魔術学校入学試験
世の中、あんがいすんなりと物事が進むこともあるらしい。
私が魔術師になるといった瞬間、両親はどこで誰に聞いたのかは不明だが、私が魔術を使ったという話を聞いていたらしい。だからなのか、私が魔術師になるんじゃないかとなんとなく予想をしていたらしいのだ。
そのため、本当に魔術師になる覚悟があるのかと問われた際、真っ直ぐに両親の目を見て頷くとすぐに了承してくれた。
そして、私が少し心配していた店のパン屋のことだが、なんと手伝ってくれる…というより、うちで修行してパン職人になりたいとか言う奴が現れたらしい。しかも、その人物はなんとアムル。
アムルはどうやらパン屋という職業に憧れをもっていたらしく、たまたま私の両親に会って頼んだらしい。
そんなこんなで、何も問題もなく魔術師になれると思った、のだが。
一つだけ、問題があった。いや問題というほど大きなものではないかもしれないが…。
魔術師になるには、魔術師になるための学校に行かなければ行けないらしい。
しかもその魔術学校に行くには、試験を受けなければいけないらしい。
その試験内容というのは、筆記と実技の二つ。才能ありと少しでも見込まれたら合格らしい。
実技の方は調べてみたがあまり問題はなかった。というか、良い成績で合格する自信がある。これでも結構な年を生きているのだから!
だが問題は筆記の方だ。
どんな問題が出るのかと調べてみたら、さすが数百年経っているだけあって私の分からない用語ばかりでてた。魔術の研究が進んだからなのか、まったく知らないことやら知っていることに何か名前がついてたりとか、様々だ。
仕方がなしに、私は二回目の人生初の勉強を始めた。
それで、あっという間に数年。
ごたごたが色々あって試験を受けるのに数年もかかってしまったが、私の年齢は十五。どうやら、試験を受ける年齢は決まってないようなので様々な年の人がいるらしいので、私の年齢は比較的若い方になるのだろう。
と、試験会場にいながら思った。
「…ふう…」
最初のテスト、筆記試験が終わり私はテスト用紙を裏返してペンを置いた。
覚悟してただけあって、そこそこ難しかった。ほとんどが暗記もののため、思い出すのに苦労したよ…。
私は息を吐きながら、カンニング…とかいうのをしているように見られないように、周りを見渡した。
数は数百人といったところだ。この国で唯一の魔術学校らしいので、国中から魔術師になろうとしている者が集まっているのだろう。十代の子はそこそこといるといったかんじだ。
周りを見るのに飽きて天井を見上げていると、ピーっという笛の音が聞こえた。試験終了の合図だ。
試験管がそのままにして会場を出て行くように告げると、ぞろぞろと会場の入り口へと向かう。
「ようやく終わったか…」
その波にのりながら歩いていると、ふと少し離れた隣からそんな声が聞こえた。ホッとしているようでもなく、ただ退屈な時間がようやく終わったかと言うようなものだった。
なんとなく気になって声の方を見ると、そこには一人の青年がいた。
私と同じくらいだろうか。結構カッコイイ。だから彼の周りの女子が頬を染めているのかと思わず納得した。
金色の髪に深緑色の瞳。どこか気品がありまるで王族のようだ。
…?なんか、彼に見覚えがあるような気がする…。まあ、私は他の人の比べものにならないほどの記憶があるのだから、そういう人がいても仕方がないよね。でも、どこで見たんだろ…あるいは、似てる人を見たのかな…?
首を傾げているといつの間にか外に出たらしい。春らしく強すぎず弱すぎない太陽の光を浴びて、私は思わず少し肩をまわした。
次は実技だ。聞いた情報によると、この試験において最も重要なものでこれによって合格かどうかは決まるといわれてるほどらしい。
だったら最初からこれだけをやれよと言いたいが、そこは我慢だ…仕方がない。うん。
余談だけど、筆記試験は午前中、実技試験は午後を使って行われ、明日にはもう合格かどうか発表されるといったものだ。
『今からくじを引いてもらい、引いた紙に書かれている番号のもの同士チームを組んでもらう』
試験管の言葉に、周りが少しざわざわと騒ぎだす。
だけどそれでも、試験管の声はよく聞こえた。そういう魔術でも使っているのだろうか。よくよく注意をしてみれば、魔術の気配がする。
『そして、そのチームのメンバーで協力して我々が魔術で作った迷路を脱出してもらう。もちろんトラップなどもあるので、それは諸君らが知恵と少しの魔術を使って潜り抜けてもらう』
トラップ…危険なものは、ないんだよね…?
少し不安に思っていると、係りの人がくじ箱を私に差し出してきた。もう引くらしい。
私は箱の中に手を突っ込んで最初に掴んだ紙を引っ張る。すると、係りの人は次の人の元へと行く。
紙を広げると、百二十番と書かれていた。
…そういえば、どうやって同じ番号の人同士集まるんだろうう。さすがにこの人数じゃあ苦労するよね…。
『制限時間は二時間だ。落ち着いて、焦らずにゆっくりとしていればいい』
周りも私と同じことを思ったのか、困惑の声をあげてたりする。既に○○番の人ーとか言ってる人も何人かいた。
『ちなみに、その紙には魔術がかかっている。発動、と言ってみれば我々が用意したステージへと移動でき、そしてチームメンバーとも会える。準備ができたものから発動と言ってみろ』
「…発動?」
前世では見ることがなかった魔術に驚きながらも唱えると、ぐにゃりと周りが風景を変える。
次の瞬間には、私は真っ白な壁に赤と金の豪華な絨毯が敷かれた場所にいた。
…魔術は発達したんだな…。
老人のようなことを思っていると、人の気配を感じ取り振り向く。
そこには、二人の青年がいた。
一人は、さっき隣にいた金色の髪の青年だ。私と目が合うと、軽く会釈をしてくれたので私も慌てて返す。
もう一人の人は、チョコレート色の髪が所々ハネていえ、どこかミステリアスなのを感じさせる紫水晶の瞳の青年だった。私と目を合わせても、無表情のままだ。
「…どうやら僕たちは、同じチームのようだな」
金色の髪の青年がそう言う。
どうやらそのようだ。よくよく見てみると、二人が持っている紙には二人とも百二十番と書かれていた。
「どうやらメンバーもこれだけのようだし、チームということだし自己紹介でもするか?」
「あ、賛成。じゃあ私から。私はリア・アテリア。年は今年で十五」
「じゃあ僕と同じか。僕はヒース・クラインベル。チームなんだから、気軽に名前で呼んでくれて結構」
「私もリアでいいよ~」
私とヒースの自己紹介が終わり、二人の視線が残りの一人へと向かう。
青年は得に緊張した様子もなく、私たちから注目されても平然と涼しい顔、無表情だ。もしかしたら、結構な大物かもしれない…。
「は、はひめまちゅて!」
「…」
「…え」
前言撤回。
ただ単に、感情が顔に出てこないだけの人のようだ。
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