入学式その二
結構間が空いてしまいました。すいません(汗)
爆発音が聞こえ、視界が黒い煙に覆われ、次に聞こえたのは咳する声。
そして、その咳をしている人は咳き込みながら文句を誰かに言います。
「何ゴホッ、爆発させてるんだ!!アホかお前!」
「蝶に気を取られてしまっゲホゲホ!カハッ!」
「蝶に気を取られるってガキかお前!」
この声…この口調…。
私は深々と嘆息して、魔法陣を組む。
「発動」
すぐに完成した魔術によって、黒い煙は消えていく。
そして、黒い煙の向こうには予想通りの人物たち。
「ヒース…セイン…」
「…あ、ヒース、どうやら魔術は成功したらしい。教室だ。リアがいる」
「あ…本当だ」
ヒースが驚いた顔をする。いやいや、驚いた顔したいのはこっちだから。
そして、ようやくショックがなくなってきたらしいシセリー先生が二人に近づく。ちなみに担任の方は今だ呆然としている。
「あ、貴方達一体どこから…」
思いっきり困惑してますね先生。
「移動の魔術を使ってみたんです」
「地図をなくした上に現在地も分からなくなり、セインが移動の魔術を使えるかもだからっていう言葉についつい乗ってしまい…その、すみません…」
「移動の魔術だって…!?」
驚愕の声をあげたのは担任の先生。
えーと、私からしたら移動の魔術なんて便利なものがあったんだねってかんじなため、どこにそんな驚きの要素があったのか全くもって分からないんだけど…。
私の疑問には、いつの間にか近くにいたレフィが、私の考えてることなんてお見通しと言わんばかりに教えてくれた。
「移動の魔術ってのをやって成功した人って、結構少ないんだよ。大抵失敗してさっきみたいな煙撒き散らしたりするだけらしいよ」
「へえ…ってことは、セインって結構すごいことをやったのね…」
竜と戦った時強いなって思ったけど、セインって結構魔術に関して才能があるのかもしれない。
セインの方はそのすごいことをやったという自覚がないのか、いつもの考えてそうで考えてない表情でボーっとしていた。そのすぐ隣のヒースは、私と同じように移動魔術のどこがそんなにすごいことなのか分からないのか怪訝な顔をしてなんてことだあぁ!!って叫んでる先生を見ていた。
「…ところでヒース、セイン。地図をなくしたって何があったの?」
「!」
ヒースの肩がビクリと大げさなほど動く。
…ヒース、まさか…。
ある予感が芽生え、思わず疑いの目をヒースに向けてしまう。すると彼は私の視線から逃げるように視線を彷徨わせた。
そのヒースの横で、セインが淡々とした口調で説明してくれる。
「迷子になって地図を見ようとしたら風で飛んでった。ちなみに、俺の地図もヒースが持ってたから、二人分綺麗に大空へ飛び去って行った」
「…」
いやあ、ヒース、気持ちはなんとなく分かるよ?
あれでしょ?セインが地図を持ってたら絶対どっかやるって思ったんでしょ?だから持っといてあげたんでしょ?分かるよ。私だってその状況になったらセインの地図預かると思うもん。ただ、今回はそれが裏目に出ちゃっただけでしょ?
「わあー」
「地図なくしたんだ」
「「っていうか、ヒース君って結構間抜け?」」
「う、うるさい!今回は…その、ちょっとうっかりしてただけだ!」
「「へえー」」
双子がニヤニヤする。しかも二人そろって「うっかりねー…」って呟いてるし。
「ヒース君結構可愛いところあるんだねえ」
「うざいキモい近寄るな」
「わー。可愛いって言っただけでその反応ってひどくない?」
「男に可愛いって言われても気持ち悪いだけだ!」
「…まあ、一理あるね」
レフィは苦笑して肩をすくめた。レフィってば、ヒースに冷たくされても全然応える様子がないな…もしかして、冷たくされるのをあえて狙ってるとか…?まさかレフィってそういう趣味…!?
「って、リアさーん?なんで俺から距離をとるのかな?」
「いや…別に」
「別にってかんじじゃないよね?ていうかその明らかに引いてます的な目やめて?俺めっちゃ傷ついてんだけど…」
「? レフィはそういうことをされると嬉しい人間じゃないのか?」
「いやいや?そんな変態な趣味ないからね?」
「うわー…」
「レフィ君変態ー」
「だから違うって。っていうかエリスちゃん本気で引いてるでしょ?」
そんな風に話していると、パンパンと手を叩く音が聞こえた。
見るとシセリー先生が手をたたいたらしい。
「おしゃべりはそこらへんにして、そろそろ席につきなさい。ほら先生、いつまでも驚いてない」
「あ、ああ…すまない…」
どうやら、シセリー先生はリーダーシップがあるようです。