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7話 変わらない自分

 馬車の動きが再開し、しばらくの時間が経った。

 鼓動が早く、落ち着かないハルタをエレナはさすり続けた。


 結局、俺には何も出来なかった。

 気取った事を抜かして置いて、結局は誰かがいないと駄目なんだ。情けない。情けなくてたまらない。


「ははっ。」


 これは自分への嘲笑だ。自分は何も変わってない。この不死身の力を手に入れて、何かが変わったとそう思っていた。

 でも、そんなわけなかった。結局の所、死んだら生き返るだけの力だ。無力な自分がそんな力を得ても何の意味もない。ただ、無駄にしぶといだけだ。




「本当………何で俺なんだよ」


 何で何も無い俺を選んだんだよ。もっと俺よりすごい奴なんていくらでもいただろ。


「俺じゃ無くてもいいだろ……。」

「ハルタ君?」

「–––––何でもない。」


 ハルタは目を閉じ、思い出す。


 –––––そうだ。こんな俺でも、この力で守れたじゃないか。


 アリル。あの時、俺がいなかったら彼女はもう……この世にはいなかったかもしれない。


 こんな俺でも、彼女を助ける事が出来たんだ。なら、それでいいじゃないか。


 それでも今回の花豚のようにもっと強い敵が現れるかもしれない。

 だから俺はもっと強くならなくちゃいけない。もう一度、アリルを。エレナを。みんなを守れるように。


「今は、変わらない今の自分に向き合おう。」

「どうしたの?ハルタ?」

「いや、決心しただけだ。二度目の決心をな。」

「それでさっきの事を言ったの?」

「あぁ。まだ頼りないけど、いつか強くなって足を引っ張らないようにがんばるからこれからもよろしく頼む。みんな。」


 ハルタが真剣な顔で二人を見る。それを見たアリルとエレナはお互いを見て微笑む。


「えっ、な、何?」

「だって、今更じゃない。」

「だから改めてと思って……。」

「そうですね。それでは私も改めて、アリル様のメイドとして、精一杯務めさせていただきます。」

「ふふっ。頼りにしてるね。エレナ。––––それじゃあ私も。こんな頼りない私だけど、これからも一緒にいて欲しいです。」

「……は、ははっ。」


 笑いが込み上げてくる。それにつられ、二人も笑う。


「––––確かに今更だな!はははっ!あんだけ変に考えてた自分が馬鹿らしくなって来た……。」


 語り、笑い、悩んでいた物が吹き飛んだ。こうやって少しずつ変わっていけばいい。それでいいんだ。

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