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「本日は、天皇の即位に伴い恩赦の発表を行います。
恩赦とは、天皇の即位に伴い受刑者の中から仮釈放期間に到達しており、厳正な審査の結果として受刑者が釈放されるというものです。
その歴史は古く、天皇の即位に伴って徳政令という借金を帳消しにするような対応がとられていた時代もありました。
現代では金融業が国民の職業の一つとなっているため借金の帳消しなどはできませんが、国民の生活を見直す機会となっている事に変わりはありません。
従来の恩赦は前提条件に仮釈放期間を過ぎている事が挙げられていました。
ですが、今回は新たな取り組みとして政府の作成した基準により、仮釈放期間に到達していなくても国民の皆様の判断で恩赦を受けられる者が決まる制度を構築いたしました。
インターネットと郵送を使い、恩赦候補者の犯罪名・刑期・犯罪の動機・刑務所内での様子などを公表します。
各候補者の説明文のすぐ下に◯か×を記入していただきます。
候補者を釈放するべきでないと思えば全員×でも構いません。
犯罪をやりたくてやった人間に生きている価値はありません。
ですが、致し方ない事情や理不尽に立ち向かうために犯罪を行った人もいます。罪を反省し、やり直すために必死に生きている人達には手を差しのべていかなければいけません。
インターネットでの投票の仕方は、まず法務省のホームページに進んでいただき、トップページに『恩赦投票』というリンクをつけてありますのでそちらをクリックしていただくと、有権者番号の入力ページに移ります。
有権者番号は明日以降、住民登録をされている住所に向けてお届け致します。
住所のない方はお近くの役所に行けば教えて貰えます。
有権者番号の送付と共に手書きでの回答書類も同封しております。
インターネットが苦手な方は手書きをして頂き、郵便局にお持ちくだされば、それで回答が完了致します。
回答状況などは法務省のホームページで順次公表しておりますし、投票者数の8割が◯でなければ恩赦候補からは外れてしまいます。
投票ができるのは選挙権と同様の18歳以上である人です。
残念ながら、一時在留資格の外国人にはこの投票に参加する権利は与えられていません。
恩赦の候補に関しましても対象は日本人である事です。
日本人が恩赦で解放される日本人を選ぶ制度となっています。
投票は明日より2週間の間でお願いします。
それを過ぎた場合は、投票したことが認められません。
注意事項をしっかりと確認した上で誰かと相談する事もなく、自分の意思で投票してください。
明日からテレビなどのメディアで各候補者の特集が行われる事もあると思います。
一面からの情報だけでなく、色々な情報を自分なりに考えて投票してください。
それでは、会見終了後に法務省の官僚の方から改めて候補者の紹介を行います。
私の会見は以上で終了致します。ありがとうございました。」
北条が頭を下げて、会見場を後にしようと歩き出すと、北条とは逆にこれから会見する法務省の官僚である姫地とすれ違った。
姫地は物凄い形相でこちらを睨んでから会見の場にたった。
ああ、彼は黒木雄二を崇拝していたのだったと思い出して睨まれた理由に頷きながら会見場を出ていった。




