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第三話 魔法の夢見るスパゲッティ

どこにでもいるちょっと地味で猫が好きな女子高生、青木ミオ。

ある日、彼女は学園一の美男で女子たちの憧れの的、赤崎ショーゴ先輩からデートに誘われてしまった!


楽しくデートを終えた二人だったが、ミオは赤崎先輩のファンの嫉妬を買い、八つ当たりを受けた猫を助けようと崖の中腹へとその身を投じたのだった…………。


絶体絶命のミオの前に現れたモノとは……!?

崖の中腹に突き出る一本の木に私はぶら下がっている。


握力ももう限界に近い。


「アルデンティーノ!

私はイタリアから来たスパゲッティの精霊!この猫のカラダを借りて君に語りかけている!」

「そして今、幻覚が見えて変な幻聴まで聞こえてくる!私はもうダメなのかもー!!」


人生の最期にこんな変な幻覚を見る事になるとは、情けなくて涙がチョチョ切れる。


「コラコラ、変な幻聴とはなんだね!

君の、死ぬ前にスパゲッティを食べたいという魂の叫びを聞き付けてやって来たというのに!!」

「確かに、死ぬ前にスパゲッティナポリタンを山盛り食べたいって考えたけど………。」

「ナッポッリッタアアアアアーーーーーーン!?!?!?!?!?

あのケチャップで麺をベトベトにした焼きそばモドキの事かね!?いかん、いかんぞあれは!」


ナポリタンと聞いた途端に癇癪を起こして起こり出すスパゲッティの精霊。


「人の食の好みに文句つけないでください!

………っていうか、今はスパゲッティ談義なんてしてる余裕ないんですってば!」


そう、今の私はまさに絶体絶命、生きるか死ぬかの瀬戸際なんです!

スパゲッティの好みについてあーだこーだやっている余裕なんてないんです!!



ミオちゃんのスパゲッティ ~溺れる馬は魔法少女の夢を見るか~

【第三話 夢見る魔法のスパゲッティ】




「ふむ、このままではスパゲッティナポリタンなどという邪道をナンバーワンと信じたまま君は死んでしまいそうだな……。

そうだ!!君にこの夢見るスパゲッティをあげよう!!そらっ!」


スパゲッティの精霊inごん蔵からスパゲッティの乾麺の袋が投げてよこされる。

乾麺の袋はフワフワと私の周りを滞留している。


「ま、魔法のスパゲッティ?な、なんですかそれは!?」

「これこそ願い事の叶う魔法のスパゲッティなのさ!一袋80本入り!

簡単な願いなら乾麺一本!大きな願いだと複数本必要になる。」

「じゃあ、この崖から這い上がりたいと思ったら?」

「そのくらいならスパゲッティ1本で叶っちゃう!」

「素敵!」


私がスパゲッティの袋に片手を伸ばすと、呼応するように中からスパゲッティが一本飛び出し、手の中に収まる。


「す、すごい!」

「夢見るスパゲッティは求めがあれば瞬時に手元に現れるぞ!だから普段から持ち歩く必要はないんだ!」


私はスパゲッティを握り締めて必死に祈った。

どうか崖の上に上がれますように!どうか崖の上に上がれますように!


ところが何の反応もない。


「えっ、えっ、何も起きないんですが!?」


だ、騙された!?

やっぱり、スパゲッティで願いが叶うなんて美味しい話はないよね…。

こんなのを信じた私が馬鹿だった。


でもひとことだけ文句を言ってやろう。


「騙すなんて酷いです!!」

「祈るだけじゃダメさ、スパゲッティに願いを込めて半分に折るんだ!」


周囲を見回して片手は木を掴んでいるため、塞がっている事を再確認する。


「お、折る?でも今わたし、片手しか………。」

「片手で充分さ、スパゲッティの下の方を持ったら、願いを唱えながら鼻に突き刺して叩き折ればいいのさ!」


「なるほど、これを鼻にズボッと!………って出来るかーーい!!」


渾身のノリツッコミが周囲に響く。


「なんでだいセニョリーナ!?」

「どこの世界に自分の鼻の中にスパゲッティを突っ込んで叩き割る乙女がいるんですか!!」

「そいつは違うな、男でもそんな事してる奴は見たことないねー!ハハハハハ!」

「なにわろてんねん!!」


いけない、怒ったらなんだか体力を余計に消耗してしまった気がする…。


この崖、落ちたらやっぱり死んじゃうよね?

でも鼻スパゲッティは絶対したくないよ!

でも落ちたら絶対痛い!

でも鼻スパいやだ!


頭の中を崖と鼻スパがグルグル回って葛藤を続ける。


「鼻スパ……崖……鼻スパ……。」


そして、考えを巡らせてひとつの答えにたどり着く。

一回だったら神様も許してくれるよね?


ああ、こうやって人間は恥という概念をちょっとずつ失っていくんだろうな………悲しいな。


「もーどーにでもなれーーー!」ズボり!!


か細く滑らかな直線が地中海のかほりを漂わせながら鼻腔へと侵入してゆく。

えも言われぬ異物感と、滑稽さと、恥ずかしさでなんだか涙が出てきちゃう。

だって、女の子だもん!


「まじかるみらくる!崖の上にぃ~~~上がりたーいな☆えいっ♪」バキン!


ヤケクソで完全に気がふれてしまっていた。

普段からは想像も出来ないようなハイテンション、魔女っこのようなノリで珍妙な呪文を唱えながらスパゲッティを鼻で折るのだった。


「あはははっ!」

「どうだいセニョリーナ、上手くいった……………ってねぇ、聞いてる?」

「あはははははっ☆あはははははははっ♪」


なんだか可笑しくて、もう笑いが止まらない。

私は崖の上にたどり着いている事にも気付かずに狂ったように笑いながらクルクルと回っていた。


「あはははあはあはははははっ!!」

「き、気を確かにするんだぜセニョ、誰か来たから私はこれで失礼するヨ!」


ごん蔵をまとっていた金色のオーラは、ドロンと音を立てて消えてしまった。


「ミオちゃーーーん、今助けに!………あ、あれ!?」

「あー、せんぱーい!あはははははっあはははははははっ!」


こうして、私は願いを叶える「夢見るスパゲッティ」を手にしたこの日から魔法少女となったのです。

でもこんな秘密、絶対に先輩に知られたくないよぉー!!


先輩と私の青春は一体どこに向かってしまうんでしょうか!?


続きます!



「ふーーん、みーちゃった。」ニヤリ




第三話 完

どうも、醍醐郞だいごろうです。


セニョリータ(スペイン語)、セニョリーナ(イタリア語)、グーグル先生は賢いなぁ。


普段はシリアス調の作品を書いているのですが、カタイ話ばかり考えていると、こういうユルいお話を考えるのが非常に癒しになります。

しばらくはこの二作を両輪として回して行きます。


ご興味のある方は「異世界で俺と握手!」の方も宜しくお願いいたします。

コメント、ツッコミ、罵詈雑言ございましたら書き込みよろしくお願い致します。

泣いて喜びます。


それではまた。



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