表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/77

55部

『厳戒態勢のなか釈放された5名は政府の巧妙な作戦により、行方がわからない状況になっています。5名のうち家族で生活していた2名は家族と共に引っ越しておりまったく行方がわからない状況であり、坂本氏・五條氏・笹木氏は元の住所にも戻っていない事が確認されています。』

マスコミとしては釈放者の詳細を報道する事に全力をかけたが、それを阻止されたことに対しての恨み節が所々に見られた。

ダミーの送迎車を使い、業者の車に乗せていたことで誰一人として追跡できなかった。記者会見の予定もなく、彼らはこのまま一般人として暮らしていく事になりそうだ。

また全てのマスメディア並びにネットに対しても、釈放者5名の顔写真の使用を禁止し、違反した場合には一回の使用に対して300万円の罰金、ネットに載せた人も特定され、最高で100万円の罰金が課されるかなり厳しい措置がとられている。人の記憶は曖昧なので、顔写真が繰り返し流れない限り、釈放者の顔をしっかりと覚えている人も減らせて、社会復帰に対する助けとなるだろう。

山本はテレビの音声を聞きながら、目の前に座っている二人に視線を向けた。

「行方不明のうちの二人が目の前にいるって、マスコミに言ったら、いくらくれると思う?」

五條と坂本は苦笑いを浮かべ、五條が

「じゃあ、僕はマスコミの提示額の2倍出してでも止めて見せますよ。」

「そもそもの話が金で動くような人にわざわざ会いには来ませんけどね。」

坂本が言った。

「それで?俺に用ってなんだ?」

山本が聞くと坂本が真剣な顔をして、

「白髪で髪の長い老人を探して欲しいんです。」

「注文が大雑把すぎるぞ。

探せば結構いそうな特徴じゃないか。」

「男の名は『成宮』を名乗っていましたが、本名は土屋というそうです。

成ノ宮として我々に会いに来ましたが、役割を終えたと言ってました。」

坂本が言ったことに山本は目を見開いて

「それは本当か?」

山本の勢いに二人とも驚き、五條が

「はい。自分の命は軽く、いつ東京湾に浮いていてもおかしくないと言ってました。」

山本は顎に手を当てて考えて警察手帳に挟んでいた一枚の写真を取り出して二人に見せ、

「その男はこの写真の人物か?」

かなり画像が荒く、わかりにくくはあったが、刑事施設の面会室で会った男だとわかり、

「そうです、この男です。」

坂本が言い五條が不思議そうに

「なんで山本さんがこの人と一緒に映ってるんですか?」

「うちの課の伊達が怪しいと思って隠し撮りしてたらしい。

俺が匿われた施設の所有者がそのジジイだと思って調べてたら、土屋と言う名は出てきたがまったく別の人物だった。

残念ながら、その土屋にも現在連絡はとれてないけどな。

で、この成宮って男も探してたが、一向に見つかってない。」

「成ノ宮の影武者だった男が本物の土屋で、別の土屋が成ノ宮本人または別の影武者って可能性が高そうですね。」

坂本が言い、五條が

「この白髪の老人は既に亡くなっている可能性が高いですね。

色々と知っている感じでしたし、自分でも殺されると思っていたようです。」

「わかった伊達と片倉に頼んでおく。

公安に顔がきくあいつらの方が見つけやすそうだからな。」

「よろしくお願いします。」

五條がいい、山本が

「何でこの老人を探してるんだ?」

「単純に教えて欲しいんですよ。

なぜ俺達を釈放したのかを。

この人は僕らを試金石と言いました。

僕らが釈放された事によって何かを試そうとしている。

何を試したいのかはわかりませんけどね。」

坂本が言うと山本が

「わかった。とりあえず、色々な事の重要参考人として話を聞く必要がありそうだな。探してみる。

それで、お前らはこれからどうするんだ?」

「隠れてる訳にもいかなそうですし、挨拶しないといけない人もいますから、

でも最終的には海外にでも移住したいですね。」

「金はあるんだろ?

すぐにでも飛べばいいじゃないか。」

山本が言うと坂本が

「海外で僕らが変死体で発見されても大事にならないでしょう。

でも日本なら簡単には手は出せないと思うんですよ。

高杉大臣の作った暗殺部隊はおそらく規模を全世界に広げながら大きくなってると思います。今は誰の指示で動いてるかわからない以上、僕らが標的にならない確証が出るまでは隠れてるしかないですね。」

「そうか…………、暗殺部隊について詳しく話せることは?」

「ないですね、新聞とかで海外事情を見てて、これは奴らの仕事だと思っただけですから。」

「わかった。こちらからも何かわかったら教えるから、お前らも何かあったら連絡してくれ。」

山本が言うと二人は黙って頷いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ