旅の始まり(2)
「どうしよう・・・」
とりあえず反対側の場所まで来てしまったというわけで、元の場所まで戻ろうとするが先ほどまで東京駅の景色に夢中になってしまったため、どうやってここまで来たかはっきりと覚えていなかった。
「えー・・・と、えーっと・・・」
サティアは迷路の様な東京駅の通路を彷徨い続けた。
しかも我に返ったため、鞄の重さを感じるようになり汗だくで着ている服も湿っているほどである。
「あの・・・すいません・・・ジェイアールヤエスチューオウグチは何処ですか?」
とにかくその辺りを歩いている人たちにJR八重洲中央口の場所を尋ねた。8人くらいに質問してようやく待ち合わせ場所のJR八重洲中央口に辿り着いたが、時刻はすでに待ち合わせ時間である午後1時を40分以上オーバーしていた。
「大変・・・時間が!」
汗をだらだら流しながら。サティアは急いで案内人である葛飾を探すが人があまりにも多すぎて葛飾が誰だかわからなかった。
「人が多すぎるよぉ・・・う、うぅ・・・」
困り果てた末に、とうとうサティアは泣き出した。
「うぇ~~~~~ん、カツシカさん何処ですかーっ!」
東京駅の人が沢山行き交う改札口のど真ん中で、大声で泣いていたため周りの人は何事かと思いながら、彼女を見ていた。
見知らぬ土地での旅行先でいきなり危機に陥ったサティア。
そんな泣き続けている彼女に、紺色のカーディガンを着た黒いリボンの付いたポニーテールが特徴の身長170cmくらいの女性が声を掛けた。
「・・・さんっ!サティアさん!」
「ふえっ?」
「良かった・・・サティア・シロノワさんですよね?初めまして、私が今回あなたの案内人を勤める葛飾花火です。」
この人がサティアの旅の案内人である葛飾花火であった。
「カ、カツシカさん・・・」
「あ、あと私の事は気軽に“花火”って呼んでね・・・って、えぇ?」
「うわぁんー、良かったぁ、会えたよぉー」
サティアは泣きじゃくりながら、葛飾にぎゅっと強く抱きついた。
「ちょっ、ちょっと、やっと会えたと思ったら何よいきなり!」
はっと気がついたサティアは、抱きついていた葛飾から少し距離を取る。
「あ、すまいません。つい・・・嬉しかったので」
今まで泣いていたせいで頬が赤く涙と鼻水をたらしながら、笑う。
「いいの、いいの。気にしないで。私だって初めての海外旅行は道に迷いまくったし」
「ありがとうございます!カツシカさん!」
「花火でいいよ」
「うん、ハナビさん!」
「とりあえず、あなたちょっと疲れているっぽいし、私もあなたから聞いてみたいことがいっぱいあるから、ここから近いカフェで休まない?」
「いいですね!」
「じゃあ決まりね。とりあえず、その重たい荷物をロッカーに預けましょうか?」
「・・・そうですね」