理系蛮族の食事事情
どうも皆様ごきげんよう。
『ツイート感覚でエッセイを書いたら日間ランキングに乗ってしまった』という驚異の体験から、調子に乗って第二弾を執筆してしまった理系蛮族テラであります。
今回は、理系蛮族の食事事情について少し紹介したいと思う。
野外活動が多い子を主人公にした作品であれば、多少は参考になるのではないだろうかと勝手に言っておくが……事前に注意する事がいくつかある。
理系蛮族テラにだって当然、純粋無垢な少女でいられた時代があった。
よって、かの黄金期時代に絆を育む事に成功した友人が、幾人か存在している。そんな彼らの
「お前の食事、クソすぎる 」
という発言から察するに、我が食生活はどうやら文化人の食事からはズレてしまっている部分があるらしい。
__念の為言っておくが、理系蛮族全員が日常的に私のようなクソ食生活を送っているわけではない。
私の場合は単に他の人々よりかは家が遠く移動費がかさみ、あまり食事に金を使いたくない、極力外で食べ物を買いたくないという意識が人一倍強い方であるというのは事前にご留意願いたい。
しかしながら!
調査地での食べ物は皆平等である!
よって、私だけがクソ食生活と罵られる事はないのであります。
__さて、前置きはこの程度にして本題に入るとしよう。
まず調査地での食糧調達の基本は、買い溜めである。
値段の安い食糧、日持ちする食糧、調理の簡単なシチューやカレールーなどを買い込むわけだが、ここでジレンマがひとつ。
調査は、肉体労働である。
平常時以上に体力を消耗するし、あまりに貧相な食事をしていてはシャリバテによって倒れる可能性がある。そう、この私のように。
よって手を伸ばし引っ込めを繰り返してしまうのは、そう、肉! 魚!
タンパク源なのである!!
肉や魚は高い!!
移動費や度重なる宿泊でじわじわと減っていく金銭、彼らがお支払いのたびに上げる『チャリーン』という泣き声が、貴方がたには聞こえているだろうか?!!
なら節約しろ。そう思われる方もおられるだろう。
それは、正論である。
しかしながら、人間は正論だけで動く生き物ではないという事は、繰り返されてきた歴史が証明されている……そうは思わないだろうか?
肉食べたい!!魚食べたい!!タンパク質食べたい!!野菜だってモリモリ食べたい!!お腹すいた!!
……人間は、本能に忠実なのである。
特に、食事しか喜びがないような状況ではなおさら。
お金はない。しかしお肉も魚も食べたい。
理系蛮族をじわじわと蝕むこの危機的状況を打破する為に必要なモノが何か、皆様には分かるだろうか?
そう、それは……
狩りなのである!!!!
◇◇◇
およそ三年前の話をしよう。
受験が終わり、新たな世界に胸を踊らせる純粋無垢な一年生。
そんな彼らの前にとん、と置かれたゆで麺の上には、見た事のない菜っ葉が乗っていた。
「これ、なんですか 」
当然、一年生は問うた。
その質問に、既に百戦錬磨の先輩様はこう仰られた。
「食べられると評判のその辺の草 」
……。
…………。
なるほど、草でしたか!!!!!!!
いろいろ突っ込みたいところはあったが、調査後の空腹には敵わない。
目の前に食べ物がある。ならば食べるしかない。
それ以外の選択肢、それ以外の食糧がどこにあるというのだろうか?
調査地の遥か彼方に存在する下界? そんなん辿り着く前に空腹で倒れるわ!!
という事で、パクリ。
そのひと口から己の食生活観念が崩壊したという事を、あの時の純粋無垢な一年生は知らなかった。
『超おいしいかどうか』と聞かれるとコメントに詰まるが、何も乗ってない麺と野菜(野生)が乗っている麺。おいしいのはどちらだろう?
乗っている方に決まっている!
その調査地は離島だったので通常以上に食料が高く、入手が困難だった。肉は全て冷凍品、生野菜の入手などは夢のまた夢の世界であった。
__南国ゆえに、パイナップルだけは50円〜100円で手に入ったが。
とにかく、生野菜が手に入らないなら野菜に代わるものを手に入れれば良い。
美味しく調理できるものならなおさら良い。事前に調べ、知識を得よう。
そのような思考に走ったのがまず最初。
幸いテラは野草の調理法や薬効に関する知識が人よりはある方だったので、その気になれば『食べられると評判の草』をある程度集めることができた。
これで野菜問題は解決である。
そして、さらなる問題は……タンパク源。
つまり、肉や魚である。
この問題を解決したのは、同行者の中にいた釣り好きの同期であった。
彼はなんと、自分のシフト外には釣りに行き魚を釣り刺身を作り、夜の食事に華を添えてくれたのである!
なんと、ヤシガニを捕まえてきて調理してくれた事もあった!
さて、テラは採集スキル・安価での料理スキルにはそこそこ伸び代が。
友人は、釣りスキル料理スキル共に超高い。
……探索外スキルを持つ人間が、この調査メンバーにはちゃんと揃っていたのである!!
慢性的な飢えの中!!
自力で獲物を獲るという事の素晴らしさを、テラはこの時の思い知ったのであった!!
__ちなみに、日本国内の話である。
◇◇◇
この調査には、いろいろと騒動もあった。
台風だの何だのに翻弄され。
食糧調達に行けず。
食糧維持のために調査に行かないぶん一日二食に減らして保たせ。
台風で電気が使えなくなったので水シャワーと予備電源でなんとか沸かしたお湯をかけた麺でやりくりし……
こう書くと過酷に見えるだろうが、まぁ、初めての調査としては非常に充実したものだったと思う。
そして食事に関する観念も盛大に狂わされたと思う。
いまや純粋無垢な一年生、食事の上に『その辺の草』が乗っていることにツッコミを入れる☆1レベル蛮族は存在しない。
今ここに立っているのは!
『本気で食べ物に困ったらその辺で食糧調達すれば良いじゃないの』という、昔ながらのスタイルを身に付けた☆3蛮族なのである!!
そうしてどんどん文明社会から離れ行く理系蛮族、実は今日も実地から帰る途中の電車でこれを執筆しているのでありました。
装備ガチガチの私に刺さる、公衆の皆様からの視線が痛い。
そんな事も日常茶飯事なのでありますが、気にしません。
何故ならばテラはこれから、ステーションではなく我が家に帰るのである。
家に帰れば親がいて、料理の支度をしてくれている。
申し訳程度に手伝えば、テーブルに並ぶのはめんつゆと生姜で味付けした焼きナスや、シャキシャキの生野菜サラダ、すぅっと沁み通る冷たさの冷や奴。
それから、テフロン加工の剥げていない優秀なフライパンで美味しく焼き上げられた肉を食べる事ができるのだ。
ふらっと街に出れば食糧が入手できる、簡単手頃に調理ができる設備も充実している。
街では当たり前の事だろうが、これは非常に幸せで、何よりもありがたい事であるのだなと、調査から帰る度に痛感するのだ。
そしてファンタジー世界でモンスターを屠り、そのまま放置して先を急ぐ勇者どもには。
目の前に肉が転がってんだぞ!!
肉だぞ肉!!
なんでちゃんとバラして燻して持っていかないんだよ勿体無い!!
食べないのはバカだ、ただのバカだ!!
……というツッコミを日々入れさせていただいている。
何が言いたいのかと言いますと。
これを読んだ皆様方には、何気ない食事の幸せを噛み締めていただきたく。
そして作品を読み書きする上では、生き物を殺す行為は元来『生きる為』『食べる為』に行う前提のものであるのだという事も、思い出していただきたいのだ。
……駆除の為だけの殺し。
命を戴かない殺しというのは、それを行う者にそれなりの苦痛を与えるモノなのであります。
そんな言葉をこぼしながら、理系蛮族は筆を置くのでありました。
家帰って初めて頭に葉っぱが付いていた事に気付きました。電車に乗っている間、ずっと葉っぱを頭に付けていたようで……
きゃっ!おしゃれ!!