12部
「世間の皆様の声はしっかりと受け止め、今後の改革に向けて積極的に取り入れていきたいと考えております。
また、我々も人間であり真意を伝えきれず誤解を生むような表現をしてしまう場合もあります。
一つ一つの誤解をしっかりと解消していくためにも説明会を開き、しっかりと説明責任をまっとうします。
国会で『わかりません』だとか、『記憶にありません』等と言っているだけで説明責任を果たした等と今後は絶対に言いません。
専門家が自ら考えた政策について真摯に説明させて頂きます。
それでは本日も新たな改革を発表していきます。」
北条は眩しいほどのフラッシュを浴びながら頭を下げた。
「本日、発表します改革は日本の治安を引き締めるものです。
現在、暴力団対策法が制定され、暴力団への取り締まりは厳しさを増しています。
ですが、半グレと呼ばれる集団やチームと呼ばれる非行少年達の集まりを利用して暴力団が未だに幅を効かせている現状はあります。
半グレ集団は識別が難しく対応に苦慮する部分がありますが、そういった集団の経営する店舗には営業権を認めない、既に有している場合には剥奪をしていきます。
反社会勢力の一掃と暴力団の根絶、並びに暴走族と呼ばれる集団も根絶します。
暴力団について、暴力団の構成員の財産権を否定し、暴力団の活動に使用した財産を没収します。
犯罪を行って得たかもしれない財産を国が保証する必要はありません。
現在、日本各地に存在する組事務所と呼ばれる場所も数日以内に退去をさせることになります。
次に、暴走族と呼ばれる集団について『うるさいバイクに乗っている人達』と『迷惑な走行をする人達』の違いが不明確であり、処罰を科すことも難しい状況です。
そこで明らかな違反行為を行っている者はもちろんですが、騒音だと感じるような自動二輪、原動機付き自転車、自動車の運転を行った人達に対しても厳罰をもって対処します。
現在、AIを使用した信号機の活用によって多くの交通違反を取り締まっております。
これを利用して暴走行為を一度でもした車両に関して、車両番号や運転者を特定します。
警察官による取り締まりも行い運転者だけでなく同乗者にも罰金を課します。
暴走族並びに暴走行為を行った者は例外なく処罰します。
処罰の内容を発表します。
一つ、警察の捜査によって暴走行為を行ったと判断された場合は逮捕状を請求し正式に逮捕します。
一つ、暴走に使用した車両を没収し、売却します。売却費用を違反金の支払いに回し、それでも不足する場合は不足分を支払わせます。
一つ、警察の勾留期間内に罰金を払えなかった場合は、国の指定する労働、今後は国益労働と呼びますが、それに従事して頂き、給料から天引きして罰金を支払ってもらいます。
一つ、暴走行為一回の罰金は200万円とし、常習的に行っていた者は400万円となります。
一つ、同乗者にも同様の罰金とする。
一つ、暴走に使用した車両を騒音が発生するような改造を行った事業者に対しても罰金を課します。
自ら改造を行った場合は、通常の者より思い罰金となります。
以上のような内容で本日から取り締まりを行います。
今回の改革に伴い刑法・刑事訴訟法の一部改正、そして新たに犯罪被害賠償責任法を公布・施行いたします。
犯罪被害賠償責任法とは、罰金刑並びに詐欺などの経済犯罪によって生じた損害を懲役刑とは別に国益労働を行うことによって賠償を強制するための法律となります。
これで改革の内容の発表は終了します。
あまり時間はありませんが質疑応答を行いたいと思います。」
記者が一斉に挙手をして、司会を担当していた人が一人の記者を指名した。
「東京日報の山田です。
今回の改革は反社会勢力を排除するための改革と言うことですが、暴走族等への対処が個人の財産を侵害するものであると考えられます。国が人権を軽んじるような政策を実施することについてはどのようにお考えでしょうか?」
「国民の人権を尊重するという基本的な部分は変わりません。
しかし、人権を傘にして横暴な行為をする事を認めるわけにはいきません。
国家として、国民の自由を認めることは当然の事ですが、無責任に放置することを『自由を認める』とは言えないと思います。
他者に迷惑をかけない、損害を与えない。
これが人権における自由の基盤です。
この基盤をしっかりと維持していくためにも、法律を守り、道徳的・慣習的なルールを守って生活する善良な国民の自由を守る事こそが国家の役割だと考えます。」
「それでは犯罪者には人権を認めないと言うことですか?」
「もちろん、意図せず犯罪を行ってしまった人については裁判において情状酌量の余地はあります。
ただ故意に人を傷つけたり、迷惑をかけたりするような行為は厳罰をもって処罰していくということです。
暴走族に関して言うなら、意図的にやらなければ大きな音がでないのにわざわざやっている人間には没収や罰金を課します。
車両の故障などで大きな音がなる場合は修理をしてもらいます。
意図的に犯罪行為を行う人に人権を保証する必要がありますか?
そういう人を放置して善良に生きている人達が傷つくような事になった時、あなた方は誰に文句を言いますか?
どこの誰かもわからないクズですか?
放置した国や自治体ですか?
私が言いたいのは悲劇を起こすかもしれない危険な人には、危険が起こる前に更正してもらわなければいけないということです。」
「それは国による差別ではないですか?」
「差別だと思うなら思ってもらって結構です。
ですが、法律を守る人間を守り、一生懸命に生きている人を保護し、法律を守らない者を排除していく。
誰もが安心して暮らせる国を作るために厳しい態度で立ち向かっていきます。」
「国民の理解は得られるとお考えですか?」
「その努力は惜しみません。」
北条が言い切った所で司会の者が
「そろそろお時間となりましたので会見を終了させて頂きます。
改革についての詳細は文書によりお伝えしていきますし、更なる説明を求められる場合は総務省の方にお問い合わせ下さい。
順次、説明会を行わせていただきます。」
会場は少しざわめいたが北条は一礼して会見場を後にした。




