第17話 奪還作戦
俺は作戦本部をヴァスク城に移動させ、斥候からの情報を元にリスク城奪還作戦を練っていた。
「敵は周辺地域を陥落させ、勢力をリスク城に集中させていますね」
「そうだね‥‥‥12万ってところかな?」
「ですね。なので、ラスク城には3万程度の兵士しか残していないでしょう」
今回、動員できる我が軍は7万5000人。
多いように聞こえるが、この軍が全滅すると、グロリアの戦争継続すら危うくなる。
被害は抑えなければならない。
ならば、やはり例の作戦だ。
夜間。
3万の兵を連れて、俺はリスク城へ近づいた。
ネティンとゼダックも同伴している。
「今回の作戦では、敵の防衛戦術を探ります。リスク城の奪還が目的ではありません。できるだけ、慎重に行動してください」
「はっ!」
俺の評判は結構良いらしく、兵の士気が高かった。
数日前の表彰などが関係しているのだろう。
「リスト様、ここは俺が出ましょうか?臨機応変の戦術は得意分野ですが‥‥‥」
ネティンが提案してきた。
確かに、全兵力を俺が動かすのは難しい。
本当は任せたいところだ。
しかし、問題がある。
「それは控えるべきでしょう。今まで敵だった指揮官に、そう簡単に兵たちは従いません」
殺し合ってきた敵が急に仲間になると言っても、信用しようとする者は少ないだろう。
権力で強制的に従わせることならできるが、それは士気向上に繋がらない。
だから、彼らには別の役目がある。
その「信頼」を作ることだ。
「ネティンさんとゼダックさんは、この戦いで活躍し、我が軍との友好を深めてください」
ネティンらの武力数値は決して低くない。
十分な活躍ができるはずだ。
「なるほど‥‥‥分かりました」
ネティンは頷き、剣に手を伸ばした。
「俺がリスト様に忠誠を尽くす家臣だと、証明すればいいのですね」
覚悟の決まった顔だ。
だがここで、少し気がかりな点がある。
俺、そんなこと言った記憶ないんだが?
"兵士たちとの信頼を深めて欲しい"って頼んだのであって、俺に忠実な家臣であることを示して欲しいとは言ってない!
だが、まあ‥‥‥本人のやる気が出たのなら、これで良いだろう。
さて、この突撃作戦に関してだが‥‥‥
基本的には一撃離脱だ。
敵の対応を見て、その防衛戦術の崩し方を後から考える。
12万の大軍なんてとても相手にできないので、相手を分断し、各個撃破に持っていく方針だ。
「全軍突撃!暗いので、足元には注意してくださいーーそして、もし何かあれば、すぐに退却しますよ!」
「うおおおおお!」
兵たちは勢いよくリスク城へ走っていった。
◇◇◇◇
「さて、かなり遠い道だったけど、たどり着いたね」
レイたちは、"中央湖"に面した港町:レバンに来ていた。
"中央湖"とは大陸中央にある超大型の湖で、便利な交通手段だ。
よって多くの国々が、それを貿易路として使用している。
今回、レイたちはレバンからレスク城付近へ向かうつもりだった。
ヴァスク城の戦いと同様、補給路封鎖のためだ。
無論、敵が海路を警戒しないはずがない。
しかし、レイには考えがあった。
「リストによれば、今晩の敵の警戒は薄いらしい。よく分からないけど、信じてみよう!」
弟の言うことを信じよう、というものだ。
もちろん、ふざけるな、と言い出す連中も中にはいた。
「そ、それは本当なのか‥‥‥?どう考えても起こり得ない話だろう!?シニタクナーイ!」
ルフィタがその代表例である。
しかし、彼は震えながらも船に乗り込んだ。
結局、臆病でありながら使命は全うする人物なのだ。
「ルフィタ様が敵を恐れないのなら、我々も恐れる必要はない!行くぞー!」
「おおおおっ!」
不平を言っていた他の兵たちも、ルフィタに釣られて動いた。
「え‥‥‥?そうなの‥‥‥かな?」
謎の勢いに、珍しく置いて行かれたレイであった。