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『【サイド】悪役令嬢とお友達になりたい。~エリザベート学園交流録~』  作者: ゆう
悪役令嬢仲間を作りたい

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エリザベートは学園にいる悪役令嬢とお友達になりたい

本編『悪役令嬢になりたいのに、全部善行扱いされてしまうんですが!?』のサイドストーリー集です。

エリザベートが“悪役令嬢候補”たちと友情を育てる、学園コメディ短編集。

本編の裏側や日常の小話、黒薔薇の会のエピソードなどを収録しています。

エリザベートは学園にいる悪役令嬢とお友達になりたい


 最近、ずっと考えていることがある。


(この学園……悪役令嬢、足りませんわ)


 ここは格式高き王立学園。

 それなりにプライドの高い令嬢も多いはずなのに、なぜか皆やたらと優しく、素直で、協力的で……


(もっとこう……ツンとしていて、意地悪で、高慢で……

 「ふん、庶民が調子に乗らないでちょうだい」

 みたいな方、いらっしゃらないのかしら……)


 そんな“理想の悪役令嬢”を探していたある日。

 私は運命の出会いを果たした。


廊下の向こうで腕を組み、鋭い目つきで佇む令嬢。


「……ふん。くだらないわ」


 女子生徒がぴしっと道を開けて通っていく。


(来ましたわ……!

 あの雰囲気……あの視線……

 間違いなく、悪役令嬢ですわ!!)


 私は胸を高鳴らせ、勇気を出して声をかけた。


「ごきげんよう」


 令嬢はじろりと私を見た。


「……何か用?」


(この冷たい態度……完璧ですわ!!)


「突然すみませんの。

 その……わたくし、あなた様の立ち居振る舞いが、とても素晴らしいと思いまして」


「はぁ?」


 きょとんとされてしまった。


「その……もしよろしければ……

 お友達に、なっていただけませんこと?」


 令嬢の表情が固まる。


「……私と?」


「ええ。

 ぜひ“悪役令嬢仲間”として語り合いたくて」


「……あ、悪役?」


 彼女は何かを察したように頬を引きつらせた。


「もしかして……あなた、例の“聖人エリザベート”……?」


(なぜその呼び名がこの場でも……)


「違いますわ。

 わたくしは、れっきとした悪役令嬢志望ですの」


「どこがよ!!」


 思わず素でツッコまれた。


「あなた、殿下に愛され、ヒロインに崇拝され、学園の希望扱いでしょう!?

 どこをどう見て悪役なのよ!!」


(ええ……通りすがりに真実を突きつけられましたわ……)


「でも違うんですの!!

 わたくしの本心は……悪役として、美しく散ること……!」


「やめなさいその危険思想!」


 令嬢は疲れたように肩を落とした。


「私はただ、少しツンとした性格なだけよ。

 悪役なんかじゃないわ」


「ですが……その威圧感……その視線……

 完璧な“悪役オーラ”ですのに……!」


「それ褒めてる? 馬鹿にしてる?」


(でも……この方となら……

 きっと理想の悪役トークが出来る……!)


「どうかお願いしますわ!

 一緒に“悪役令嬢の心得”を語り合いたいのです!」


「いやよ」


 即答だった。


 しかしその時、通りかかった数名の令嬢たちが声を上げる。


「エリザベート様……この方にもご指導を……?」

「またひとり、救われるのですね……」


「ちがう! そういうのじゃない!!」


 令嬢は本気で慌てている。


「私は救われたい側じゃなくて、

 普通に嫌われたい側なのよ!!」


「奇遇ですわね!

 わたくしもですわ!!」


「奇遇じゃない!!」


 私はぱっと彼女の手を取った。


「わたくしたち、きっと最高の“悪役令嬢コンビ”になれますわ!

 手を組んで、ともに誤解される人生を歩みましょう!」


「歩みたくないわよそんな人生!!」


 結局その日の放課後。

 私たちはなぜか紅茶を飲みながら、悪役談義をしていた。


「ねぇ、悪役ってどうやったら嫌われると思う?」

「わからない人に聞かないでくださいまし」

「あなた毎日やってるじゃない!」

「全部失敗しておりますの……」


 令嬢は深いため息をつきながら呟いた。


「……でも、まあ……

 あなたといると退屈はしないわね」


 私はぱっと顔を明るくした。


「では、お友達ということでよろしいですの?」


「……仕方ないわね。

 悪役講座、開いてあげる」


(やりましたわ!!

 ついに悪役令嬢のお友達ができましたの!!)


 その日の夕焼けは、

 いつもより少しだけ誇らしく見えた。


(でも……この方も、きっとそのうち

 “エリザベート様に救われた”口になるのかしら……)


 私はそんな未来を、ほんの少しだけ想像してしまった。


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