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24部

『今朝未明、総務省の事務次官を勤めていた事がある黒木雄二氏が自宅の玄関先で倒れているのが発見され、病院に搬送されましたが、既に亡くなられていました。

 周囲に争った跡や遺体に外傷がなかった事、持病があり通院していた事を踏まえて、警察では持病の悪化による病死である可能性を踏まえて捜査を開始したとの事です。

 黒木雄二さんは、国会議員の黒木俊一氏の叔父に当たる人物で、黒木議員の育ての親でもあるという事です。

 総務省を退職後は保護司としても活躍されていたという事で、大変功績のあった方でした。

 では、次のニュースです。』

 テレビのニュースでは、どこのテレビ局でも取り上げられている。

 山本は課のテレビでそのニュースを知った。上田が近づいてきて、

「黒木さん、亡くなられたんですね。

 まだお若い方だったのに残念ですね。」

「生きてたら死ぬのは当たり前だろ。

 俺達だって明日死ぬかもしれないし、100超えても生きてるかもしれない。病気をされてるようには見えなかったけどな。」

「でも、元事務次官が亡くなったからってニュースになるものなんですね。

 どこのテレビ局でも扱ってるニュースって事は大きな功績があったんですかね?」

 上田が不思議そうに言った。山本は少し考えてから

「もしかしたら、昨日の政府が発表した件と関係があるんじゃないか?」

「高齢者の集合住宅ですか?」

「黒木さんは60代の一人暮らしだ。

 しかも、孤独死だったわけだ。

 政府の元高官でも、孤独死するって事が知れ渡れば孤独死を他人事としてとらえていた人達も危機感を感じるんじゃないか?」

「集合住宅の宣伝のために作られたニュースって事ですか?」

「偶然、黒木さんが病死したから使ったんじゃないか?」

「集合住宅の申請って始まってるんですよね。

 申請はたくさんあるんですかね?」

 上田がそう言うと、短くニュースを取り上げるコーナーが終わり、特集のコーナーへと移った。

『では、続きまして特集です。

 本日は昨日政府が実施を決めた高齢者集合住宅についてです。

昨日の会見直後から始まった各自治体での受付では多い自治体で千人以上の申請・問い合わせがあったとの事です。 

施設の見学や施設体験も行われており、入りたい施設が集中する可能性もあり、今後は抽選になる施設も出てくる見込みです。

 部屋の大きさや施設内アクティビティ等の条件でも一律ではないため、自分にあった施設探しも楽しみのひとつとなっているようです。

 その反面、運営費を国費から支出する事や施設内での格差が生まれないか等の不安な点もあり、町中でのインタビューでは賛成の人が30.6%、反対の人が26.3%、まだよくわからないという人が43.1%と制度についての理解がまだできていないようです。

 反対の人の中には国に管理された老後は嫌だという方もおられ、どのように生活していけるのか不安だと言う人や孤独死を避ける名目で自分達の財産を管理する事が目的なのではないかとの声もありました。』

「ナイスタイミングですね。」

 上田が面白そうに言った。山本が

「家族がいて、将来的に家族が面倒をみてくれると思ってる人からすれば財産の管理とかで意見が割れるんだろうな。

 本当に孤独死を恐れてる人からすれば誰かと一緒にいられる場所の方が楽しいし安心もできるんだろうな。」

「警部は賛成派ですか?」

「この制度の持続性が保証されるならいいが、すぐにダメになるなら最初からやるなよと思うな。

 結局のところはまだわからないから保留だな。」

 山本が言った所で大谷が部屋に入ってきて、

「警部、上田さん。

 上杉刑事部長が総監室に来て欲しいと言われてます。

 内密に大事な話があるそうです。」

 山本は頭を掻いて

「仕方ないな。

 行くぞ、上田。」

「はい。」

 渋々と歩き出した山本に上田は続いた。

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