66部
「民主主義とはなんだと思う?」
暗がりの中から北条に向かって問いかける。
「民意を汲み取り望まれる政治をする事なのではないですか?」
北条がそれらしい事を答えてくる。他にも数人がいるから本音は出して来ないだろう。この問答すら用意されたものだ。
『本当に政務天皇は存在するのか?』と考えるもともとグループではなかった者達の声が強くなったためにわざわざ政務天皇として総務大臣の北条とのやり取りを見せている。
希望者に限った立ち会いではあるが、政務天皇が存在する事を印象付けるためのパフォーマンスとしては効果はあるだろう。
「なぜ、それを聞かれたのですか?」
北条からの問いも決められていたものだし、返答も決まっていたが、北条を驚かしてあたふたさせた方が立場を示せるのではと思い用意した答えではない事を言った。
「民主とは名ばかりの専制政治の事だと私は思う。
では、民とは誰だ?日本の人口は一億二千万人くらいいる。
この全てを民とするなら民意を汲み取る事など不可能だ。
皆が自分の都合の良い政策を望み対立しまとまるはずもない。
そんな事は民主主義を唱えたどの偉人も理解していただろう。
つまり、最初から幻想なのだ。
民とは国に住む者の上層である金持ち達の事であり、その意味では明治に作られた選挙法は的を得ていたのではないか?
税金を多く払っている者という条項がそれにあたる。
国家が救済すべきは上層ではなく、自らの力で立ち直る力を持たない最下層の者達だ。下層をなくし中層を維持しつつ上層へと成り上がる機会を与え続ければ経済は活性化し、相対的に国力が上がる。弱者を切り捨て強者の声しか聞かないなら民主主義国家などと名乗る事自体が国民の幸せを願った思想家達への冒涜だと私は思う。
全てを叶える事ができなくても意見を求める事はできる。
よって、新政策として経済的貧困者への職業斡旋と強制就職を行う。本人の希望、適正を考慮しながら働かない者を出さない社会にする。教育法の改善により将来の子供達には職業選択ができるように準備しているが、大人は放置状態になっている。
就業支援から技術獲得支援までサポートする制度の構築を急がせろ。あと世にいうブラック企業の駆逐を急げ。
最低賃金×労働時間以下の給料しか払っていない、社会保険や各種保険に適正に入っていない企業はブラック企業と認定し、会社の解散を命じる事ができるように会社法の改正も行う。
それに伴い公認会計士と弁護士、検事を選出し審査機関も創設。
解散命令に関する正統性が欠如しないように審査は各資格の剥奪を担保として行わせる事にする。」
「それはつまり、不当な解散命令や間違った根拠による解散命令を出した場合は弁護士・検事は司法試験合格を取り消して永久にそれらの職につかせないようにする、公認会計士も資格剥奪とする事で苦労して手に入れた資格と職を辞めさせるということですね?」
「不正の代償は厳しくなければならないからな。」
その後も新政策について話し、他の人が退席すると北条と二人になった。
「山本警部がチョーのところに言ったみたいですよ。
なぜ、雄二の時のようにしなかったんですか?。」
「暴露してくれる人は必要でした。
私や君が何をいおうと変わりませんが、チョーの言葉は人を変えるための力がある。そう思ったら殺すより生かす方が得に思えただけですよ。」
「計画に狂いは?」
「全くないです。」
自信を込めて言いきった。懸念事項はあるが辞めるわけにもいかないから強気に見せたし、自信を打ち破って勘ちゃんが目の前に現れてくれるのを心のどこかで願ってさえいたからだ。




