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47部

『恩赦というシステム自体が本当に必要なのか、従来通りに天皇の代替わりがあったからと言って、当然のように継承する必要性があるのか。しっかりとした議論の末に決めても良かったのではないかと私は思います。』

国会内で記者からの質問に答えた黒木俊一が映っている。

インタビュー映像が終わりアナウンサーが

『犯罪者の更正という大きな問題はありますが、更正のために刑期満了を待たずに出所させるという行為が被害者感情として許容できるのかなどの問題もあると思います。

この問題についてはいかがですか?』

アナウンサーに話をふられた専門家が

『受刑者の更正は、受刑者本人のためだけでなく、受刑者の家族や友人にも深く関係していますし、改善更正したからこそ被害者への安心感だったり、次の被害者をうまない事に繋がったりするわけです。

恩赦の意義のあり方に関する議論は今後も必要になってくるとは思いますし、伝統的な儀式を継承することについても必要性は考慮しなければいけません。

なぜなら、国家が動くという事は国民の税金を消費するからです。

正直、信頼を失った政府に税金を払いたくないと思う国民は非常に多く、現在の政府に関しても信頼の回復は未だになせていません。

ですから、税金の使い道は慎重に議論し国民の反発には耳を傾け、浪費しない事が重要です。

使えない兵器の購入や何の役にも立たない物品の配布などは明らかな浪費ですし、国費を使って総理経験者の葬儀を行うなど言語道断です。もっとお金を使うべき事が山積みなのに1億円近くを使うことの正統性等ありはしません。

保育士や看護師の給料に助成金を出すことに使った方がよっぽど意味のある消費になると私は思いますね。』

『そうですね。税金の使い方に関しては今までも少し納得できない事とかもありましたから、政府には今後しっかりとして頂きたいですね。

黒木議員が最近、政府に対する苦言が増えたように思いますが、その点ではいかがですか?』

アナウンサーが聞き、専門家が

『国会議員資格の導入や様々な法案に関係してきた彼だからこそ、変えなければいけないことや必要な理解を得ることを重視しているんだと思います。

 彼は思ってないみたいですが、法務政務官も彼が本命だと見ていた学者は多かったですが、ふたを開ければ全く別の人物でしたしね。

まぁ、思うことはたくさんあるし、発信力を持って政府に疑問を抱き投げ掛けられる人がいるというのは国民にとって良い事なんじゃないですか。』

専門家が言った所でテレビの電源を切った。

決められた台詞を淡々と発言する役者とは見ていてこれほどつまらないものか、アドリブの一つでも入れてこちらを笑わせようとは思わないのかと思う。

「そんなに楽しい番組でもなかったでしょう?」

北条がニヤニヤしながら聞いてきた。

「俳優という仕事は実に尊敬すべきだと思いましてね。

魅せる演技や華やかな見た目。

生きているだけで素晴らしいと思いますから、寿命がつきるまでは輝きが陰ったとしても頑張って生き続けて欲しいものです。」

「どんな人間でも生きる事は自由です。

自分を害する人間とは関わらなければ良いし、時には聞き流すというスキルを身に付けるのも大事な事です。

あなたも自由に生きたらどうですか?」

北条は真剣な顔で言った。

「私が自由に生きたらこの国の何人が生き残れるかわからないような粛清が始まるかもしれませんよ?」

「それならそれで止めに来る人がいるでしょう。

大事なのは、自分に向けられた言葉が善意か悪意なのかを公正に判断する能力を身に付けることです。

批判なのか助言なのか、受けとる側の気分次第でどちらにもなり得ますからね。

まぁ、あなたは批判されても物ともしない強靭な心を持っているので関係ない話ですけどね。」

「そんなことは決してないよ。

黒木雄二という友を殺して、次もやらなければいけない。

彼が病気で亡くなれば話は速いが最近は元気みたいだしね。」

「長田が生きていても関係はないのではないですか?

彼の事は私が一番よく知っています。

あなたの情報を漏らすような人間ではないですよ。」

「私が気にしているのは、情報漏洩じゃなく新たな野心をもって牙を剥かないかということなんですよ。」

「それをいうなら真っ先に狙われるのは北条家の誰かでしょう?」

北条が冗談混じりに言った。

「北条家の役割は事後処理ですからね。

黒木君とともに荒地を整えるのを頑張ってもらえればと思ってますよ。」

「慶喜、本当にこのままで良いのか?

今からなら軌道を修正できるぞ?」

「北条君、残念ながら僕は孫にすべてを背負わせたくない。

彼に捕まり、この醜い連鎖に終止符を打つよ。

国民の選択は選挙のように、今後の日本を選択する。

国民一人一人が考え、選んでこその民主制だよ。

どこの家の生まれだとか、金持ちだとか、貧しかろうが関係ない。

我らが占拠した政府を崩せる選択を国民がしてくれることを僕は願っているよ。」

立ち上がり、ドアへ向かう。北条はまだ何か言いたげたったがそのまま見送ってくれた。

また一人、幼馴染みがこの世から消える、いや消すために重々しい一歩を踏み出した。

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