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特別編 劇場版ストライカー雷電:インフィニット エナジー ウォー:14

子どもたちの声援を受け、2人の"雷電"の闘いは最終局面へ。


勝負のカギを握るのは……ハイテック魔法少女?!

 レンジと向かい合ったドクトル無玄は、肩を震わせて笑いだした。


「フッ、フハハハハハハ!」


「な、なんだよドクトル無玄!」


「イヤ、ナニ、私モ思イ切リガ足リナカッタ、ト思ッテナ ……ハアッ!」


 アトミック雷電は腰のベルト……“リアクタードライバー”に手を当て、握り込んだ拳をバックラーの中央部分に叩きつけた。透明のカバーに覆われていたスイッチを、カバーを割り破って押し込んだ。


「何を……?」


 ベルトからけたたましい警告音が鳴り響く。ドクトル無玄は悠然と両腕を広げた。


「子ドモタチカラソコマデ言ワレタ以上、私モ応エナケレバナルマイ」


「『レンジ! アトミック雷電のスーツがおかしい……。さっきから、変な信号が出続けてるんだ! 気を付けて! ……ナイチンゲールは、分析に協力を』」


「かしこまりました」


「『DANGER! DANGER! DANGER!』」


 バックラー部分が破壊された“リアクタードライバー”から、ひずんだ人工音声が繰り返しまくし立てる。レンジは踏みしめた両足に力をこめ、大剣の切っ先をアトミック雷電に向けた。


「クソ、まだ何かやるつもりかよ……!」


「全力ヲ出ス、トイウダケダ。モウ、後ノ事ハ構ワナイ……“過熱”!」


「『Dead Zone!』」


 ドクトルの発した音声コマンドに合わせて、ベルトの人工音声が応える。アトミック雷電のスーツに走ったヒビの内側から、黄色の閃光が飛び出した。


「オオオオオオ!」


光に包まれて、ドクトル無玄は吼える。レンジは“ソーラーカリバー”を構えて走り始めていた。


「何をする気かわからんが、今、ここで止める……ウオオオオオオ!」


 振りかぶった大剣で打ちかかる。恐るべき質量の金属塊を肩口に叩きこむが、アトミック雷電は微動だにしなかった。レンジはすぐさま、引き抜いた大剣を構え直した。


「オオ! オオ! ウオオ!」


 連続して打ちかかるが、アトミック雷電は身じろぎもせずに受け止めていた。


「『どうなってんだよ、全然効いてないよ!』」


「現時点での分析……アトミック雷電のベルトから、異常な発熱を感知しています」


オペレーションしていたマダラが叫ぶと、ナイチンゲールが分析結果を報告し始めた。


「異常加熱は、スーツの全体に広がって……更に、体表温度が急上昇しています。マスター、お気をつけて!」


「ウオラアアッ!」


 大きく振りかぶった“ソーラーカリバー”から放たれる、一際鋭く重い一撃。アトミック雷電はぴくりと身じろぎしたかと思うと、瞬間的にかざした右腕によって、容易く斬撃を受け止めた。


「何……!」


「効カン……ハアッ!」


 腕を振り抜き、大剣を払いのけた途端、光を帯びていた全身の装甲が砕け散った。ストライカー雷電は“ソーラーカリバー”ごと弾かれて後ずさる。


「ちくしょう!」


 悪態をつきながらも立ち上がり、剣を構え直す。レンジの前に立つアトミック雷電は、陽炎のようにゆらめく光を放つ、結晶状の装甲に覆われていた。


「その、姿は……!」


「『DANGER! Melting down!』」


 結晶に覆われた“リアクタードライバー”が、ひずんだ声で叫ぶ。


「“りあくたーどらいばー”ノりみったーヲ解除シ、冷却装置ヲ停メタ。コウナッテシマエバ私ニモ、モウこんとろーるデキナイ……」


「何!」


「緊急駆動ノ暴走状態ニ過ギンガ……シカシ、コノあとみっく雷電ハ強イゾ。敢エテソレラシク名乗ルナラバ、“めるとだうんふぉーむ”トモ呼ボウカ」


 結晶に覆われた雷電は、力強く両拳を構えた。“戦闘補助プログラム”によって、動作が完全に最適化されているのだ。


「全力デ、貴様ヲ倒ス……!」


「上等だ、行くぜ! オラアアアアッ!」


 大剣を構えてレンジが駆ける。突きつけた切っ先は、強化装甲を帯びた左腕に弾かれた。アトミック雷電はすぐさま、腰をひねりながら右拳を突き出す。

 ストライカー雷電は手元から大きく逸れた“ソーラーカリバー”を強引に引き戻し、アトミック雷電の拳に向けて打ち込んだ。


「オオオッ!」


「ハアアアア!」


 大剣と拳がぶつかり合い、青と赤の火花が散る。“ソーラーカリバー”が押し切られて、再び弾かれた。アトミック雷電の拳は赤い電光を帯びながら、ストライカー雷電に迫る。


「くそっ!」


 強打を撃ち込まれる前に、ストライカー雷電は飛び上がっていた。アトミック雷電の拳を踏みつけるように蹴ると、勢いをつけて後ずさった。


「『なんてパワーだ……!』」


「けど、まだやれるぜマダラ!」


 アトミック雷電の装甲に、黄色と赤の光が走る。怪しい光はマントのように、広げた両腕から伸びて揺らめいた。


「無駄ダ。明ラカニ出力ノ足リナイソノすーつデハナ」


 ストライカー雷電は全身に青白い電光を走らせながら立ち上がり、メタリックグリーンの大剣を構えた。


「パワーが足りなくても、こっちはまだまだ動けるんだよ! ……行くぜ!」


 二人の雷電は再び街道を走り出した。ストライカー雷電は走りながら殴りかかるが、アトミック雷電は平然と受け止め、自らの拳を振り抜く。ストライカー雷電は攻撃をかわして走り抜けると、再び戦闘態勢をとった。


「チョコマカト、ヨク動ク……!」


 あらゆる方向から放たれるレンジの打撃を、アトミック雷電はことごとく打払ってストライカー雷電を追う。林間の暗闇の中、青白い光と赤黄色の光が激しく散らばり、鬱蒼と茂る枝葉を浮かび上がらせた。


「効カン! 効カンゾ!」


「この……っ!」


 走りながらの殴り合いは続く、しかし……相手の攻撃をいなし、腕甲で防ぎ、あるいは胴当てに直撃を受けても平然と走り続けるアトミック雷電に対して、ストライカー雷電はアトミック雷電の攻撃をかわし続けるしかできなかった。


――受け止めるには、あの打撃は重すぎる。今は牽制と逃げに徹しながら、どこかに隙を、決め手となる一撃を入れられそうな弱点を見つけるしか……!


「マスター、アトミック雷電の高温化が止まりません!」


「『データがそろってきた……雷電、アトミック雷電はものすごいペースでエネルギーを消費してるみたいだ。それにしたって、こんなにハイパワーの稼働を続けられるなんて信じられないくらいだけど……』」


「けど、いつか使い切るんだろ、ヤツのエネルギーも!」


 分析するマダラに、レンジが叫ぶ。ドクトル無玄はボイスチェンジャーで加工され、ひずんだ声をあげて笑った。


「フハハハハ! ソウダ。コンナ、いれぎゅらーナ運用デハ遅カレ早カレ、燃料棒ハ焼ケ落チル。本来ハ、ホボ無限ノえねるぎーげいんヲ誇ル、コノ“りあくたーどらいばー”ノナ……。ダガ、ソノ前ニどらいばーガ限界ヲ迎エテ爆発スルゾ!」


「何だと!」


「ソシテ、燃料ニ使ワレテイル汚染物質ガ広範囲ニマキ散ラサレルノダ! ハハハ、ハハハハ……!」


 森を抜け、頭上には月に照らされた千切れ雲が浮かぶ。そして行く手には、星のように群れてきらめく光……。


「オイカケッコハココデ終ワリダ、すとらいかー雷電!」


 アトミック雷電のベルトから、危険を告げるビープ音が鳴る。装甲に走る亀裂に沿って赤い光が漏れ出し、怪しく点滅をはじめていた。


「あとみっく雷電ハ、既ニ限界ヲ迎エテイルノダヨ。ソシテ、コノ先ハおーつノ港……勝負ダ、すとらいかー雷電! おーつノ町ヲ、爆発ニ巻キ込ミタクナイノナラナ……!」


 坂を下りた先に広がる大湾口と、海岸に沿って広がる光の帯……港湾交易都市、オーツ・ポート・サイトの夜景を望みながら、二人の雷電がぶつかり合う。

 続けざまに放たれる蹴りに、打撃に、そして大剣の直撃に、結晶状の装甲が細かく砕けて散る。しかしアトミック雷電は動じず、大剣を払いのけた。


「何っ!」


「ハアアアアッ!」


 深く踏み込んで放たれる、赤い電光を帯びた拳。ストライカー雷電は体をねじらせ、バネのようにして飛びのく。


「くそっ、まだ……!」


「遅イ! ハアッ!」


 すぐに間合いを開けて構え直そうとするが、アトミック雷電も追いついていた。空中のストライカー雷電めがけて、追撃とばかりに蹴り上げた。


「このっ!」


 ストライカー雷電は大剣を盾にして構える。しかし赤い電光を纏った一撃は重厚な刀身を砕き、レンジの腹に突き刺さった。


「がはあっ!」


 吹っ飛び、転がっていくストライカー雷電は歯を食いしばりながら立ち上がる。


「はっ、はっ……! やっぱり直撃はヤバいな……!」


「フン、マダ動ケル癖ニ、ヨク言ッタモノダ。ダガすとらいかー雷電! コレデ思イ知ッタダロウ。貴様ノ攻撃ハ、私ニハ効カン」


 ストライカー雷電は、腰のベルト……“ライトニングドライバー”に取り付けられたレバーに手を当てた。


「くそ、せめて昼間みたいにもっと、もっと出力を上げることができたら……!」


「ハハハ……ハッハッハ! 真夜中ニ、ドコカラ光ヲ浴ビルコトガデキルトイウノカネ、すとらいかー雷電! 太陽ガ沈ンダ時点デ、貴様ノ負ケダ!」


 ビープ音が響く中、アトミック雷電が笑う。


「ダガ、逃ゲマワルノヲヤメタノハ、ヨイ心ガケダ。コレデ私モ、おーつノ町ヲ道連レニセズ、貴様ヲ倒セルトイウモノ……!」


「ちっ、この野郎……!」


 アトミック雷電が両拳を構える。レンジが迎え撃とうと折れた“ソーラーカリバー”を放り捨てようとした時、ヘルメットにピロリ、と通話回線が開く音が響いた。


「『もしもし、レンジさんですか?』」


「その声は……オノデラ保安官?」


 レンジは戸惑い、通話を続けながらも、殴りかかってくるアトミック雷電の拳をかわした。


「貴様ッ!」


「『闘いの様子、巡回判事殿と一緒に見せてもらっています』」


「アマネと? えっ、アマネって、そっちに行ってるんですか!」


「『ええ、こちらの捜査にも協力してもらっていて……ああ、いえ! 今は、そうではなく……!』」


 通話を続けながら、レンジは攻撃をかわし続けた。“逃げ”に徹するストライカー雷電に、アトミック雷電は苛立った声をあげる。


「クソ! マタ、チョコマカト……!」


「『その、巡回判事殿が“レンジさんの助太刀をする”と言って、飛び出していってしまったんです。それで、メモが置いてありまして……“何とかなる方法がわかったから、もうちょっと粘って欲しい”と……』」


「何だって?」


「何ヲ喋ッテイル、すとらいかー雷電! 私ト、闘エ!」


 アトミック雷電が拳を振るう。通話を終えたレンジは、するりとすり抜けるように打撃をかわした。


「おっと! すまん、ドクトル無玄。だけどお陰で、頭が冷えたぜ」


 レンジは折れた大剣を放り捨てると、両手の拳を握り込んで構えた。


「フザケルナ!」


「ふざけてなんかないさ!」


 怒りの声をあげたアトミック雷電が駆ける。激しく撃ちつけられる拳の嵐を、ストライカー雷電はするするとかわしてみせた。


「クソ! クソ! クソ! 何故ダ、何故届カン! ドウシテ今サラ、ソンナ動キガ……!」


「違うな。頭に血がのぼって、あんたの動きが単調になってるんだ」


「ナンダト! グググ……!」


 尚も怒り狂うアトミック雷電は、レンジを睨みながら足下の港町を指さした。


「貴様! 貴様ガソノママ逃ゲ続ケルナラバ、アノ港町ヲ……何?」


「えっ?」


 ドクトル無玄が我に返ったような間の抜けた声をあげたのに驚いて、レンジも振り返る。

 ビワ・ベイに臨むオーツ・ポート・サイトは相変わらず、星の粒を散らしたように人々が灯をともしていた。そして、その先の海中から、せり上がる小山のようなものが……


「アレハ……?」


「あれは……!」


「マスター、望遠スコープでとらえた映像を表示します」


 レンジのバイザーに、映像のウインドウが表示される。それは、深く黒い海面から突き出した、白銀のカイジュウ……!


「メカ・リヴァイアサンだ!」


「ソウカ、アレガ……」


 ドクトル無玄が思わず感心した声をあげた時、レンジのインカムに新たな通話回線が開いた。


「『ストライカー雷電!』」


「その声は……マギフラワー?」


「……捉えました。映像、拡大します」


 ナイチンゲールの声とともに、望遠スコープの映像が更に、メカ・リヴァイアサンに近づいていく。ズーム・インされたメカ・カイジュウの肩の上には、大きな水の球体を抱えた、水色の魔法少女の姿があった。


「『残念でした、今の私は……』」


 映像の中で、魔法少女が口をパクパクと動かした。


「『“嵐を砕く光の大波! マジカルハート・マギセイラー!”』」


 滝アマネ巡回判事が変身する、もう一つの魔法少女……“マジカルハート・マギセイラー”が名乗りをあげる。

 立体プロジェクターによって投影された水色の爆風がマギセイラーの周囲に噴きあがり、夜の海にカイジュウの上半身を浮かび上がらせた。


(続)

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