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失われた未来の再建  作者: 水素
10/18

革命軍の兵士

 雛はミネルヴァと二人、ロドンの中心地に向かっていた。広い道に沿って古びた木造の民家や、店などが立ち並び、空は春のように穏やかで温かみのある天気であるにもかかわらず道には薄い雲霧がかかり暗雲が立ち込めているかのようだった。街並みは飾り気が無く索漠としていた。

「ソフィさんは連れてこなくていいんですか」

「哲学者でもない者に付きまとわれても邪魔なだけだ」

「君の辛辣な口調にも少しは慣れてきたかね」

 そう言い、深いため息をつく。

「昔のことを考えるのであれば数学をやっていたいものだ。だけども…」

 そこまで言って言葉を止める。

「そんな暇があるのなら哲学者としての責務を果たせ。」

「そうですよね。わかりましたよ。ところでデスデまではどのくらい?」

「五キュービッドだ」

 ブレスレットからミネルヴァの声がする。

「確かザルツからロドンまで二十キュービットと言ってましたけど実際の所何キロなんです?」

「約三十キロ」

「つまり一キュービット、約千五百メートルか。結局のところ『ネクタール』から『デスデ』まで約七千五百メートルですか」

 雛は人がほとんど歩いていない街を歩きながら静かに頷く。

 幽霊が出そうな陰険で鬱陶しく湿った、不快な空気が三十メートルほどの幅がある道に漂う。

 雛はさらに歩き続ける。

 広い道を曲がり、狭い路地へと入る。

 時間が過ぎ、別の広い道に出る。景色が先と一変した。木造の建物の多くが倒壊し、瓦礫の山になっている。小さい木片は燃え尽き、灰燼と化していた。ほとんど民家のようで、崩れ落ちた建物の跡地に残る褐色の家具から伺い知れる。ただ家具の引き出しや扉はほとんどが無造作に開けられ、中には何も入っていないことから住人が急いで逃げたのか、盗まれたのだろう。一部の、全焼した建物の焼け跡は見るも無残である。部屋の中にあった大部分のものは燃え尽きて塵となり、残った物も原型をとどめておらず、焼けただれていた。周辺の、熱で変色した壁が惨状を物語る。

 広い道には瓦礫が散乱し、まともに歩くことは困難である。地面には冷えたマグマのような赤黒い液体が付着していてあるところでは水溜りのようにたまり、またあるところでは川のように流れ出た痕跡があった。

「ひどいな…。これが広場の人が言っていた革命の爪痕か」

 雛は息を飲まずにはいられなかった。ミネルヴァは黙ったままだった。

 さらに歩き進め、人を見かけるようになった。だがその者たちが屍のように見えた。

 風化して脆くなった石のような色あせた垢衣をまとい、虎視眈々と獲物を待つ弱り果てた狼のようなぎらついた目を雛に向けている。道は汚穢(おわい)し、溝に溜まった水は腐敗し、異臭を放っている。

 子連れの若い女は道脇に倒れていて、蒼白な顔を沈め(うずくま)っている。

 子供の方はまるで骸骨ように痩せほそり、生きているのか否か判別がつかない。

 朽ち果てた死体を目にした。男のようで頭部が完全に砕けていた。着ていた服は汚泥にまみれ、夥しい数のアリが死肉にたかっていた。小さな顎で肉を食いちぎる音がもぞもぞと聞こえる。他に幾つもの人、犬、猫、鳥の死体が道脇に無残に倒れていた。

 雛は後ろから服を引っ張られるのを感じた。振り返ると五歳ぐらいの、背丈の小さい女の子が雛の上着を掴んでいた。穴だらけのしなびた襤褸をまとい、肌は炭のように黒く栄養失調の老人のようにしわだらけで、棒切れのような手だった。深緑の目は輝きを失くし、死んでいるように見えたがなお必死に何かを訴えかけるものだった。

 雛は何かしようと持っていた鞄を漁る。中のポケットに仕事の合間に舐める小さな飴を一つ見つけた。

 雛はそれをその女の子にあげた。女の子はそれを受け取ると袋を開けてそれを口に入れる。弱々しい歯によってミント味の飴が破砕される音がする。食べ終えると女の子は再び上着を強く引っ張った。

「申し訳ないがもうない」

 雛はそう告げた。

 女の子はその言葉に答えずなおも服をはち切れんばかりに引っ張る。

「雛、行くぞ」

「でも…」

「僕らにはどうすることもできない」

 雛はどうにも動く気になれなかった。女の子の視線が足枷のように雛には感じられた。

「わかった」

 感情を押し殺してそう言い、女の子の手を振りきりその場を後にした。

 二時間ほど歩き、大理石の建物が目立つようになる。清潔な、白く輝く大理石の建物は先の無残な光景を一切彷彿とさせないだろう。

 そして『デスデ』という酒屋についた。

「ようやく着きましたか」

 雛は顔を伏せ、痛めつけられた子猫のように悄然としていた。

「こんなところで気落ちするな。これからが本題なんだ」

「本題ね。手がかりと呼べる手がかりがごくごく普通の酒屋から入手できることを祈りますよ」

「何自暴自棄になってる?早く中に入れ」

「そうですね」

 弱々しい返事をする。

 雛はゆっくりと戸を開け、中に入る。木製の棚に『ネクタール』のバー同様に様々な言語のラベルが貼られた様々な酒が売っている。ただここに売っているのはネクタールだけではない、という違いはある。

 客は数人で、店内をうろついて買う酒を物色していた。

 雛も酒を見る素振りをして様子を伺う。十分ほどしてドラゴンの紋章が入った赤地の軍服を着た男が二人入ってきた。

「おそらく外見からして革命軍の兵士だな。あの紋章は政府官邸でも見たし」

 酒屋の店員に近づくと体の大きい方の、顎がしゃくりでたがめつい顔の大男が声をかける。

「あれは入りましたかな?」

「もちろんですよ。どうぞ」

 短い会話を交わした後、三人は店の奥へと入っていった。

「なんか胡散臭いね」

 雛はちらりと流し目で見て言った。

「怪しい。ひとつ作戦を打って出るか」

 雛は右手を近づけ、ミネルヴァの言葉に耳を傾ける。最後まで聴き終え、

「ずいぶん単純だけど効果はあるかもね。じゃあやりますか。

 化合召喚

 炭素

 窒素

 酸素

 硫黄

 カリウム」

 特徴的なプラトンの五立体が五芒星の頂点に描かれた魔法陣が出現し、そこから小さい長方形の黄色い円筒状の花火が出現する。次にミネルヴァに小さな木の枝を渡される。

「これを使ってもう一回。

 化合召喚

 炭素

 窒素

 酸素

 硫黄

 カリウム」

 再び同じ魔法陣が出現し、木の枝をマッチに変えた。

「火をつけて投げろ」

 マッチを擦り、花火に火をつけるとそれを思いっきり観音開きの窓から道に投げた。

 筒から鯨の潮のように赤白い火花が舞い、人だかりができ始める。

 酒屋の客は外へと見に行き、店員と兵士が騒ぎを聞きつけて奥から出てきて店を出る。

 雛は棚の隅に身を潜め、店内に誰もいなくなったのを確認して奥へと入る。

 奥の部屋は十畳ほどの広さで、品物の酒が多数貯蔵されている。灯りはなく、天窓から光が差し込む。ひんやりとした空気が漂う。掃除は行き届いていて清潔ではあるが壁の隅には黒い砂がたまっている。部屋の中央で雛は立ち、周囲を見回すが特に変わった様子はない。棚の一つに火の灯ったランタンが置かれていた。

「彼らは一体何をやっていたのだろうか?」

 雛はよく周りを見回す。

「あれ?」

 木板が敷き詰められた灰褐色の床が目に止まる。

 板目の隙間の間隔が他と違う箇所があることに気がついた。

 雛はかがんで木板を剥がすと何枚かがまとめて剥がれた。地下へと続く薄暗い階段が木板で蓋をされていたのだ。

「なるほど。言ってみないといけないよね」

「当たり前だろ」

 そう言い、ミネルヴァは雛の肩に乗る。

 雛は静かに足音を響かせずにゆっくりと階段を下って行った。花崗岩のような石が積まれてできた壁が階段とともに続く。石の隙間は白い粘土質の土で固められている。外界から音が一切聞こえず、静寂が支配していた。

 階段を下り終えると、とある部屋に出た。そこにも酒が貯蔵されていた。教会で入手した紙と同じ紙の書類が置かれている。またロドン全域が詳細に描かれた荘厳な地図が広げられたままだった。

 雛は部屋内を歩いた。地下室はとても広く、壁の隙間から水が一滴ずつ漏れていた。床には細かい埃がたまっている。靴跡も見られた。靴音が異様なほどに地下室に響いた。

「怪しそうだけど特に何もないね」

「雛、あれを見ろ」

 左側方に翼を向ける。

 壁一面に漆黒の鉄でできた銃器が収められている。約五十丁が保管されている。長身の火縄銃のように一発ごとに弾の装填を必要とする機種だ。だが既に装薬と鉄の弾が装填されており、いつでも発射できる状態になっていた。ただ火縄銃と違って安全装置が付いており暴発する心配はない。

「銃がずらりと並んでいる」

 その時、階段の方から三人ほどの足音が聞こえてきた。

「隠れた方がいいね」

 雛は急いで壁際の棚の陰に隠れた。

 階段から先ほどの店員と兵士が会話を交わしながら現れた。

「教会は何をやっているんでしょう?見す見す最新兵器を奪われるなんて」

「情報ではヘクサである仮面をかぶった男とその連れである女とフクロウが奪ったということですね」

 大男でないもう一人の兵士に酒屋の店員が答える。

「元々最新兵器を革命軍に提供したのは教会だというのにどうしたんでしょうね。まぁ新聞では絵として発表していますが。それにしても教会は一体どんな最新兵器を製造したのでしょうか?元々非戦闘集団であるにも関わらず」

「それはさておき最新兵器の隠し場所の目星はついたのですか?」

「手がかりは全くない」

「ところで革命軍が所有している二つの最新兵器のうちの一つはどうなっているのですか?」

 店員が聞く。

「政府官邸のどこかに保管されている話ですが知っているのはティウスとキャシオ・エンノア含めたごく一部の貴族だけでしょう」

 もう一人の兵士が答えた。

「しかし最新兵器なんか旧政府軍が壊滅した後に誰に対して使うのでしょうか?ヘクサ狩りも旧政府軍が主導したわけであって革命軍がそんな無駄なことに資金を費やすとも思えませんし。他惑星と戦争でも始める気ですかね。政府と教会との癒着が白日の元に晒され教会もピンチになっているから革命軍によくわからない最新兵器を渡して革命軍からの攻撃を防ぎ存続させようとしているという話ですけど。でも教会側が最新兵器なんか持ってるなら革命軍を潰すという案もあると思いますがね」

「お前らも俺も革命軍の一兵士に過ぎないんだ。そんなことが関係あるか?上の連中に従っていればいいさ。つまり最新兵器の発見という任務を忠実に遂行すればいい。最新兵器を革命軍や教会がどう使おうがそんなことを考える必要もない。やるべきことをこなしていけば結果がついてくる。そして普通に出生できる。俺だって元は一兵士だったが今では革命軍直属部隊の隊長だ。仕事に対して疑問など抱かずにやっていけばお前らも将来は俺のように安泰だ。分かるだろ」

 大男が威厳をもって応える。

「はいよ」

 もう一人の兵士と店員が威勢良く答えた。

「こいつらを尋問したところで政府官邸の何処にカードがあるかはわからないな。でも確かなことは一つ。手紙の内容からもわかるがカードを兵器に使うということだ。しかも生物殺しに」

 ミネルヴァが音を立てず小さな声で述べる。

「そういうことらしいね」

 雛は俯いて答えた。

「でどうするの?」

「こうする」

 ミネルヴァは棚にある酒瓶を握ると翼から離し地面に落とした。瓶が悲鳴をあげて粉々に割れて破片が散らばり中の液体が地面に広がる。

「誰だ?」

 三人は二人の存在に勿論気づく。

「ちょっとこれじゃ普通に逃げられないじゃないか」

「心配ない。まぁ俺はブレスレットに入って喋るから話している振りをしろ。絶対逃げるなよ」

「えっ、ちょっと待ってくれ」

 動転している雛を顧みずミネルヴァは粒子になってブレスレットに入る。

「そこで何をしている?」

 三人が雛の前に立ち、銃を構えている。

「言われた通りにしろ。わかったな」

 雛はブレスレットの方を見て仕方なく頷下(がんか)する。雛は右手を左肩に乗せた。

「ちょっと済まないね。大切な酒瓶を割ってしまって。あとでお金は払うから勘弁してくれ」

 ミネルヴァが軽く気取った口調で答える。雛は口を動かしているだけである。

「何をしている?」

「いや、君たち革命軍の連中は最新兵器を探しているんだろ?」

「聞いていたのか。盗み聞きは泥棒の始まりというのは知らないのか?」

 もう一人の兵士が言う。

「盗み聞きじゃなくて嘘の間違いじゃないか?それよりちょっと旦那に耳寄りの情報があるんですよ」

「何が情報だ。俺たちの話を盗み聞きしてただで済むとでも?」

 もう一人の兵士が雛の頭に漆黒の銃を突きつけて声を荒らげる。雛は額に緊張と恐怖の汗を浮かべる。

「まぁ落ち着いてくだされ。ひとつここは取引と行きませんか?」

「取引?」

 店員が首をかしげる。

「私は昨日盗まれた最新兵器のありかを知っています。それに犯人も」

 三人が顔色を突然変える。

 雛は内心、ミネルヴァの発言に驚嘆する。

「偶然新聞に載っている三人を見かけたんですよ。もしあなた方がその情報を上司たちに報告すればあなた方の手柄となります。そうすればあなた方の言う『出世』は間違いなしでしょうね」

 雛はミネルヴァの言葉に合わせて、余裕で得意げな表情をした。

「何が望みだ?」

 大男が言う。

「そうですね。私を革命軍の兵士として雇っていただけませんかね。そちらの旦那ならそれなりの地位におありでしょう。どうかそういったことを計らっていただけませんか?」

 大男は銃を向けたまま静思する。

「隊長、私は賛成しかねます。こいつの言っていることが嘘という可能性もあります。信じられませんね」

「私も同感です。この男の話は信じられません。この地下室の存在をどこで知ったのか?こいつは旧政府軍の仲間かもしれません。情報を持っていると言って油断させ、革命軍を貶めるつもりでしょう」

 もう一人の兵士の反駁に店員が続く。

「私が?そんな馬鹿なことを。ただ革命軍に入れて貰えば私の大切な妻を養えると思いまして。私はランカスター家の親戚だったのですが私が貧しい家庭の娘と結婚したせいで縁を切られまして。だから彼女のためにも何とかお金を貯めたいと思っているのです」

「そうかい。アルビヨンでは珍しいやつだな。あの名門のランカスター家の血を引いときながら愚かなことをするとは。だがその気持ちはわかる。俺も他の奴らと違ってそういった気持ちを持っている」

「旦那に共感していただけて大変光栄です。それも踏まえて言いますと、だからヘクサの仲間入りをしてあなた方に情報を提供しようと考えたのです」

「しかし嘘を言って命乞いをしているようにしか…」

「じゃあ俺たちをまず兵器を盗んだ奴に合わせてくれないか?そうすれば信じてやろう。兵士の職も約束する」

 大男は兵士の話の腰を折って太い声で言う。

「もちろんですとも。そう言っていただいて感謝します。今からでもご案内をしますよ。その前に物騒だから銃を降ろして頂けませんか?」

「いいだろう」

 二人に合図を出して銃をしまわせる。

「早く私たちをそこに行け」

 もう一人の兵士が言う。

「はいよ。わかりました」

 雛は階段を上っていった。

 酒屋を出ると雛は来た道を帰る。三人が雛の後を、不穏で不審に感じながらもついて行った。雛はこのまま歩いていけば宿にたどり着いてしまいことに動揺していた。

「どうすれば」

 心の中で思った。

「このあたりだったはずですよ」

 ミネルヴァが不意に言う。

 荒漠とした静閑な木造の建物が続く、宿の近くと変わらない街並みだ。

「確かこの建物にいるはずです」

 ミネルヴァの言葉をフォローするため、雛は空き家と思われる暗く澱んだ雰囲気を漂わせる一つの建物を指した。

「そうか。お前はここにいてヘクサを見張ってろ。俺たちは中に入ってくる」

 大男が命令すると店員は残り二人は中へと入っていく。

「さてと」

 二人が建物に入ったことを確認するとミネルヴァがそう言い、不意にブレスレットから出現すると店員の頭を翼で思いっきり叩き、声を上げさせずに気絶させる。

「すぐに変身しろ」

 四枚のカードを装填し、

「元素変身召喚」

「エレメンタリー・アライブ

 承認」

 光に包まれ一瞬で変身する。

「よし、それでいい」

 ミネルヴァは雛の肩に乗る。

「早く行け」

 

 二人は建物内に入り、捜索を続けていた。狭く低い天井の部屋を一つずつ探していく。構えが一切ぶれず、真剣な表情で探していく。

 その時、後ろから家屋の木材が崩れ落ちる音が轟く。

「何だ?」

「隊長、あれを!」

 二人の眼前には輝く装甲を纏った、マスクを被った人とフクロウがいた。

「女はいないようだが。お前たちか、最新兵器を盗んだのは」

「如何にも。私たちだ。最新兵器を革命軍のような野蛮な連中に握らせておくわけにはいかない」

 ミネルヴァがいつもの威圧的な口調で答える。

「野蛮な連中とは何だ」

 もう一人の兵士が答える。

「旧政府軍の連中か?」

「違う。だがお前たちの敵だ」

「おしゃべりはここまでだ。おとなしく投降しろ。さもないと発砲するぞ」

 もう一人の兵士が怒鳴り声で言う。

 雛はそれを無視して振り返り、その場を離れる。

 二人はすかさず銃を発砲する。

 装甲に命中するも跳ね返り、表面には一切傷がつかない。

「では失礼」

 二人はマスクの男を見失った。

 そして二人は建物を出た。そこにはマスクの男の姿はなく、倒れて気絶している店員と雛の姿しかなかった。

「何があった?」

 雛は大男に起こされ、目を覚ましたふりをする。

「フクロウに襲われて…。マスクの男と一緒に…。路地へと逃げて行きました…」

 ミネルヴァが迫真の演技で答える。

「くそ、もう追いつかないだろう」

 もう一人の兵士が銃を収め、地団駄を踏み歯を食い縛る。

「どうやら本当のようだな」

 大男が言った。

「私は約束を必ず守る男だ。咲くほど言った通り君を革命軍の兵士として雇おう」

「旦那、ありがとうございやす」

 雛は声に合わせて頭を下げた。


新しく登場した元素


硫黄

原子番号16

元素記号 S

発見者 不明。ただし元素として最初に指摘したのはアントワーヌ・ラヴォアジェ

由来 サンスクリット語の「火の元」に由来するラテン語の「硫黄」

性質 黒色火薬の主成分として爆弾や花火、マッチに含まれる。ゴムに弾力性を与えるとして輪ゴムや車のタイヤに入っている。卵が腐ったような匂いで温泉などから噴き出していることで有名な硫化水素は硫黄と水素の化合物。また初めて作られた抗菌剤にはプロトジルと呼ばれる硫黄の化合物が含まれていた。

(捕捉 硫黄は第4話に怪物化して登場していますがカードとして使われたのは今回が初めてなのでここで紹介しました。以降登場する元素もカードとして使用された時にここで紹介するつもりです)


カリウム

原子番号19

元素記号 K

発見者 ハンフリー・デーヴィー

由来 アラビア語の「アルカリ」

性質 火薬は硝酸カリウム(化学式 KNO3)と炭と硫黄の混合物からなる。植物の発育に必要不可欠な三つの元素の一つ(他の二つは窒素とリン)。


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