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剣魔未来〈 剣に触れるもの 〉  作者: 数間サハラ
始まりの異変
1/13

始まりの異変 01

駄文投稿ですがお許しをば。こんな話でも考えるの大変ですね。それでは

「マシュー先輩、もう着きましたよ。起きてください」

 

マシューは部下に肩を揺すられて仮眠から静かに目を覚ました。出張先の村へかれこれ2時間以上電車に乗っていた。

 かなり遠方だというのに電車以外なら交通費を出さないなんてあまりにも酷すぎる。車でぶっ飛ばせば半分の時間で行けた筈だ。

 しかも、この仕事から帰ってもまた机に仕事の書類のタワーが積まれてあるだろう。僕の所属するギルドはいつブラック企業になったのか。マシューはため息をついた。


「気持ちは分かりますけど、文句言ってもしょうがないですよ。そもそも、仕事を断るか私以外に部下を増やせばいいじゃないですか。いつも何かのプロジェクトがあっては主任にされてますよね。信頼されてるのか押し付けられてるのかそろそろ心配ですよ」

「分かってるよルーナ君。それはボクが1番危惧してる」

 

それでもルーナ・アナスタシア、彼女がギルドに加入して更に僕の部下についてくれたおかげで随分と変わったものだ。

 どの上司にも物怖じしない態度に超高速で終わらせる仕事ぶりでたまに僕の代わりに無茶ぶりへの対応までしてくれている。感謝さまさまだ。


「あ、早く降りなきゃ。起こしてくれてありがとう」

「いえいえ、こちらこそ今日のお昼ありがとうございます」

 

抜かりないな! とてつもなく自然に奢らせる部下の言葉にむしろ感心を覚えて、マシューは駅へと歩き出した。


 

 現在の西暦、2315年。人間の歴史の中で最も繁栄していたといわれる18世紀から21世紀の科学の時代と比べれば、今はむしろ退化しているかもしれない。

 戦争、災害、人智を超える支配者の台頭で人類史は1度破綻した。しかし、時間をかけてこれらに打ち勝ち、新たな活路を見いだした人類は傲慢さと底なし沼の欲望を捨て、つつましくもかつての文化を取り戻した。

 マシューらが勤務する「世界横網連合ギルド」、通称、連合ギルドはその現在の世界を維持するための言わば統一政府なのである。


「ーーというわけで、人類を支配していた怪物、害魔を倒した人類最初の魔法使い、七賢魔士は大きな国で縄張りを広げて対立するのではなく、みんなで責任を持って、地球を守りながら人類を繁栄させようと決めたんだ。」

「ちょっと先輩、なんで紙芝居してるんですか。村長に挨拶は」


 ルーナがツッコミを入れる。それは至極当然だ。出張先の村に着いた瞬間マシューが子供たちに紙芝居を始めたのである。

 マシューらが村に来た目的はこの村がギルドを立ち上げ、連合ギルドに加盟する申請を許可するための調査だ。普通なら村長などの重役にまず挨拶をしに行くところだがかれこれ20分間、恐らく100枚を超える紙芝居を読み続けている。

 というか多すぎだろ紙芝居、巨大なリュックの中身9割それかよ。というか今時紙芝居かよ! 古いよ! もっといい方法あったよきっと。呆れた顔でルーナはマシューを見る。


「まだまだ新米だね、ルーナ君。信頼を得るにはまず純粋無垢な子供たちから。連合ギルドのことをまだ知らない村は意外と少なくないんだよ。ほら、見てよ。この子供たちのワクワクして輝いた目を」


 確かに........先輩の話はもう慣れているのか上手だったし、絵も紙芝居とは思えないほどの素晴らしい仕上がりだ。子供たちのすっげーとかやっべーとかかっけーとかの声も聞こえる。子供たちはいい。完璧に狙い通りだ。でも問題は大人だ。


「何あの人いきなり」「村のもんじゃないよな」「ギルドの人まだかな」


 あわわわ、ほら言わんこっちゃない。(言ってないけど)やっぱり怪しまれてるよぉ。ギルドの人間とも思われてないよぉ。

 ルーナがさすがに止めようとしたその時、紙芝居を見ている子供たちの中に1人だけ老人がいることに気づいた。紙芝居が好きな大人もいるもんだなとルーナは不思議に思って見た。


「あ、村長さん。いらしていたんですね」

「いやいや、こちらこそ待たせてすまない。いやはや紙芝居とは、今ではすっかり見なくなったが、これは素晴らしいものですなあ。」


 村長だったんかい。よくよく考えれば村長、結構前からいたな。


「マシュー先輩! 村長様がいらしたので」

「そうだね。いきなりすみません。私がマシュー・アンドリュー。こちらが部下のルーナ・アナスタシアです。」

「私が村長のサウロじゃ。よろしく。」



 簡単な挨拶を済ませたあとに村の会館でこれからの流れを説明する。まずは村の発展状況を視察する。

 連合ギルドが運営をする費用は加盟をするギルドに運営費として納税してもらうお金が大部分だ。その値段は村の発展状況によって変動する。加盟するギルドが納税をしてもしっかりと活動をしながらこれから発展が出来るように慎重に決めなければならない。

 だがマシューの頭の中でその値段はある程度少なく見積もられていた。ここは山々に囲まれた自然豊かで、風景や空気がとても綺麗だ。

 しかし、他の村や都市部とはかなり離れている。村を挙げて何かアピールする様子も見られない。よく言えばとてものどか、悪く言えば特に何も無い場所。発展しているかしていないかの2択なら後者であるのだろう。


「サウロさん、村長の目から見て村の産業などはどのような印象をお持ちですか」

「そうじゃなあ........農業、酪農はもうみんなやっておるから推すとすればそこじゃろうか。でもほぼ自給自足のようなもんじゃし、もちろん大工やモノを作っておる者もおるが、そっちに比べればまだまだ少ないかのう。」


 予想通り、といったところか。村によってさまざまだが、途上村の中でもこの村はまだいい方だ。中にはチンピラが喧嘩に明け暮れたりするような治安が悪い村もある。

 農産業を村人で協力しながら営み、平和に暮らしている。しかし、ギルドを作るということは村に武力が必要と判断したということだ。


「サウロさん、申請理由に書かれていた例の件ですが、現在、山の中の魔獣に何か動きは」

「最近はようやく落ち着いての。それでもいつ山を降りてくるか分からんわい........」


 この村の平和を脅かす原因、それは魔獣と呼ばれる有害生物だ。この世界には『鋼魔』と呼ばれる鉱石が鱗粉化し、大気と混ざって広がっている。人間は鋼魔に適応し、そのエネルギーを利用している。

 しかし人間以外の動物は、鋼魔に適応出来ずに死ぬ個体と人間と同様に適応する個体、そしてごく稀に鋼魔を体に取りこみ巨大化や凶暴化して魔獣に変化する個体に分かれ、この村は最近魔獣が山の中には入ってしまったため、山に入れないのだ。

 それにいつ山を降りて村を襲うか分からない。人口三百人程度のこの村なら魔獣は1日あれば村全体を破壊するだろう。恐ろしい話だ。


「1ついいですか。ギルドとして活動するメンバーはどれくらいいるのでしょうか」


 ルーナが村長に質問をする。ギルドのメンバーは最低で6人必要だ。ギルドで1つのパーティを組む時、一般的に6人と認識されていて攻撃、防御、回復の三職に2人ずつ配置する構成がバランスがいいとされる。


「メンバーは全員で12人じゃ。そもそもギルドはワシではなく、村の若いもんらが提案しての。ワシは初めは魔獣と戦うなどあまりにも危険に思って反対したのじゃが、やはり何もない方が危険だというのが村全体の意見でまとまったんじゃ。」


 ちょうど2パーティ分あるから問題はない。魔獣を倒すための魔法、光聖魔法は使えるかどうかは分からない。もし使えないならギルド設立後に再び連合ギルドから防衛士を派遣して習得してもらわなければならない。そこまで考えたマシューだが、あるアイデアが浮かんだ。


「あの、1つ提案したいのですけど、今お話を伺った限りだとギルドメンバーは全員武闘スキルのみ習得しようとしていらっしゃる方ばかりなのですが、この村は農産業は盛んに行っているのですから武闘スキルだけではなく、生産スキルを習得するメンバーを集めてみませんか」


「生産スキル........?」

「あ、私が説明しますね」


 生産スキルはその名の通り、魔法で生産をするスキルである。魔導剣と呼ばれる短剣に術式を読み込み、体内魔力を魔導剣を介して実行することで効率的かつ、スキルのレベルの上昇に応じて生産物の質を高めることが出来る。

 生産スキルが正式に実行可能になったのはつい最近のことで知らないのも無理はない。


「つまりマシュー先輩が言いたいのは、生産スキルでもっと今の産業を発展させて村をもっと活発にしていきませんか。ということです。」


 うん、僕の言いたいことまで言ってくれてありがとうルーナ君。要はそういうことだ。村の人口が増えれば仕事が増えて村人の収入も増える。単純に考えてもメリットしかない。我ながらいいアイデアだ。


「あ........今はとにかく、魔獣から皆を守れればそれで良い。よろしく頼みます。マシュー殿、ルーナ殿」

「あ、はい。こちらこそ、宜しくお願いします。」



 村長との話が終わり、村人と挨拶を兼ねて話しているともうすっかり日がくれてしまっていた。マシューとルーナは村の飲み屋で明日のことについて話すことにした。

 ここは村唯一の憩いの場なのか、多くの村人がどんちゃん騒ぎをしている。普通なら溜まったもんじゃないが、あまり聞かれたくない事でもここでなら誰にも聞かれないからむしろ気を置かずに話すことが出来る。あくまで例えばの話だが。


「先輩ぃー、最後の村長ぉぅーちょーなんかノリわるかったっすねぇ」

「酔うの早いな! というかお酒弱いんだから飲まないでよ」


 開始1分で一気飲みして酔いつぶれた部下にツッコミを入れるが、ルーナの指摘は的を得ている。今まで丁寧に話を聞いてくれた村長が急に話をはぐらかしてきた。いや、それだけではない。


「村長。少しいいですか」

「何ですかな」

「なぜ魔獣のことを、いや、魔獣じゃない。なぜ『秘密にしなければならない。 』のですか」


 (「どうか魔獣のことは今、この手紙を最初に見たあなたとの秘密にしていただきたい。」)


 この申請書が届いたのは連合ギルドではない。マシューの自宅だった。その時点で何かおかしかったが、秘密にしたいのならば何もしなければよかったのだ。

 ざっと調べて、何も無いな。はい、加盟を許可します。これからも精進してくださいね。これでおしまい。なんの疑問も抱かずに手続きを完了させられる。

 わざわざこちらを怪しませて一体なんの得になるのだ。

 それを踏まえてもう一度村の様子を見ると、この村の何もないという特徴のなさがかえって際立っている異常さにまで感じるのだ。村長はマシューの質問を最後まで聞かずに言った。


「マシュー殿。その答えは、ワシの口から出すことは、できんのじゃ」


 いや、訳が分かりませんよ。村長。そんなかっこいい感じの捨て台詞を吐かれて立ち去られても。そんなに考えている暇もないのに。

 明日からは色々やらなければならない。各産業の詳細の視察やギルドメンバーとの確認事項の話し合い、防衛士派遣の連絡、そして上司への報告。大忙しだ。


「明日も色々よろしく....って寝てるのかい」

「ましゅーせんぱいムニャムニャしごとおおすぎムニャムニャ」

「....夢の中の僕も大忙しか」


 さっさとねよ。



 翌日、マシューとルーナは各産業を営む村人への視察を開始した。どうやらその中でも普通の人より何倍もの土地を所有するリーダー的存在がいるらしく、村の市場をまとめているらしい。


「こんにちは。景気はどうですか」

 おそらく意味のない質問をしているのはマシューもよく分かっている。


「景気っつったってなあ....ここに景気なんてねえよ。毎日同じ事の繰り返しだ。分かるよ。つまんねえだろ。ココは」

「辺鄙な村でごめんねぇ。でも、静かな所だろ。なーんにもなくてさ」


 つまらなくてもいい。何もなければ。何も起こらなければ。村人誰に聞いてもそう答える。分からない。何が言いたいんだこの村は。もう魔獣が攻めてくるのか。

 それに、仮にこの村が連合ギルドに知られたくない秘密があったとしよう。それでかつ、連合ギルドに連絡をしたとしても防衛士達がわざわざ村をくまなく調べることはないだろう。

 森の中の魔獣を探索し、危険と判断されたなら討伐をして貰える。魔獣の体内の鋼魔は連合ギルドの研究材料でもあり、貴重な財でもある。

 そのため、かなり安価で依頼出来る。つまり方向はある。どうとでもなるのだ。それだというのに

 なんなんだこの伏線感は。


「ルーナ。ここの文章だけ消しておいてくれないか」

「え....でも、それでは公文書偽造になりますよ」


 職場で申請書を見せられたあの日、先輩の顔はいつもより真剣すぎたような気がした。

 先輩の言った文章は何故かは分からないけど消して欲しい文章は既に文字化けしていた。先輩がしたのだろうか。


「大丈夫。何かあったら責任は全て僕だ。だから、このことを知ってるのは僕だけだ。いいね」

「....分かりました」


 なんなんだこの伏線感は

 


 翌朝、マシューらはギルドの視察に訪れていた。申請書の内容から、この村のギルドは連合ギルドには内密に魔獣を討伐したいらしい。


「君たちは光聖魔法は使えるのかな。光聖魔法を使わずに魔獣を倒すのはかなり危険だよ」


 光聖魔法。体内に含まれる鋼魔のエネルギーを魔力運用すること。比較的簡単なものから超難関魔法が存在し、武闘系魔法だけではなく最近になって実用的な魔法が開発されてきた。


「いや....その、俺は剣の強化くらいしか出来ねえけどよ。」

 え、使えるじゃん。マジか。あ、でもよく考えれば剣の強化くらいなら独学でも簡単に習得出来るか。

 そもそも、ギルドに入っていなくてもその程度の光聖魔法ならほとんどの人が使えるし実際に使っている。

 村にきてから1度も使う人を見ていないものだから少し思い違いをしていた。

 つまりこの村は逆に誰も使って....ああ、ますます深まるこの伏線感。わからんわからんわからーー


「ルイス! お前をギルドに入れた覚えはないぞ」

「頼む! 俺も入れてくれ。なんでもする」


 何やら騒がしい声がした。訓練をしているメンバーの方からだ。


「何かありましたか」

「すみません。こっちの話です。そもそもお前は光聖魔法を1つも使えないだろうが!」


 そう怒鳴られて拳骨をくらい、悶絶するのはまだ13、4歳の少年だ。

 光聖魔法の適正が現れる年齢はもちろん個人差はあるが、おおよそ彼くらいが平均的だ。光聖魔法を習得しなければギルドに加入することは認められない。

 少年は必死に熱意を語っているように見えるが、こればかりはどうしようもない。マシューは口論の場へ近づいた。


「まあまあ、その辺にしておいてはどうですか。僕も彼くらいの年には強くなりたくて修行に明け暮れてましたよ。熱意があるならとりあえずギルドに加入させてあげて、光聖魔法を使えない場合は防衛士を派遣して習得して頂ければ。」

「無駄ですよ。マシューさん。なんせルイスは」


 剣を持つことができない。初めは何を言っているのか分からなかった。後でどういうことか尋ねると、剣を持つと手が白光色に透けて剣が抜け落ちるらしい。

 聞いたこともない現象だ。体内魔力の暴走か。いや、異能か。光聖魔法では開発が不可能な、ごく稀に使用者が現れる能力。でもそれは結局分からないということなのだが、今の所そうとしか考えられない。

 というか、また考えることが増えてしまった。性分かあの少年ルイスをもうほうって置けなくなっているのだ。はあ、どうしよう。



 出張に同行する部下というのは大抵は、暇だ。私が仕事を早く終わらせ過ぎたせいだけど。ルーナは現在村の主婦たちの話相手兼子守役だ。

 子供というのは改めて見ると底なしのスタミナや腕白さに驚かされる。

 かれこれ1時間以上ずっと鬼ごっこの鬼をやらされてこっちはもうヘトヘトだ。....と考え事をしているともういない。こっそり休憩しようかな。いいよね。少しくらいなら。

 ルーナはマシューと合流するために歩く。子供たちに見つかっても、仕事だから。で何とかごまかせる。私ながらいいアイデア。

 暫く歩いていると、他の家々からは離れて建てられた小さな家を見つけた。あれ、まだ挨拶していない村人がいたのか。

 今日こそ鬼ごっこをしていたけど、前日まではちゃんと村人に挨拶や話をしていた。まだ時間はたっぷりあるし、挨拶して行こう。


「すみませーん。」

 軽くノックをして呼びかけるも、反応はない。


「....留守かな」


 もうマシューの所に行っても良かったのだが、どうしてか気になってしまって、ルーナは窓から中の様子を伺った。

 余り広くない部屋の中には誰もいない。ああ、これは正真正銘留守だな。と諦めて引き返そうとした。


「おい、みすぼらしいが、これでも俺の家だ。勝手に覗かないで貰えるか」


 その時、ドスのきいた声が背後から聞こえた。すぐにこの家の持ち主と分かり、ルーナは慌てて謝った。


「すみません。あ、私、連合ギルドのルーナです。あの、怪しいものじゃないです。ちょっとお話させて頂きたいな。と思って。」

「....俺はガクだ。言っとくけどな、俺はギルド加盟なんか放っから反対だからな。村全体が賛成だったから黙ってやってるだけだ。連合と言ったって、所詮はデカいギルドなだけだろ。同じギルドの癖に、偉そうにルール決めてんじゃねえよ。」


 めちゃくちゃキレそうになったが、何とか落ち着いて話を進めた。


「アハハ、そんなことないですよ。加盟すれば、ギルドへの依頼で仕事が増えて村の財が増えたり、何かあった時に補償金が出たり、村にとって有益なことがいっぱいーー」

「キレてんじゃねえよ嬢ちゃん。顔に出てんぞ。とにかく、信用できないもんはできない。俺には二度と顔出さなくていいから、さっさと許可して帰んな。」


 バタンッ


 わざと大きな音を立てて扉が閉められた。暫くの間ルーナは呆然とするしかなかった。怒りに震えながら。



「え....俺のコレが、異能....。」


 マシューは先程の少年、ルイスと帰りながら話をしていた。


「まだ確証もなければ、どんな異能かも分からない。でも考えられるとすればそれが一番妥当な答えだと思うんだ。」

「そうですか。でも、駄目なんです。俺は、もっと強くなりたい。強い魔法が使える剣魔士になりたいんです。」


 気持ちは分かる。魔法を使い、剣で戦う。今の世界の強さを表す称号が剣魔士だ。誰しもが憧れる肩書きでもある。マシューにもそんな風に思う時期は、確かにあった。


「分かるよ。実は僕も普通じゃなくてーー」

「先輩ぁーーーーーい」

「うわ、どうしたのルーナ....もしかして、怒ってる?」

「き い て く れ ま す か」


 マシューは黙って頷いた。



「それで、酷いんですよ! そのガクっておじいさん。私たちは! こんなに! 村のことを! 考えてるのにぃーー!」

「そうだね。君の言う通りだ。君が正しい。だからお願いだからヤケ酒だけは辞めてぇ! どうして君はお酒弱い癖にそんなに積極的に飲むのぉ!」


 マシューはまたベロベロに酔った部下を見て大きくため息をする。今日はルイス君もいるというのに。


「....ごめんね。お見苦しい所を見せて」

「いいですよ別に。周りも同じような感じなんで。それより、さっきの話しの続きいいですか」


 そう言われてマシューは再び話し始める。実はマシューもかつては光聖魔法の使ってはいなかった。なぜなら、マシューも異能を持つ人間の1人だからだ

 。

 マシューの異能は剣触(ブレーダー)。全身に強力な魔力のベールを纏い、あらゆる剣の攻撃や魔法を受け止め、弾き返し、無効化する。

 マシューはこの能力を持っているせいで、通常の光聖魔法は上手く使うことができない。

 そのため剣を使わない戦闘術、そして異能を、12歳の時に偶然出会った師から8年かけて完璧に習得した。

 その後は猛勉強をして23歳で連合ギルド欧州支部に加入。25歳の今にいたる。


 ざっと自分の経歴を話した。自分語りは少々恥ずかしいが、ルイスが真剣に聞いてくれたから良しとしよう。


「マシューさん。俺も諦めません! 努力してマシューさんみたいに強くなります!」

「ありがとう。でも連合ギルドに就職することはおすすめしないよ。だってあそこブラックきぎょ」

「うっぷ....せんぱい....すみません。やばいです。」


 だからあれほど言ったじゃん! ああヤバいヤバい


「すみません! トイレ! どこですか!」

「ああ、そこの角....ってマシューさんらか....あ、いや、トイレは....その」

「すみません! 早くしないと! ヤバいです!」

 

なんで店長があたふたしてるんだ早くしないと

「ああっ! 分かったよ! こっちだ」

 

案内されて勢いよく扉を開けた。


(え、....これは!)

 

バタンッ

 

勢いよくドアが閉まり、中からグロテスクな音が響く。店長がまずいという顔をしているが、マシューはその理由をおおよそ把握することが出来た。

 後は酔いが覚めたルーナに確認をして証拠を集めるだけだ。


「あーすっきりした。あ! すみません先輩。迷惑かけて」

「いいんだルーナ。それより、少し聞きたいことがある。君になら絶対に分かる話だ」


 ルーナは不思議そうにマシューの、何かを確信したような笑みを見た。

ルーナちゃんとルイス君ののキャラ定まらず。マシューにだけはなりたくねぇ。

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