表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/77

13部

北条総務政務官の会見から一夜開け、テレビのニュースはどこも会見の内容を議論していた。

 あるテレビ番組で専門家が、

「国民の財産を没収したり、強制労働からの給料天引きなんて人権侵害ですよ。

 この様な蛮行はさっさとやめさせなければいけないですよ。」

「ですが、犯罪者にならなければ人権は保障されるというのもありがたいと思いませんか?

 やりたい放題されていた部分や経済犯罪の被害者が泣き寝入りするような事例は今までにいくつもあったわけですから、被害者の損害を加害者が確実に賠償するというのも刑事罰としては正当だと思います。」

 別の専門家が言い、司会者が

「暴力団構成員の財産権を否定するということで、組事務所が使えなくなるという話もありましたが指定暴力団の組本部に動きがあったようです。

 中継です。」

 『こちら指定暴力団の本部近くにきております。

 今朝早くから大きな荷物を運び出したり、買い取り業者などが家材を運搬するような様子が見てとれます。

 運び出している人達の表情は、強制退去を通告されたから怒っているという感じではなく、時に笑顔で荷物を運んでいる人もいる等、緊迫した様子は一切ありません。

 あっ!今、組の看板が取り外されました。穏やかな表情で看板を取り外しています。

 詳しい状況はまったくわからない状態ですが退去することに反発している様子は一切ありません。 

以上、中継でした。』

 司会者が

「どういうことなんでしょうかね?

 組の本部を出るということは、組自体の活動もできなくなる訳ですから、抵抗する姿勢があってもおかしくないと思いますがいかがでしょうか?」

「組を解散しても良いと思えるような条件を国が提示した、あるいは自分達の活動に限界を感じていたため解散をすんなり受け入れたとも考えられますね。」

「別の場所に移って新しく活動しようってだけですよ。

 どこにいるか把握して監視できていた今までの方がよっぽど良いと思いますがね。」

「どうなるんでしょうね……………」

 司会者が言い、一枚の紙を渡された司会者が

「ここで警視庁の武田警視総監が緊急の記者会見を行うということなのでそちらをご覧ください。」

 モニターの画面が変わり、武田総監が一礼してから席についた。

『本日はお忙しいなかお集まり頂きありがとうございます。

 昨日の北条政務官の発表に対して、昨夜関東周辺で、暴走族と思われる集団が反対集会を行い、かなりの騒音被害が出ました。

 警察のパトカーも出動しましたが、強制的に停車させるなどの行為により怪我人が出ることなどを回避していたため騒音を食い止めるに至らなかったことをまず国民の皆様に謝罪させていただきます。

 申し訳ありませんでした。』

 武田は数秒間頭を下げてから顔をあげ、

『しかし、我々も指をくわえてただ見ていた訳ではなく、車両の特定と暴走行為を行っていた人達の特定を進め、今朝方、暴走行為に参加した者達の逮捕状を請求し、関東周辺で435名、関西地方で386名等全国で約1500名近くを逮捕し、暴走行為に使用した車両を没収致しました。

 暴走行為に参加した人物の特定にはAI信号機の映像と現場のパトカーのドライブレコーダー等を使い前科前歴者からの特定やその他の情報収集により特定致しました。

 今後も同様の行為を行った者は厳しく取り締まって参ります。』

 会見の映像が切り替わり、司会者が

「実際に法律に基づいた取り締まりがあって逮捕者が1500名ほど出たということですが、政府と警察は本気だということでしょうね」

「いや、驚きですね。

本当に一斉に検挙したんですね。口だけだと思ってましたよ。」

「不当な拘束だと思いますよ。

 個人の趣味・嗜好の自由を認めない、明らかな人権侵害ですよ。」

「ですが、昨日の夜はかなりうるさかったですよ。

 私の家の周りでも、もううるさくて眠れなかったですからね。

 今後もあんなことが続くのかと思ったら捕まえてくれて感謝したいと思いますね。」

 司会者が言い、

「そうですね、趣味・嗜好は他の人に迷惑をかけないように楽しむものであって、騒音を出したりするのはどうかと思います。

 それに危険な運転をしたりするのも本人だけでなく周囲にも危険が及ぶわけですから、捕まってよかったと思います。」

 その後も改革反対の専門家と賛成の専門家・司会者の様相で議論が続いた。

 男はテレビでその様子を見ながらため息をついて、

「この程度の知識で専門家として語れるというのも良くはありませんね。」

 そう呟くと、部屋の外から 

「御前様、用意が整いました。」

「わかりました、すぐに動きましょう。」 

 男は立ち上がり、長い髪を一つに束ねた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ