18部
『日本国民の皆様、こんにちは。
私はこの度、政務天皇に任命された者です。
職務の性質上、私は皆様に素顔を晒さず、皆様の声に応えて政治を中立かつ公正に行っていくためにこのように黒い幕を隔てた状態で就任の挨拶をさせて頂く事は大変心苦しく思います。
皆様に寄り添い、平和を願うのが親和天皇の役割であり、政務天皇の役割とは国民を守るため、時に厳しく、そして国民の皆様の生活を向上させ、平和を造り上げる存在でなければいけません。
国民を守るため、他国のいかなる侵略・攻撃にも屈しないために憲法9条の内容を改定し、軍事力の保持と軍事行動の消極的運用を可能とするようにします。
あくまで日本国民に危険を及ぼす行為を続ける他国に対して、危険の原因を排除するために軍事力の行使を行うものとします。
また、領土問題を背景とした威嚇行動をとる国に対して、排除といった手段を取ります。
あくまで外交による解決を第一とし、それでも解決に応じないのであれば軍事力の行使を行うものとなります。
誤解の無いように申し上げますが、私は戦争をしたいわけでも、従来の平和主義を否定したい訳でもありません。
戦争を根絶し、国際平和を成立させるためにも軍事力の放棄は正しい選択なのだと思います。
しかし、一つの国がそのような理想を叶えたとしても意味はなく、逆に軍事力が無いために滅んでしまうでしょう。
世界の全ての国が一斉に軍事力を放棄し、絶対に所有しない世界となる事を願いますが、現実はそんなに甘くはない。
理想を語ることは大事ですが、そのために必要なステップを全て飛ばして、日本だけが平和な国になっても意味はないのです。
軍事力の保持に関しては、自衛隊の中から日本国軍に異動を志願してもらいます。日本国軍への入隊志望の方も別途募集させてもらいます。
自衛隊に関しては、そのまま存続させ内容としては名前の通り日本を衛る活動を行ってもらいます。
日本の領海のパトロールや災害時の救出活動等の日本国民を守るための活動を続けて行きます。
日本国軍は日本へのいかなる攻撃に対しても反撃するための物であり大規模な軍隊である必要はありません。
国を守る剣であり、盾でもある。それが日本国軍です。
日本国軍が活躍しない世界を作るためにも、日本が世界を導く立場になれるよう、世界の平和の縮図のような国になれるように一人一人の国民のお力を御貸し願いたいと思います。
少し話は変わりますが、今後とも政務天皇の即位式は行わず皆様へのご挨拶に留めるものとします。
親和天皇の即位式に関しては、長く日本の伝統として続いてきたものであるため行いますが、来賓を招いて盛大に行うのではなく、儀式を行い、それを映像で国民の皆様にご覧いただく形になります。
これは国費を用いて行う儀式が政教分離に反しているとの批判が根深くあるためであり、伝統的な儀式として継承していくための手段となります。即位のパレード等も行いませんが、皇居でのご挨拶などはさせて頂こうと思っております。
最後となりますが宣誓を致します。
私は政務天皇として、国民の生活を第一に考え、より幸せに、より豊かに生活できる国を作るため各政務官と協力し、国民にとって誇りを持てる国を作っていくことをここに誓い、就任の挨拶とさせて頂きます。』
国民に向けた政務天皇の挨拶が全テレビ局で一斉に放送された。驚きを持って受け止めた者、ほくそ笑んだ者、何が起きたのか理解できぬ者など国民の反応はそれぞれであった。




