16部
「本日は税制改革について発表します。」
北条はそう言って頭を下げた。そして
「現在、扶養家族にかかる税金は『⚪⚪万の壁』と呼ばれるように、103万・130万・201万円等を超えると扶養者にかかる扶養控除が減額されています。
しかし、税制の根本となる家族法を規定している民法の規定はあまりに改正が遅れているので、税制改革も意味をなさないものが多くありました。
世帯主が働き、配偶者や子供を養っていた時代は終わり、夫婦が共に働き、子が大学生になればアルバイト等で収入を得るような時代に変わりました。
そして、資源を輸入に頼っている日本において国際情勢の変化による経済不安を抱え、政府の無駄な出費による国の財政の悪化もあり、共働きにならなければいけない状況が常態化した今となっては扶養控除自体のあり方を見直す事が重要であるという結論に至りました。
将来の経済不安が原因となり、子供を出産することに対する抵抗もないとは言えないほどに国民の皆様に不安を与えてしまっている現状は政治家として謝罪します。
少子化を進めている要因の1つとして経済不安があるのなら解消していかなければいけない。
まずは扶養控除についてですが、扶養控除にも『税制上の扶養』と『社会保険上の扶養』があります。
所得が100万円を超えると地方自治体に支払う住民税が課される事になり、103万円を超えると所得税が課される事になります。
配偶者控除と呼ばれる納税者の配偶者が103万円を超えると最大で38万円の控除から減額が始まります。
201万円を超えた場合は配偶者控除の上限額となり控除がなくなることになります。
これが2018年に改正された税制上の扶養です。
社会保険上の扶養とは、106万円を超えた場合に勤務先の社会保険に加入が必要となり、130万円を超えた場合は扶養者の社会保険から外れることになります。
これらの状況を改善するところから始めようと思います。
もちろん、納税者の所得が高かった場合は控除がなかったりということもありました。
まず、世帯内において一番所得が高い者を扶養者とします。
扶養者の年収が1000万円以下の場合は、扶養される側の年収が600万円以下の方々の所得税は課されないものとします。
年収が600万円ということは月収が50万円くらいになりますので、今までの縛りからするとからなり自由度が増すと思います。
扶養控除に関しては所得の多さによって変化し、扶養者の年収が600万円以下の場合は所得税率は一律で3%とします。
1000万円以上の所得がある扶養者に関しては、従来の税率での課税となります。
なお、扶養者の年収が1000万を超えた場合でも、扶養される側の年収は300万円以下までは非課税となります。
どちらの場合でも『300万・600万の壁』を超えてしまうと所得税が課される事になります。
社会保険上の扶養については、所得税を払うだけの収入がある場合において扶養を外れる事になります。
扶養者に関しては、世帯を親と子の核家族で考え、親が扶養者となります。
ただ、未婚の成人の子に関しては一人の社会人として親の扶養からは離れてもらうことになります。
こちらに関しては、疾病や障害等で親の扶養に入らざるを得ない等の例外は認められますが、基本的には自立した社会人として高齢の親の扶養からは外れてもらうことになります。
もうひとつ、税制の改革についてお話をします。
ふるさと納税が世の中に浸透し、多くの地方自治体に恩恵がもたらされるようになった事を受け、同じような仕組みで『災害復興納税』を取り入れていこうと思います。
『災害復興納税』とは、日本における自然災害等で被災された方の生活を復興させるためのお金を寄付する事によって所得税率を最大で5%引き下げる制度です。
家屋の倒壊や浸水等の復旧にはお金がかかります。
そこで、寄付金を税金として納めて頂き、そのお金を被災された方にまとまったお金として渡します。
『災害復興納税』の金額は振り込みが行われたと同時に専用のサイトでどれだけの金額が集まっているのかを表示し、どこの自治体にいくら配分したかを明確に発表いたします。
納税金額の最低額は1万円とします。上限は決めませんが寄付金の金額によって税率の減額が決まりますので多く納税された方は5%分の減額となります。
減額の基準としては、その人の前年度の年収から算出されますので、1000万以上の収入がある人と600万の収入がある人が同じ金額を納めても減額のパーセントが同じになることはありません。
当たり前にあった生活を失い苦しんでいる人達を一人でも多く救うために国ができることは多くはありません。
その中で考えた稚拙な制度ではありますが、一人でも多くの方にこの制度で納税していただき、被災者の支援を行って頂ける事を切に願い、本日の会見を終了いたします。
なお、扶養控除については本年度の収入分から適用になり、来年度に納税通知が国民の皆様に届くことになります。
また、『災害復興納税』に関しましては、この会見後直ぐに受付が可能となっております。
各銀行の窓口において『災害復興納税』についてのお問い合わせをして頂ければ対応をしてもらえます。
災害が起きなかった場合等は集まった寄付金は積み立てられたり、河川等が決壊する等の二次災害が発生する恐れがあり、早急に修繕が必要な場所の修繕費用として使わせていただく事があります。
その際には専用サイトにおいてその旨を報告させていただきます。」
北条は深々と頭を下げて会見が終了した。




