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26部

「・・・・・・・・と言うのが、僕と山本警部が武田総監から聞いた話の内容です。」

 特別犯罪捜査課の全員が集まるのを待ってから、上田が総監室で聞いた話を説明した。多少のざわつきがあった後、片倉が

「総監と刑事部長の話が真実であるという証拠はあるんですか?」

 それに答えたのは黒田課長だった。

「私の家に伝わる古文書です。

 武田総監と上杉刑事部長の話を裏付ける内容が書かれています。

 他にも各一族の代表者の経歴やその時々の活動をまとめた書類もあります。」

 片倉は古文書を受け取り一通り目を通してから、

「これは興味深いですね。

 ですが、こんな物を渡してあなたの立場は大丈夫なんですか?

 それに武田総監と上杉刑事部長が北条総理を失脚させ自分達が権力を得ようとしているとも考えられます。

 彼らを信じれるほどの・・いや、彼らが味方であるという証拠はあるんですか?」

 黒田は2つの封筒を自分の鞄から取り出して片倉に渡した。

「辞表ですか?」

 片倉が聞くと黒田は頷き、

「この一件が片付けばあの二人は役職を放棄するつもりです。

 彼らが怪しいと感じたなら、公安の人間であるあなたがその辞表を提出して二人を解任してください。

 彼らの一族は権力を常には持っていない。

 なので、今の役職が無くなれば彼らの影響力はなくなります。」

「なるほど……………。

 ですが、黒田課長はどうなるんですか?

 北条一族の分家なのですよね。

 本家を(おとしい)れるようなまねをして大丈夫なんですか?」

「分家にもそれぞれの役割があります。

 本家を支える事が仕事の家もあれば、他の一族に恩を売るためにその一族に仕える家もあります。

 私の黒田家は武田・上杉一族との緩衝材の役割を担う家です。

 計画を邪魔されないようにお互いの利益をとりもちつつ、北条一族との敵対関係を築かせないようにする事が最優先事項です。

 彼らの計画は焦りと暴挙によって本来の目的を見失っています。

 監視役を助ける事が私の仕事ですので文句を言われる筋合いはありません。」

「わかりました。

 この辞表はお預かりします。

 では、捜査会議に移ってもらって大丈夫です。」

 片倉はそう言うと上田を見た。上田は資料を配って

「それでは、黒田雄二氏の死亡事件に関して他殺の可能性が浮上したため、我々はこの件を捜査する事になります。

 少し時間をとりますので各自で資料の内容を確認してください。」

 全員が資料を読み終えたのを確認してから、上田が

「当初、ごく小さな注射痕が通院歴のある高齢男性にあったからと言って、問題視はされていませんでした。

 しかし、黒木は服薬はありましたが、点滴等の治療は受けておらず、最近の診察結果も急激に悪化して命に危険が及ぶような状態ではなかったそうです。」

「ほな、毒物を注射された事による毒殺って訳か?

 でも、司法解剖の結果は毒物はでてへんのやろ?」

 竹中が聞き、山本が

「高血圧の人が、血圧を下げる薬を飲みますよね?

 低血圧の人がさらに血圧を下げる薬を飲んでしまったら、命を失う事もあるそうです。

 逆に毒であっても人を救う事もある。

 つまり、毒が薬になる事も薬が毒になる事もありえると言うことです。黒木氏は心臓の動きが弱くなり、血圧が上がらず色々な内蔵の働きに影響が出る病気でした。

 詳しくはわかりませんが、血圧を下げる又は一部の内蔵を活発に動かす薬を注射されれば、状態の悪化は容易に発生させられると思います。」

「黒木氏を殺害したのが、そのグループなら殺害の目的はなんなんですかね?

 資料で読む限りでは彼は役目を終えていたとありますが、その役目とはなんなんですか、黒田課長?」

 伊達が聞くと黒田ははっきりと

「政府内への影響力作りだったと聞いてます。

 政治は、政治家が行っていると思われ勝ちですが、実際は官僚の存在が不可欠であり、黒木氏は官僚として様々な人脈を構成し、『あの人のためなら頑張れる』と言った関係を作っていました。

 法務省に姫地という男がいますが、彼は正しくその状態でAI信号機の捜査利用に反対していたのも黒木氏の甥である黒木俊一氏の経歴にキズがつかないかを懸念していたからです。

 この様に職を退いてなお、官僚社会に強い影響力を持っていた人は日本の歴史の中でも数えられるほどしかいません。」

「じゃあ、その影響力が邪魔になって殺されたと考えるべきなんですか?」

藤堂が聞き、黒田は困った顔をして

「それはどうかわかりません。

私の知り得る限りでは、黒木氏は既に役割を終えた事から趣味や保護司の活動に専念していて、今回の計画も既に無関係な状態になっていました。」

「彼しか知らない特別な情報を握っていた可能性はないんですか?」

 片倉が聞き、黒田は首を横にふり、

「わかりません。」

「とにかく、まずは現場周辺の聞き込みと黒木氏の関係者への聞き込みから始めましょう。

 それぞれ、分担を確認してから捜査に向かってください。」

 上田が話をまとめて分担表を配り、各々が捜査に向かった。

 

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