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人生終わらせ屋、はじめました  作者: 秋桜
【第一章】依頼:宝探し
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梅に鶯、柳に燕――弐

 千崎の従妹で近所に住んでいる静流からの情報によると、松原つばめは兄とは不仲だったという。兄の名前は松原つばさ。事故当時は町内唯一の中学に通っていた。生きていれば町内唯一の高校に通う一年生。

「……どういうことかな、千崎くん、密くん」

 柚里が額に青筋を浮かべながら右手に持った扇子を左手に打ちつける。

「生きていりゃ、俺たちと同じ学年。町内唯一の中学出身ってことは千崎くんたちの同級生っつーこったなぁ。普通忘れるか? 事故で同級が亡くなった事件」

 まったくその通りで千崎も密も反論できない。

 柚里と和泉は高校入学の時に町にやってきたため、中学のことは知らない。一方、千崎はこの町で生まれ、密は中学からこの町にやってきた。

「松原つばさ……密、覚えてるか?」

 千崎の問いに密は静かに首を横に振った。

 顔はもちろんどういった人物だったか思い出そうとするたびに記憶の闇が深まっているような気がした。

「松原つばさ? 誰それ」

 仕方なく中学からの同級生に聞いてみるが誰一人として有益な情報を持っていなかった。

 どうやら影が薄いレベルの話ではない。もはや存在していたのか甚だ疑問である。

 上級生にまで範囲を広げてみたが、結局学校にいる間の聞き込み調査が丸々無駄になってしまった。

 交通事故死という情報だが隣町のどこで事故に遭い死んだのか。場所さえ分かればいまだその周囲を彷徨っているかもしれない。彷徨っていれば話を聞ける。

「……なんで俺らこんな必死になってんだ? 金も払わねぇガキの頼みごとなんかに。密のパンツやればことは丸く収ま――」

 言い終わる前に千崎が和泉の頭をカバンで殴る。

「収まりませんよ。密くんのパンツと少女の純情を汚してはいけません」

「密のパンツって綺麗か? パンツだぞパン――」

 千崎の二発目がヒットする。よく見れば密が和泉の足を踏みつけていた。

「それにしても困りましたねぇ。手がかりはつばさくんだけだというのに」

 柚里がお手上げと両手を上げて見せた。

「久しぶりに行ってみるか?」

 千崎が密にそう尋ねると、密はあからさまに嫌そうな顔をした。

 密はあまり良い思い出がない中学が嫌いなのだ。




 さすがに当時の担任は覚えていた。むしろ存在すらも忘れきっていた生徒たちとは対照的に、教師にとっては忘れられない生徒だったようだ。

 松原家の父親はつばさが十歳のときに事故死。当時は母とつばさとつばめの三人暮らし。つばさは中学入学当初より不登校で結局亡くなる中学二年の秋まで登校したのは入学式の日のみ。友達は文字通りいなかった。同級生が彼を覚えていないのも無理はない。しかしそんな生徒だからこそ先生にとっては誰よりも心配な生徒だった。

 つばさはある日、何を思ってか数年ぶりに外に出て、交通事故に遭った。そのまま帰らぬ人となり、二年が経つ。

 今更つばさのことを思い出す生徒たちに先生は首を傾げつつも、惜しみなく出来る限りの情報を話してくれた。

 つばさが事故にあったのは隣町の百貨店の前の大通り。

 千崎たちはその足で現場へ向かうことにした。

 田舎町にしては比較的交通量の多い通りで昼間は人気が絶えない。百貨店には絶えず車が出入りしているが音付きの歩道信号もあり、見通しも悪くない。事故が頻発するような場所には見えなかった。

 千崎にとっては懐かしい場所でもある。

 以前、いくつだったか知れないが幼い頃に両親によく連れてきてもらっていた。

 田んぼと山しかないような田舎では子供にとっては百貨店は遊園地並みに心が踊る場所だった。おもちゃやお菓子も買ってもらえて、家族でレストランで食事をする。今は叶わない過去の幸せ。

「千崎」

 密に呼び止められて、千崎は現実に引き戻される。

 大通りの交差点に青信号になっても動かない人影があった。

 それは遠目で見ても人間でないことは一目瞭然だった。全体的に透けており、顔は青白く、目は虚ろな様子で交差点を渡る人々をじっと見つめている。それは異様だった。しかし誰一人として彼に目もくれない。

 千崎たちは歩行者が渡りきって人気がなくなるのを見計らって彼に近づいた。

 自分を真っ先に見つめやってくる千崎たちに驚いたのか、彼の虚ろな眼が少しだけ大きくなる。




「松原つばさくん?」




さて兄貴発見の回。

同級生が忘れてるのに何故か年下で他人の静流ちゃんが情報を握っているという。彼女は何者なんだろうか……書いていて、なんでこいつ知ってるんだっけと抹茶も疑問に思いました笑

何でかは後ほど。たいした理由はありませんが。


感想を書いてくださった方の意見をお借りしてサブタイトル変更済み。

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