15部
薄暗い部屋には三人の男がいる。大柄の男がパソコンを操作して、
「政府の支持率は80%を超えてるみたいですよ。」
松前が言うと、片倉が
「改革案の発表が起こるたびに反発した人たちがデモのようなことしていますが、その後の対応は完璧ですからね。
暴論のような改革案を丁寧に説明会を開いて納得させる技術が高い。
口だけでなく行動にもしっかりと移せていることから、北条政務官のいう『善良な国民』に与える信頼感はとても強いですね。」
「あえて反発を起こして、世間への周知を徹底させて最終的には丸め込んで、反発を支持に変えてやがるんだろうな。」
伊達は気に入らなそうに吐き捨てた。松前が
「残りの20%近くもそのほとんどが『まだわからない』で、明確に反対しているのは3%くらいですね。
このままいくと、とんでもない改革が始まっても国民が賛成に回ってしまう事も考えられますよ。
ナチス政権みたいな状況にだってなるかもしれない。」
「その後は戦争を解禁していくと思うのか?」
伊達が言うと、片倉が
「それはないでしょう。
彼らがやりたいのは戦争ではなく、政争とでも呼ぶものなのではないですか?」
「国民全体を政治について争わせようって考えだとすると奴らのその先は何だ?」
「より高度な政治論争による国民の昇華なのではないですか?
太平洋戦争で失った日本国民の誇りを取り戻すなんて考えもできますね。」
片倉は伊達とは反対に少し楽しそうにも見えた。
「コージの言うように国民全体が政府のイエスマンになれば、国家総動員法を復活させることもできるだろう。
だが、その先に戦争をしたいわけじゃないならあいつらの終着点はどこにあるんだ?」
「御前が噂通りの明治維新以前に排斥された皇族の末裔なら自分達が政権を握ることこそが終着点なのではないですか?
そう考えると、御前の目的は果たされたことになり、今の改革は北条を頭にしたグループによるものとも考えられますね。」
「カタさん、公安の方はなんて言ってるんだ?」
松前に聞かれた片倉は肩をすくめて、
「現状を見守れ、軽挙は慎め。だそうです。」
「・・・・・・・御前のグループが政権を乗っ取って終わりだとすると、影山が言ってた山本警部の決断ってのは何を意味するんだ?
今のところ、警部がやったこととして、駅の構内で発砲事件を起こしたことくらいだろ?」
「言い方ですね。
スターターピストルを撃っただけで、発砲事件とは言えないと思いますよ。」
片倉は笑みをこぼしながら言った。伊達の発言を責めるわけではなく楽しんでいるだけのようだ。




