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10部

「どう思います?」

 三浦が、テレビを眺めている山本に聞いた。

「少子化は国の存続に関する重大な問題だから、手を打たなければいけない。だが、高齢化によって労働人口が減ってきてるから女性にも働いてもらわなければいけない。

 でも、女性が仕事中心の生活を送るなかで晩婚化が進めば、出生率は下がり、少子化が進行する。

 負のスパイラルにはまってから、改革を初めても遅いが何もせずにいるよりはいいだろうな。

 女性を働かせたいけど、出産もしてもらいたい政府としての折衷案としての就職期の改革だったんだろ。

 受け取り方によっては女性蔑視と捉えられかねない。

 デモを起こすのにはわかりやすい原因を与えすぎたと俺は思うな。」

「騒ぎになりますかね?」

 大谷が聞き、山本が

「受け取り方を間違えた奴が騒ぐ可能性は十分にあるだろうな。

 不妊治療とかを受けても子供ができない家庭もあるだろうし、それこそLGBTの人達からすれば、世の中は男と女しか認めないと言ってるようなもんだからな。

 就職のサポートを行う改革の公表だけで止めなかったところを見ると何か裏があるようにも思えるな。」

「警部も受け取りかた間違えてるんじゃないですか?」

 三浦が冗談ぽく言う。大谷が

「でも、警部がそう感じたなら他の誰かもそう感じてるかもしれないですよね。

 改革に痛みはつきものだってよく言いますけど、わざわざ波風立てるような発表をする所を見ると何か企んでいるって警部が考えても仕方ないですよね。」

「国民の政治意識の喚起が目的なんちゃうか?」

 突然あらわれた竹中が言った。

「国の変化に関心がなく、政治なんて自分達が不利益を被ることが起きない限り話題にもしない。

 それが今までの日本人ですね。

 国が暴走してると感じれば声をあげることを覚えるし、声をあげる機会が増えれば、常態化して政治意識の高い国民が増え、より良い国作りの議論が活発になり、回りに回って国が良くなっていく。

 それを狙ってやってるということですか?」

「俺は政府の奴らやないから本当はどうか知らんけど、わかりやすい反発材料を投げ込んで、『こんなつもりやなかった』って言うほどあいつらはアホやないやろ?」

「政府を変えることは政治家にもできるが、国民の意識を変えるのは政治家では不可能ですからね。

 竹中さんの言うことが本当なら、上杉さんが俺達に変な捜査命令を出していることにも納得がいくよな。」

 山本が言うと、三浦が

「そんなことを言ってるとヤバくないですか?

 上杉刑事部長も政府側の人だってことになりますよね?」

「三浦、今はそんなことをどうでもええねん。

 政府が自分達を批判することを国民に投げ掛けるんは別に罪でもなんでもないやろ。

犯罪行為をしてるわけでもないし、むしろ国民の政治的な活動を活発化させることにより、国民であることの自覚を促しているだけや。

 自分達が政治を変えることができる、そう思えば政治について学び意見することだってできるようになる。

 自分の首を勝手に絞めてるだけやから文句を言われる必要もないってことや。

 刑事部長や総監が政府側なのは役職上仕方ないやろ。

 だから、捜査命令の内容だけでどちら側の人間なんかを考えること自体が段階的に違うで。」

「そんな感じですか…………………」

三浦が顎に手をあてて考え込んだ。山本が

「とにかく、現段階で俺達には情報が足りないわけだ。

 捜査命令が出た件を調べていけば、上杉さんや武さんの考えも見えてくるだろ。」

「そうですね。

 皆さん、捜査命令が出てます。

 渋谷駅の近くで、女性を中心にしたデモグループが政府批判を行っています。幸い、彼女達は良識があるので通行の邪魔になる事はありませんが、大規模化すれば手がつけられなくなる可能性もあるので、早めに説得に行ってください。」

 黒田課長がそう言って、山本と竹中が動き出した。三浦もあとを追って出ていき、部屋には黒田と大谷が残った。

 大谷は黒田も竹中もなぜ突然出てくるのかと不思議に思った。

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