旅の始まり(4)
ぽっ。
サティアの人差し指の先端から小さなオレンジ色の炎が現れた。
「おおっ!」
葛飾は感嘆の声を出した。
「こっちの世界じゃ魔法使いは空想の存在に過ぎないから、すごい感動する」
「えへへへへ~それほどでも・・・」
にたぁとした表情でサティアは照れる。
「あれ?」
しかし、浮かれて気が抜けてしまったために炎の出力を誤って強めてしまった。
ぼぉっっ
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、サティアさん、炎に出すぎてるよ!」
「はわわわわわわわ、すみませんっ!」
その刹那サティアは急いで炎を消したので、幸いにも2人を含めて怪我人は出なかったし、店舗の被害も出なかったが、さすがに店員や他のお客も驚いていた。
「はぁ・・・危なかった」
「ごめんなさい、つい調子に乗ってしまって・・・」
「いや、私の方こそ場所を選ばす、興味本位であなたにやらせてしまって・・・ごめんね」
「お互い様ってことにしましょう」
「うん・・・」
それから3分くらいお互いテーブルの下の方を向きながら沈黙していた。
「・・・大分休んだし、そろそろ出ようか?」
「・・・はい、そうですね」
午後3時。2人はスターバースコーヒーを出た。1時間程度のんびりできたのでサティアは大分疲れが取れていた。
「とりあえず、今日はあまり遠くまでは案内できませんが、どこ行きたいですか?」
「えーと・・・ですね・・・このあたりですと・・・」
サティアはロッカーには預けず肩から下げていた小さな鞄から、ビョルヴィーカで出版されている日本旅行のガイド本を取り出した。
ぱらぱらとページをめくっていき、真ん中あたりのページでめくるをやめ、葛飾に見せた。
「これ!これです!」
そのページに描かれてある挿絵には沢山の高層建築物と道路を交差に行き交う沢山の人たちが描かれていた。
「これは・・・渋谷のスクランブル交差点?」
「そうです!ここ行ってみたいです!」
葛飾は東京都内に住んでおり、プライベートで渋谷のスクランブル交差点はよく使っており非常に身近な場所と感じていたため、なぜこんな所が別世界の人たちの名所になっているかよくわからなかった。
「へぇ・・・、渋谷はここからだと近いし、いいんじゃない?」
「はい!じゃあ行きましょう!」
「うん」
2人は渋谷に向かうために、東京駅の八重洲口の方面の改札口へ向かった。
サティアはるんるんと心躍らせ、葛飾に寄り添いながら東京駅の通路を歩いていった。
葛飾の方もこれも悪くないと思いながら、これからのことを想像しながら歩いていった。