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35部

「本日は司法制度の改革についてです。

 まず始めに、検察組織については完全独立機関として設置し、従来の内閣総理大臣が検察幹部を任命する事もなく、検察内より推薦された検事総長候補を政務天皇が承認するのみの関与しかいたしません。

法律の番人である検察が行政や政府と切り離されている事により政治に対する信頼性を担保する事が目的です。

我々、議員の不逮捕特権は廃止されていますし、検察が政治と切り離される事で議員の不正等を自由に追求できるようにします。

もちろん、不正を行う者などいないと思いますが良からぬ者はいつの時代にもいるものです。

検察は法律を遵守し、法律に従い犯罪者を正当に罰するために存在します。

そのためにも完全独立が必須であり、何者からも干渉を受けない組織として法務省からも分離します。

ただ、検察権力の拡大は暴走を引き起こす可能性をごく稀に秘めています。そのため、検察を監査する組織を検察内に設置いたします。

警視庁公安部から出向した職員と法務省からも職員を派遣し、更に国選の弁護士を数名配置した検察監査部を設けます。

違法捜査や検察官の不正を見逃さないために置かれる部署であり、部署に所属する者の姓名は秘匿し検察内においても独立した調査機関とします。原則、検察監査部の請求した情報は、個人情報保護を目的とした黒塗りをすることを禁止し、情報の隠匿を行わせない等の制限を設けます。

この部署に関しては違法捜査等の疑いがある場合に機能を発揮するものであり、普段から活動しているものではないとお考えください。

なお、検察庁法を改正し、検察官・検察事務次官等の検察で働く者が犯罪を行った場合は、一般人よりも重く処罰するものとします。

 これは他の裁判官や弁護士等の法曹関係者も同様にし、裁判所法や弁護士法にも同様の規定を追加します。

次に、裁判所についての改正です。

裁判官は職務の性質上、私生活においても厳しい制限があり、更に裁判は長期化する場合もあります。

年間に一人の裁判官が800件近くの事案の審理を行っていた等の過酷な労働環境もありました。

この様な事情から司法試験に受かっても裁判官になる人が少なく、少ない人員で仕事をすることから更に労働環境が悪化するといった悪循環がありました。

また、私生活の制限により外界との接触を厳しく制限していたために一般人との常識などの認識の違いが生じ、裁判員裁判を導入いたしましたが、こちらも裁判員に選ばれた方の負担が増えるばかりで必要性に疑問符を突きつけられる現状があります。

裁判官の増員のために私生活の制限緩和と国立大学における世論・流行・最先端技術講習を取り入れ、国民と裁判官の乖離(かいり)をなるべく抑えていこうと思っています。

弁護士が飽和状態になり、仕事がなく、希望される方を中心に裁判官教習を受講頂き、裁判官になって頂く制度も構築中です。

また裁判所職員の大幅な増員を進め、裁判における事務処理を裁判官が担当しなくても良いようにしていきます。

AI技術も導入し、資料の整理などを行わせる事で事件の概要や専門知識の解説等もできるように準備しております。

更に他国においては設置されている国もありますが、憲法裁判所を司法裁判所とは別に設置します。

憲法問題が絡まない限り、最高裁判所での審理は行われていませんでした。また、国会が成立させた法律についても違法立法審査を裁判所が行ってはいましたが、司法裁判で手一杯である裁判所に更なる負担を強いるこの制度自体が間違っていると考えられます。

そこで立法調査や憲法関連事案について審理する憲法裁判所を新しく設置する事にいたしました。

違憲立法審査に関する申し立ては自治体の役所において行って頂き、憲法学会の学者に審理の必要性に関して判断を頂きます。

判断を頂く学者は憲法学会から無作為に10名を選び8名以上が違憲と判断した場合に憲法裁判所に提起し、審理を致します。

当然ではありますが、この一連の流れに政府は一切関与致しません。

事案が違憲であった場合に憲法学会と法務省の間で改正作業をお願いし、法案の作成をする段階になって初めて我々議員が関与する事になります。

憲法裁判所の裁判官に関しましては、最高裁判所での勤務経験がある者を数名、憲法学会から推薦された学者の方を数名、法務省からも職員を派遣します。

法律を守り、法律に正当に守られる社会を作り出すためにも法曹界の改革は重要であり、独立性と公平性を維持した上で国民を守るための制度を構築していきます。

 念のためですが、今までに発表してきた改革に関する法律も既に仮の憲法裁判所を通して、違憲性がない事を確認した上で順次施行しております。」

北条総務政務官は長い説明を終えて一息入れた。

本来なら、政務天皇になったあの方が発表するはずだった説明を急用を理由に押し付けられたために原稿の内容を理解するだけで精一杯で質疑応答までは自分ではできないと感じて、法務政務官にその場を引き継いで会見場を後にした。

執務室に戻り、誰もいない事を確認して、盗聴機の確認もしてから

「雄二の次はチョーの番かな?

その次は俺か?」

自分でつぶやいた事ではあったがわざわざ周囲を確認してまで言うことだったか?と疑問に思う。

こんな姿を誰かに見られていたらと思うだけで何だか笑えてきた。

「自己犠牲って辛いよな?」

いまどこに居るのかもわからない幼なじみに向かって北条は問いかけた。

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