説明と
「さて、君達は試験を受けて見事合格しこの学園に入学できた。まずは一言。おめでとう」
私達が席につくなり、担任の先生…たしかレフリー先生が教壇に立ち言った。
ちなみに私の席は窓側で、隣にはヒース。その向こうにレフィ。そして私の斜め前にセイン。で、目の前にエリスでエリスの前がユリスだといったかんじだ。
さらにいうと、シセリー先生は前の方の教室のドア付近に立っている。
「中には知っている者もいるかもしれないが、この学園は五年生までに魔術師試験に受かれば卒業する権利が与えられる。まだ一年である君達にも一応魔術師試験を受けられる試験があるが、恐らく受からないだろう。…例外もいるかもしれんが」
そこでチラリと先生はセインを見た。
その当の本人はボーっとしているようで、先生の視線に気づいた様子はない。
「まあ早い時期に魔術師試験に合格しても、そのまま五年生終了まで普通に授業を受けられるがな」
へえ~そうなんだ。てっきりその時点で学園生活終わりかと思っていた…。
「だが、魔術師試験に合格した時点で魔術師と認められ、国から任務を与えられるがな。その場合はそれをこなさなければならない。無論これは自分では無理だと判断した場合は断ることが可能だがな。さて、その任務というのだが、ほとんどが魔物退治だ」
魔物。
言葉だけを耳にしたことがあるくらいで、今だに会ったことはない。…いや、違う。多分あの竜も魔物に分類されるのだろうな。
となると、あれが初の私VS魔物だったってことか…。うーむ…なぜか複雑な気分…。
「魔物退治とは文字通り魔物を討伐する仕事。他にも、要人の護衛などもあるな。まあ要人の護衛を専門としている奴もいるし、ある貴族に付きっきりっていう奴もいたな。まあ護衛にしろ魔物退治にしろ、魔術師に求められるのは高い戦闘能力だ」
まあどっちも戦う系だから、そりゃそうだよね。
でも、魔物相手に戦うか…。命を奪うというのに変わりはないけど、人の命を奪うよりはましだと思う。…魔物も生きているんだけどなぁ…ひどい人だ。私。
「という訳で、この学園は戦闘技術を高めることを目的としているんだ。魔術師になるためには知識だけじゃなく、体力も必要だからな。覚えておけよ。それじゃあ、早速…」
先生はそこで言葉を切り、シセリー先生に目配せする。
え…何?今のやり取り。
キョトンとしていると、シセリー先生が一歩前に出た。そして、綺麗な声を教室中に響かせる。
「では、今から第一戦闘場に移動してもらいます」
ザワッ
その言葉に教室中に動揺の声が走った。
どういうこと?何やらされるの?そういった言葉から読み取れるのは、不安。そりゃ戦闘場に移動ってことになったら、真っ先に思いつくのは戦闘だから、動揺するのも当たり前という訳か…。
…ん、私あんまり動揺してないなぁ…やっぱりこれも前世で何度も死線を潜り抜けてきたからなのかな。
…ヒースたちはどうだろう。動揺してるかな。
ふいに気になってキョロキョロと見回してみると、ヒース、レフィ、セインの三人は平然としている。無理にそう振舞ってるとかそういうのではなく、自然体。本当に自然体だ。
まさか、こうなること予想でもしてたのかな…。
「? どうした?」
「な、なんでもない」
じっと三人を見ているとヒースが急にこっちを見てきたので、慌てて首を横に振る。
び、ビックリしたー…。
そうだ。双子はどうしてるんだろう。
双子の方を見ると、二人で仲良く話している。会話内容は聞こえないけど「やっぱり」だの「噂は真実だったね」って言っているのは聞こえた。
うん、この単語から察するに噂でこういうのがあることを知っていたってことか。
「はい、静かにしてください。戦闘場に行くのは皆さんの予想通り戦闘をしに行くためです。ああでも、実力をはかるためなので、魔術を盛大に失敗させても大丈夫です」
シセリー先生のその言葉に、何人かの生徒が安堵の息を吐いた。
「そもそも、皆さんの中には魔術をある程度扱える者や知識くらいしかなく実戦レベルにはほど遠い者、また魔術はまだまだだが体術がそこそこ扱える者と様々です。つまり、皆さんの実戦レベルがさっぱり分からないのです」
ああ、そっか。ヒースとかセインが魔術をあそこまで使えたってことは、誰かから教わったってことだよね。つまり、他にもそうやって教えてもらって一人前に魔術を操れるような人が他にもいるってことか。
逆に魔術を誰からも教われず、ただ本のみで知識で吸収した者もいるということだから、今このクラスにいる人たちの実力はバラバラってことか。
つまり、今回の戦闘は誰が、どのくらい戦闘能力があるか見るためってことか…。
「戦闘の形式は一対一。くじ引きで決めるからな。ちなみに戦闘場には特別な魔術が施されており、死に値するような傷を負っても三十分程度で回復する上気絶ですむから安心してくれ。まあ、死なないってだけで痛みは普通に感じるがな」
…実質、普通の戦闘と変わらないってこと、か。
それにしても死なない魔術ってすごいなあ。一体どうやったらそんな魔術を使えるのだろう。前世の時もそんな魔術まったく知らなかったし…。
「リア」
「…ヒース?」
考え事をしているといつの間にかヒースが近くにいた。
ヒースだけじゃない。他にもセインやレフィもいる上双子たちもいる。
「どうしたの?」
「どうしたもこうしたも、移動だぞ」
「え、嘘!?」
「嘘じゃ」
「ないよー」
「周りの様子に気づかないって、一体リアちゃんは何を考えてたのかな?」
「夕飯のことか?」
「な訳ないだろうが」
セインの頭を軽くはたいたヒースが、行くぞ、と一言。
そしてさっさと背を向けてスタスタと教室を出て行ってしまう。
私…いや、私達は慌ててその後を追った。
それにしても、戦闘か…。
次回からバトル展開になっていきます