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プロローグ
生とは死より辛い物だと、まだこの時の俺にはわからなかった。
***
熱い。
固い地面はひんやりしているのだが、体中が熱い。熱くてたまらない。
手を胸に当てて彼はようやく自分の今の状況に気がついた。
––––刺されたのか?
胸を刺されたと自覚した瞬間。想像を絶する痛みが彼を襲った。
「痛い!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!」
そして口から言葉だけではなく、赤い液体を吐き出す。
––––血だ。血を吐いたのか。
徐々に視界が赤く染まっていく。
苦しい。死ぬのか?俺は。
死の恐怖に体が震え始める。血も大量に吐き、胸の出血も止まらない。
「あ–––っ」
死にたくない。と口に出そうとしたが、もう。まともに喋れなくなった。
やがて意識も朦朧とし、ゆっくりと目を閉じる。
次の瞬間。彼–––––海堂春太は命を落とした。
はずだった。