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『【サイド】悪役令嬢とお友達になりたい。~エリザベート学園交流録~』  作者: ゆう
悪役令嬢仲間を作りたい

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悪役令嬢コンビ、誕生

サイドストリー 悪役令嬢コンビ、誕生


 エリザベートが“理想の悪役令嬢”として見つけたのは、

武門貴族グラディウス家の娘、セラフィーナだった。


腕を組み、鋭い視線で周囲を睨みつける姿は、誰が見ても「近寄るな」の空気。


だがエリザベートには違って見えた。


(あの威圧感……あの気高さ……

間違いなく理想の悪役令嬢ですわ!!)


その日から、セラフィーナの静かな学園生活は終わった。


「セラフィーナ様! 今日も完璧な冷気ですわね!」

「それ、褒め言葉として受け取るべきなの……?」


「この調子で、生徒会に嫌味を一言お願いしたいですの!」

「嫌味ってどういう頼みよ!?」


二人で歩けば、奇妙な空気が生まれる。


鋭い眼差しのセラフィーナと、上品に微笑むエリザベート。

だが話している内容はというと。


「今日こそ“冷酷な令嬢”として振る舞いますわ!」

「お願いだから通常運転して」


「まずはあの女生徒に“ふふ、愚かですわね”と……」

「それ言ったら普通に問題になるでしょう!?」


しかし事件は、突如として起こった。


放課後の中庭。

一年生の男子生徒が転び、書類をばらまいた。


セラフィーナは舌打ちしつつ近づく。


「まったく、だらしないわね」


(き、きましたわ! 悪役ムーブ!!)


だが彼女はしゃがみ、書類を丁寧に拾い集めて渡した。


「次からは周囲をよく見なさい。……怪我はない?」


男子生徒は涙ぐんだ。


「ありがとうございます……グラディウス様……!」


周囲から感嘆の声が上がる。


「さすがセラフィーナ様……」

「怖そうなのに優しい……」


(ちがう! 今のは普通に良い人!!)


エリザベートは肩を揺らした。


「セラフィーナ様……今のは、善行ですわ……」


「知ってるわよ……! 私だって不本意よ……!」


そこへ運悪く通りかかったアレクシス殿下。


「……また何かやらかしているのか?」


「いえ殿下!

今まさに“理想的な悪役令嬢教育”を行っておりますわ!」


「教育?」


セラフィーナが顔を引きつらせる。


「この方、学園の聖人に“悪役指南”を頼まれているのです……」


「なるほど」


殿下は珍しく微笑んだ。


「セラフィーナ、君には期待している。

エリザベートに“悪いこと”を教えられるのは、君くらいだ」


「私!?!?」


(認められてしまいましたわ……!)


それからというもの。


二人の行く先々で奇妙な噂が流れ始めた。


・黒のツーマンセル

・淑女界の影の支配者

・悪役令嬢連盟(仮称)

・だがなぜか学園の治安が良くなる


「最近、学園が落ち着いてきたわよね」

「エリザベート様とセラフィーナ様のおかげかしら……」


セラフィーナは頭を抱えた。


「……どうして“悪役”を目指しているのに、

平和維持になっているのよ……」


エリザベートは微笑んだ。


「それこそが真の悪役ですわ」


「絶対違うでしょ」


夕暮れの学園で、二人は並んで歩く。


「ねえエリザベート……」

「なんですの?」

「あなた……本気で“悪役令嬢”が好きなのね」


「ええ。とても」


「変な人」


「褒め言葉ですわね」


「違うって言ってるでしょ」


そう言いながらも、

セラフィーナの口元は少し緩んでいた。


こうして学園には、新たな名物が生まれた。


悪役になれない悪役令嬢コンビ。


だが本人たちは今日も真面目に、

“どうすれば嫌われるか”を研究しているのだった。

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