのために護衛をお願いしているんですもの。イクシス様のご手腕、いつも頼りにしておりますから」
「……お任せいただきましょう」
短く返すとサイバネ傭兵は再び偽装用のフェイス・パーツを装着し、扉を開けて去って行った。
「本当に、申し訳ありませんでした! 皆さんを危険な目に遭わせてしまって……!」
環状防壁都市、オーサカ・セントラル・サイト。中心部の“セントラル・コア”から周辺部の“コロニー・ベルト”へと繋がるゲート前の広場で、“オーサカ・セントラル放送局”のディレクターが深く頭を下げていた。
「頭を上げてくださいな。雷電と魔法少女のお陰で、全員無事に撮影を終えることができたんですから」
平謝りに謝るディレクターに、チドリが声をかける。
「それに、とても良い歌になったと思っているんです、私。最近歌った中では、一番手ごたえがありましたから」
「ですよね? やっぱり、そうですよね!」
チドリの言葉に、顔を上げたディレクターは目を輝かせた。
「見せていただいた映像データよりも、もっと良い“画”が撮れたと、私も思います! それに、最後の曲の、あのコーラス……!」
「あはは……あれは、奇跡というかなんというか、ナイチンゲールのお陰というか……」
拳を握り込んで熱弁するディレクターを見て、アマネはバツが悪そうに笑う。
「そうですねえ。確かに、奇跡のようでした……ああ、いえ、すみません! 数年前、番組にオファーした女の子の歌に、あまりによく似てましてね。色々あって、その子をスカウトすることはできませんでしたが……」
「ディレクターさん……」
レンジはちらりと、バイクの上に乗ったナイチンゲールの小さな背中を見やる。
「もし、その子が……ああいや、その子みたいな歌を歌える子が、もう一度歌いたいと言ったら」
「マスター、そろそろ出発時間では?」
くるりと首を回し、後ろを振り向いていたナイチンゲールがレンジの声を遮った。
「あ、ああ」
「なるほどね。しかしまあ……素直じゃないねえ、この子は……」
タカツキのママはため息をつくと、目の前に立っていたコウジとアゲハの肩に自らの両手を乗せた。
「まあ、今日のところはここまでかね。それじゃクソボウズ、アゲハちゃん、あたしらもそろそろ帰るよ!」
「へっ? おい、何を勝手に決めてんだよババア!」
「おいおい、いたいけなばばあをここからタカツキの町まで、一人で帰すつもりかい!」
「なにがいたいけなババアだよこのクソババア! ここまでさんざん人を連れまわしておいて!」
「あんただって目的は同じだったじゃないか!」
「もう、ママったら……ふふ」
噛みつくコウジにやり返し、言い争いを始めた“宿り木”の女主人を見て、チドリは小さく笑った。
「ねえ、ママ、私も一緒に行っていいかしら? それで、久しぶりに一緒に……」
「チドリ。……あんた達は、気を付けて帰りな」
「ママ」
「あんたの歌、しっかり聴かせてもらったよ。正直言って今のあたしじゃ敵わない、あんたが出て行って、ことりもいなくなった後、すっかり汚れちまったウチの店にはもう、相応しくないと思ってしまったのさ。悪いがこのまま、うちの店に呼ぶわけにはいかないんだよ」
「ママ……」
言葉を続けられずに黙りこむチドリを見て、タカツキのママは腕組みした。
「だからさ、私が張り合うには、鍛え直さなきゃいけないんだ。それに、あんたにはもう、自分の店があるんだろう?」
「はい。……でも、また今度、会いに行きます。その時にはまた、一緒に」
目を輝かせるチドリに、ママも頷き返す。
「ああ、私もこのままじゃいられないからね。それと……」
長い首を伸ばして、レンジのバイクに乗った白い小鳥を見やる。
「あんたが、あたしらにインタビューして作られたっていう……」
機械仕掛けの小鳥はぴりり、と作動音を鳴らして顔を上げた。
「はい。私はナゴヤ・セントラル防衛軍カガミハラ基地開発部とハーヴェスト・インダストリによって開発された1.5世代型人工知能、ナイチンゲールです」
「まあ、それはどうだっていいさ。……あの時の歌、よかったよ」
ナイチンゲールはぴりり、ぴりりと鳴いて首をかしげる。
「私には……よくわかりません」
「ふん、そうかい。答えを出せたら、あんたもウチの店に来な。それじゃあまたね、レンジ。あんたも落ち着いたら、またウチの店に顔を出しておくれ」
「ああ、もちろん。その時は俺も、ママの歌を聴かせてもらうよ」
「ははは! あのしょぼくれたボウズが、一丁前になったもんだよ!」
レンジが返すと、ママは豪快に笑った。そしてひとしきり笑った後、再びコウジの肩に手を当て、おもいきりひっぱたく。
「ぎゃっ!」
「よーし! それじゃあボウズ、帰りも護衛を頼むよ」
「だから! 勝手に決めんなよババア!」
コウジが食ってかかるが、タカツキのママは知らぬ顔で楽しそうにウインクした。
「大ベテランの復活コンサートに無料招待してあげるって言ってんだよ! もちろん、アゲハちゃんもね」
「ありがとうございます、おばさま」
アゲハはニッコリとして、ママの横に並んでいた。
「それじゃあレンジさん、皆さん、お気をつけて。 ……行くよ、コウジ!」
「おい、アゲハ! 何でお前が簡単に引き受けてんだよ! ……ちょっと、待って、二人とも!」
大股で去っていくタカツキのママとアゲハを、コウジが慌てて追いかけていく。
弟の背中を見て、レンジが笑う。チドリとマダラたちも笑っていた。広場を行き過ぎる人々が驚いて振り返るが、カガミハラからやってきた一行は気にせずに、楽しそうな笑い声を響かせていた。
(エピソード11:シンギング バーズ バック トゥ オールド ネスト 了)