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14話 勇気

 ハルタが立ち向かう魔獣は異世界に来た初日に見た人より大きな狼だ。


「あの時は腕を持っていきかれそうになったけど今の俺には戦う術があるんだよ!」


 折れた剣で魔獣を斬る。

 エレナに貰った力の実の影響だろう。魔獣が簡単に斬れる。


「おらッ!!」


 一方でトレイタも己の拳を鋼に変えるネロ・ハンドで魔獣を地面に叩きつけていく。


「この調子なら、なんとかいけるか!?」


 魔獣を斬りながらそう言ってると、一瞬の隙が出来てしまい、魔獣の進行を許してしまう。


「があッ!!痛てぇッ!」


 魔獣の爪がハルタの太ももを斬り裂く。幸運な事に傷は浅かったが、それでも痛みは鋭く、ジリジリとハルタを襲う。


「ぐッ–––––!」

「ハルタ君!」


 エレナがハルタを心配し、近づこうとするが、


「来るな!!」

「ハルタ君……。」

「後は任せろ。エレナとは話さないといけない事がいっぱいだからな。それまでの間休んでろ。」


 震える足を動かし、向かってくる魔獣達を斬り倒していく。

 途中、体勢が崩れそうになったが、なんとか立て直し、魔獣の群れを睨む。


 凄く痛い。足も震えるし、涙も出てきた。それでも–––––。


 戦え。


 戦え。仲間を守る為に。


 戦え。仲間の笑顔を見る為に。


 地のマジックリングでハルタと魔獣を囲うように壁を作る。


 壁の外にいる魔獣はトレイタに任せよう。


「うおおおおぉぉぉぉっ!!」


 真夜中の森で雄叫びを上げ、ハルタは魔獣に立ち向かう。


 怖い。また俺は死ぬかもしれない。でも、それでも俺は仲間を見捨てたくない。


 壁の中にいる魔獣の数は三体。一体ずつなら倒す事は可能だが、三体同時に襲ってきたら、どうなるかわからない。


––––勇気をくれ。俺に。



 一体が飛び込んで攻撃を仕掛けて来た。


「ぐッ!」


 それを避けようとするが、完全には避けきれず、腕に掠る。

 痛みに耐え、一体の魔獣を斬る。そのすぐ後、攻撃してきた魔獣の体に剣を刺す。

 だがこれだけでは殺す事は出来ず、剣を抜き、今度は顔に突き刺した。


「ぐがッ!」


 突き刺している間、身動きが出来ず、もう一体の攻撃を許してしまう。

 魔獣はハルタの左腕を喰らいつき、離さない。


「クソッ!離れろ!!」


 剣を抜き、噛みついてくる魔獣の顔に刺し、足で魔獣を蹴り飛ばす。


「–––––痛てぇッ……!でもこれで壁の中にいる魔獣は倒した。」


 倒したはいいが壁はまだ崩れず、トレイタの応援に行けない。


「ゔッ……」


 足と……特に左腕が痛い。血がどんどん溢れてきてる。


 ハルタは光のマジックリングで、傷を癒そうとするが、完全に治す事は出来ず、継続して痛みがハルタを襲う。


 意識が朦朧とする。


「駄目だ。ここで意識を失うわけには……いかないんだ………。」


 だが、ハルタは薄れゆく意識には逆らえなかった。


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