旅の始まり(3)
サティアの荷物を駅のロッカーにひとまず預けて、八重洲北口の方にあるカフェスターバースコーヒーに来た。
サティアはコーヒーフラペチーノ、葛飾はアイスコーヒーを注文し、2人掛けの空きテーブルを見つけたので、そこの椅子に座りながらしばらく身体を休めることにした。
「んんっ!この世界のコーヒーも美味しいですね!」
サティアは先ほどまでの疲れが消し飛んだかのように目を輝かせながらストローを咥え勢いよく、ずずっ、ずずっと音を立てながら、コーヒーフラペチーノを口の中に吸い込んでいた。
「気に入ったのね」
葛飾はゆっくりとアイスコーヒーを飲んでいるため、透明なプラスチックのカップに入っているコーヒーの量はあまり変わっていなかった。
「はい!この世界のカフェも好きになりそうです!」
「それはありがと、そういえばサティアさんの住む世界のカフェとは何か違ったところとかあったりするの?」
「私、よく地元のカフェに行くのですけど、もっとこじんまりした店が多い感じですね。あと長時間いても退屈しないように雑誌とか絵本、小説とかも置いていますね~」
「へぇ、本をのんびり読みながらゆっくりできるのかぁ、いいなー」
「でも、この世界のカフェもすごいですよ!メニューが沢山あってどれもすごく美味しそうです!私たちの世界ではコーヒーとパンケーキくらいしかメニューにないのですよ」
「お互い、隣の芝は青いってことかー。」
「そうですねぇー」
そんなこと言っているあいだに、サティアが飲んでいるコーヒーフラペチーノはすでに空っぽになっていた。葛飾の飲んでいるアイスコーヒーはまだ半分くらいある。
そのタイミングで葛飾は話題を変えた。
「そういえば、サティアさんは魔法を使えるのだよね?どんなのが使えるの?」
「魔法ですか・・・一応調理するくらいの火力を操れたり、あとは家の照明を長時間保つための発電と、箒をつかって移動したり、それから・・・」
「意外と地味なのね・・・」
「こちらの世界とは真逆で科学の力が皆無ですので・・・」
「あ、そういやそうでしたね・・・」
「じゃあさ、指からちょっとした火を出せたりするの?」
「はい。それくらいなら簡単にできますよ。見ます?」
「見る!見る!」
「うん!じゃあちょっとだけ!」
サティアは人差し指を葛飾の前に出し、簡単な呪文を唱えた。