28部
「周辺に異常を感じた人はいなかった。
黒木氏の近所で不審者情報もなし。
どうしようもないですね。」
上田が言うと山本が
「古い住宅街で若い人があまり住んでない上に玄関付近は植木等で見えにくい。
もし何者かに襲撃されたとしても目撃情報は期待できないな。
周辺に防犯カメラは?」
「黒木さんの家を撮している物はありませんね。大きな道に続く所にもありませんから、防犯カメラにも期待できないですね。」
「司法解剖の結果からは、争った様子は無しだった。
注射器で薬物を注射されたとして、争った形跡がないという事は犯人は顔見知りで、複数犯の可能性が高いな。」
「何で顔見知りなんですか?」
上田が聞くと山本は玄関を背にして立って、
「例えば、俺と上田が話している。
その隙にもう一人が裏から回り込んで、玄関から黒木さんに近づいて注射器を使った。
そうすると、黒木さんが話に注意を払うほど重要な話になる。
黒木さんが狙われている事を知っていたかはわからないが、迂闊すぎると思う。
となると、その人物がする話を注意深く聞いていたと考えた方がいい。」
「なるほど。
犯人は最初から黒木さんを殺害する目的で訪れて、一人が注意を引きもう一人が殺したのであれば争った形跡がないのも納得できますね。」
「黒木さんが他の事に気がつかないほど集中して話す人物がたくさんいるとも思えないな。」
山本が言うと、上田が
「そうですね……………。
例えば北条総理が訪ねてきたら無視する訳にはいきませんよね?
あとは、甥の黒木議員もその対象には入りますよね。」
「政治家に話を聞くのは少し難しいな。
特に北条総理と話をしようとすれば、武さんか黒田さんの協力がいるが、口実が無さすぎる。
武さん達が成ノ宮の話を俺達にした事はできるだけ隠しておきたいしな。」
「黒木議員に叔父さんが亡くなられたお悔やみをとか、そんな感じで会えないか聞いてみたらどうですか?
まだ、殺人事件として捜査している事は内緒になってますし友人を心配して連絡したって言えばどうですか?」
「あまり気乗りはしないが、今は何でもいいから話を聞かないといけないしな。
まぁ、電話するか。」
山本はそう言って携帯を取り出した。




