一回目の人生終了?
時々?シリアスでも普段はギャグのラブありの異世界ファンタジーものです。
戦争等のものやバトル等もあります
誤字脱字等をもし見つけましたら、教えていただけると嬉しいです。
アリア王国。
ここら辺ではまあまあ大きい国で、資源やらも豊富で良い国だ。
このまま近隣の小国と仲良くしていけばいいと思うのに、残念ながら現在の国王は他国と仲良くすることがあまりお好きではないらしい。
近隣の小国とやがて戦争を始めた。
とはいっても、すべての近隣の小国と戦争をしたわけではない。いくつかの平和的な小国とは戦わずにして取り込み、アリア王国の一部とした。
それ以外の国とは、戦った。
アリア王国はそこそこ大きく、そして戦争は奇襲に近いようなもので仕掛けたりしてたためか、ほとんどの国が三ヶ月も経たない内に降伏。そしてアリア王国の一部と化した。
ただ、三ヶ月以上。つまり現在も戦っている国もいくつかある。
魔術師。
現在も戦っている国が今も戦っていられるのは、この魔術師たちのおかげだ。
その大きな力を持つ魔術師たちのおかげで、いくつかの小国は抵抗を続けているといっても過言ではない。
しかし、そろそろそれもきつくなってきた。
アリア王国にも魔術師はいることはいたようだが、魔術というものがあまり伝わっていないらしく、本当に一握りくらいしかいなかった。そして国自身も、魔術師というのにあまり価値を見出していなかったらしく、ほとんど戦場に立っていなかった。
しかし今、戦っている小国の軍隊のほとんどに魔術師がいて、さらにその魔術師たちに苦戦を強いられているということで、ようやく価値を分かったらしい。
魔術師たちが、戦場に立ち始めた。
さらに、国は魔術師を次々と育てていっているらしく、かなりの数の魔術師がいる。
しかし急いで育てているためか、腕がまだまだ未熟なものも多かった。それは、敵対している小国にとっては非常にありがたいことだった。
それでもやはり、強い魔術師もたくさんいる。
「…っ…」
そのため、小国はもう崖っぷちといってもいい状態だ。
ほとんどの戦いが負け戦に近い状態になっており、多くの味方が死んでいった。
戦場に行くのは嫌だという訳にもいかず、二度と立ちたくない戦場に立たなければいけなかった。魔術師は特にだ。
「おいリア…大丈夫、か…?」
数人となった仲間の内一人が、声をかけてくれる。
この場に立つほとんどの者が兜をかぶっているので顔が分からなかったが、声だけで同じ隊に配属された人だと分かった。
当初は、私が女なのに魔術師。しかも戦場に立つなんてどこの愚か者だ、というような人だったが、最近では私の実力を見て認め直してくれたのか優しくしてくれた人だ。
「だ、大丈夫です…」
そう返事を返したけど、実際は全然大丈夫ではなかった。
目の前が霞んで、正直立っているのもやっとだ。
早く休みたい。早く、何も考えずに眠りたい。そのためには、目の前の敵を倒さなければいけない。
こちらが数人に対して、向こうも立っている人はいない。負け戦だったのに、ここまで相手を苦戦させられたのならば上等だ。自分で自分を褒めてやりたいくらいだ。
「…魔術式、展開…!」
手を前に出して、倒れないように必死に立ちながら魔術式を編む。
手の先にオレンジ色の魔術陣が現れ、クルクルと回りだす。
私が魔術を発動させようとしたことに気づいたらしい敵が、すかさず水色の魔術陣を出現させる。でも時間的にいえば私の方が早く魔術を完成させることが可能だ。いける!
「くそっ!」
敵の一人が、剣を持ちこちらに向かってくる。
魔術が完成する前に私を倒す気なのだろう。どうやら、魔術師ではなく兵士のようだった。
やばい、このままじゃ殺される。かといって、ここで魔術をやめたら向こうの魔術が完成して倒されてしまう。
「っ!」
さっき私に声をかけてくれた仲間が、護身用にと持たされていた剣で相手の剣を受け止めていた。
その間に私は魔術を完成させて兵士に向けて火の玉を放とうとする、が。
「ぐわあっ!!」
「!!」
仲間が、あっさりと倒れてしまう。
怒りが体を支配し、兵士を思いっきり睨む。
「っ!この…!」
今度こそ火の玉を放とうとする、が。
「発動」
「…え?」
敵でもない。味方でもない。どこからか、そんな言葉が聞こえた。
発動とは、文字通り魔術を発動させる時の呪文だ。
魔術を使っている気配も感じなかった。一体どこから…と思っていると、光の光線が私と兵士の間を通る。
「っ!」
反射的に避ける。攻撃にしては威力が小さくてスピードもなかった。威嚇程度のものだ。
アリア王国の者、つまりは敵かと思い警戒しながら、魔術を使った気配の方を見ると、そこには一人の男がいた。
兜どころか、鎧もなにも着ていない。男が着ていたのは、日常で着るような動きやすさを重視したものだった。民間人…なの?でもさっき魔術を使っていたから魔術師か。でも、一体どこの魔術師…。
アリア王国の者じゃないかと思い、チラリと横目で兵士を見るとものすごく警戒をしていた様子だった。どうやら、アリア王国の者ではなさそうだ。かといって、小国側でもなさそう…。
「…お前、誰だ」
正体不明の人物の登場に誰もが警戒する中、そう男に問いかけたのはさっき水色の魔術陣を出現させた人だった。声からして、どうやら男のようだ。
男は、彼の問いかけを無視して悠々と敵と味方の丁度真ん中を進んでいく。
「…おい!人の質問くらい答えたらどうだ!!」
そう憤怒の声をあげたのは敵の方の魔術師だった。
続けて、違う敵の方の魔術師が「ちょっと」と怒った声で言う。一瞬、女性の声だったので戦場に女性がいることに驚いてしまう。
「…うむ、ここら辺がいいかもな」
男はそう言った。言葉の内容からどうやら質問の答えでも誰かに向けた言葉でもないようだ。
この場にいる全員が、警戒しながら男の言葉に首を傾げるのがなんとなく分かった。なにせ、私もそう思った一人だからだ。
私は男に対して何者だと問いかけようとする。しかし、何か言う前に男は手を天へと突き上げ、そして、
「!?」
「な、なによこれ…」
「…!?」
その場にいた全員が驚きの声をあげた。
無理もない。なにせ頭上には、今まで見たことないほどの大きさの魔術陣が出現したのだから。
この戦場をすべて覆うように、曇天の空の下には虹色の魔術陣。
やがてそれはゆっくりと動き出し、やがて高速に動きだした。
「っ…!」
本能が逃げろと叫ぶ。でも、足がすくんで動かなかった。それは他の者たちも同じのようで、足音一つしなかった。
男が、ニヤリと笑う。魔術陣が完成したのだろうか。
「…発動」
魔術が起動する。
何が起こるのか、その場にいる全員が警戒する。
しかし、それは無駄なことに等しかった。
「!!」
警戒した次の瞬間、太陽を直接見たときよりも明るい光が目の前で溢れる。あまりのまぶしさに目を開けられなくて、思わず目を閉じる。
それと同時に、体が宙に浮かぶ。
だんだんと眠くなってきた。
目を閉じているからなのだろうか。それにしたって、この光で眠くなるのはおかしい。
眠気に抗っていると、体がだんだんと重くなってきた。
一つの戦いが終わったときの疲労感よりも、ずっとひどい体の重みだ。
もう、意識を保ってることさえ難しくなってきた。
眠い。疲れた。
「っ…」
そこで、私は意識を手放した。
、