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53部

『恩赦に関する投票が締め切られ、現在は警察官の立ち会いのもと法務省の職員が集計を行っている状況です。明日の午前中には会見が行われ、釈放が決まった受刑者の出所手続きが行われ、明後日には釈放される見込みとなっています。』

テレビのニュースを見ながら厚生労働政務官になり忙しい毎日を送る大久保はため息をついた。賭け事は正直いって嫌いだが、結果のわかっているできレースにはより嫌悪感を強く感じる。

釈放される事が決まっている人間のために投票を呼び掛け、この投票自体に文句を言う役割を任された者達による『専門家の意見』が世の中に溢れだしている。

舞台の裏側を知ることによって、更に舞台を楽しめると話していた舞台関係者がいたが、ストーリーがわかりきっている側からすれば裏側がどんな状態であっても冷ややかな目でしか見れないと思う。

彼らが釈放されても世間は一時のお祭りを催し騒ぐだけで、すぐに飽きて次の祭りの準備をするだろう。

皆が踊りやすい音楽をかけ、自分達の踊らせたいように踊る人達を見て笑っている人間がいるとも知らずに。

踊らせる側としては、アドリブや多少のイレギュラーがあった方が楽しめるのではないかと思う。

坂本も五條も結局は影山に踊らされただけで、せっかくのエリートコースを無駄にしている。彼らの能力があれば釈放された後でもやり直す事はできるだろうが、彼らの性格からどのように行動するかは大体の見当がつく。

そんなことを考えていると電話がなった。

相手は数少ない国会議員の中でも本音を話せる相手である。

「もしもし……………」

こちらが落ち着いて対応しようとすると向こうはかなり慌てた様子で

『大久保君、我々は嵌められているのかもしれない。

あの試験にさえパスできれば成功を約束されたものだとばかり思ってた。

だが、結局は北条総理の独裁だったんだ。』

大久保は何を今さらと感じたが、そもそもの話が彼は一般から政治家資格試験に合格した人であり、政権の真の移り変わりを知らない人でもある。

「落ち着いてください。北条さんが前面に立たれているだけで、政策決定は政務天皇が行われてます。独裁しているとするなら政務天皇ですよ。」

『そうかもしれないが、私の手に入れた情報では黒木議員が近々職務を停止させられるらしい。彼は北条総理に楯突いてきた過去がある。

北条総理の意見が通っている証拠じゃないか?』

「重要な役職の北条さんの意見が通っているのは仕方のないことです。

あっと、すみません、次の用事がありますのでこの話はまた後日にしましょう。

くれぐれも軽挙な行動は控えてくださいね、」

大久保はそう言うと電話を切った。特に用事はないが黒木さんが重要な役職につかなかった事や今の話は今後の自分の立場を決めるのには十分な材料に感じた。

イレギュラーは自分が知らないところで起こっていた。そう考えると少し面白味が出てきたように大久保は感じた。

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