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人生終わらせ屋、はじめました  作者: 秋桜
【第一章】依頼:宝探し
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梅に鶯、柳に燕――参

「松原つばさくん?」



 最初に尋ねたのは柚里だった。

 つばさと思われる少年の霊は透けた茶色い目で千崎たちを見つめている。つばめと同じ栗色の髪は方々にはねまくり寝癖はそのままだった。体格は痩せこけていて、見た目だけなら悪霊と同じくらいに迫力があった。

「僕は井上柚里。君が松原つばさくんですか?」

 幽霊は人である。礼儀正しく接しなければ機嫌を損ねることもある。故に幽霊に名を尋ねるときはこちらも名乗るのが筋である。

 つばさはゆっくりと頷いた。

「君に聞きたいことがあります。大丈夫、聞くだけです。君から悪しき感じはしないから――ただ妹さんのことについて」

 妹と聞いてつばさの目が一気に開く。

 思わず四人とも肩を上下に動かして驚いてしまった。

 幽霊はデリケートな存在であるが故に細心の注意を払いながら接しなければならない。彼らにとって触れられたくない事柄に触れられた場合は感情が暴走し一気に悪霊化ということもある。

「無理にとは言いません。別につばめちゃんに危害を加えるつもりもありません。僕らはつばめちゃんの力になりたいだけです」

 デリケートな幽霊との交渉に誰に対しても敬語を忘れない柚里はまさに適任だった。気遣いや相手をよく見ながらその場に適した言動ができる。

 つばさは口をぱくぱくと動かした。

 幽霊は声を持たない。受動的な存在である。

 柚里は自分の胸元に手を当てた。

「どうぞ、僕の身体をお使いください。先に言っておきますが――男ですよ」

 一瞬躊躇したつばさだったが、恐る恐る柚里に透けた腕を伸ばす。そのまま吸い込まれるように柚里の身体に消えていった。

 ――憑依。

 柚里と千崎には霊体を憑依させる能力がある。憑依されやすいされにくいというのは個人差の問題だが、柚里と千崎には関係が無い。双方の同意さえ得られれば、どんな相手だろうと憑依が可能になる。

 ちなみに幽霊も柚里を女だと、千崎を男だと勘違いして憑依するものが多く、その多くが憑依後に残念がる。

 完全に自分の中につばさを取り込んだ柚里は一つ深呼吸をした。

 憑依といっても様々だ。憑依された霊体に身体の自由を奪われるパターンが一般的に有名だが、柚里や千崎のように慣れているものは取り込んだだけで乗っ取られはせず、意思の共有を可能にするパターンもある。

「つばめちゃんが宝物を探しています。それは何か、分かりますか?」

 柚里が問う。

〈分からない。つばめとは死んでから一度も、会っていない〉

 柚里の口を使ってつばさが答える。その声は柚里のものより少し低かった。

「そうですか。ところでつばさくんとつばめちゃんは仲が悪いとお聞きしました。もし差し支えなければその原因をお聞かせ願えますか? 話したくなければ話さなくて大丈夫です」

 そう尋ねたのは千崎だった。

 千崎はつばめの「宝物」のヒントがつばさにあると確信していた。依頼の経緯こそおかしかったが、そもそもつばめが時雨荘を訪れたのは依頼のためだったに違いない。その証拠に誰もが裏紙にしてしまっていたであろう「人生終わらせ屋」のチラシを丁寧に四つに折り、持参していたのだ。

 あのチラシを見て宝物探しを依頼したということは少なからずつばさに関わることなのだ。

〈――事故に遭う前日につばめのゲームを壊してしまった〉

 一人っ子の千崎にとっては予想外かつくだらない理由に思えたが、実家に妹がいる柚里は共感したのか頷いていた。

〈つばめは今……どうしてる?〉

「元気に見えるぜ。密のパンツ欲しがるくれぇには女として成長して――だっ」

 千崎の本日三発目が飛んだ。




さてつばさくん。

ゲーム壊されたって結構怒りますよね。抹茶はこの年頃、勝手にゲーム使われただけで妹怒鳴り散らしてましたよ。自分は平然と妹のゲームを使うっていう…そういうもんです、兄や姉というのは。

懐かしい十年くらい昔の話。


感想を書いてくださった方の案をお借りしてサブタイトル変更済み。

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