表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/22

第13話 戦力増強

 戦闘中は何も感じずに残酷な策を実行できるが、いざ終わってみると苦しいものだ。

 飢餓状態に追い込まれた敵軍は、どれほど辛かっただろうか。

 

 だが、これは世界を変えるための第一歩でもあった。

 俺はこの大陸を統一し、国民が平和に暮らせる国を作る。

 絶対に、だ。


 リズ王国軍は多くの兵を失った。

 しかし、全員が死んだというわけではない。

 疲労で倒れた者や、俺が行った各個撃破で降伏した者もいる。

 

 彼らは捕虜にする。

 無駄な殺しは必要ない。



「生き残った敵兵を、全員捕虜にする!?」


 ルフィタに意思を伝えると、耳が裂けるほどの大声で驚かれた。


「それだけの捕虜を養う食糧はどこに‥‥‥いや、なくはないが、そんなことをしてどんな意味が‥‥‥?」


 俺を、心配する目で見てくる。

 狂ったかと思われているようだ。


 しかし、俺からしてみれば、戦闘中に狂っているのであって、今こそが平常なのだ。


 そもそもは誰も殺したくない。

 殺戮なんてもってのほかだ。


「相手も同じ人間です。彼らに戦う意思がない以上、殺し合う必要はありません」


 俺はルフィタを凝視した。

 引き下がるつもりは、全くない。


「そこまで言うのなら‥‥‥分かった。俺も確かに殺し合いは嫌いだ‥‥‥シニタクナイカラナ」


 最後の方に本音が漏れているような気がしたが、これで俺の心は伝わった。

 

「では、各地の捕虜をヴァスク城の地下に集めてください。食料を配ろうと思います」


 この時の俺は、自分の行動がとんでもないことに繋がるとなど、思いもしなかった。

 

◇◇◇◇


「う‥‥‥ここは?‥‥‥」


 リズの指揮官:ネティンは見知らぬところで目を覚ました。

 大きな部屋の中に、多数のリズ王国兵がいる。

 

 確かさっきまでは、とめどなく攻撃を仕掛けてくるグロリア王国軍と戦っていたはず。

 それが、なぜ城の中に‥‥‥?


「お、オメェーも起きたか」


 隣にいた、戦友のゼダックに声をかけられた。


「ここは何処なんだ?グロリアの奴らと戦ってたと思うんだが‥‥‥」

「そりゃ、俺にも分からねえ。だけどよ、味方の場所じゃねえと思うぜ。実際、外へと通じそうなあの門は、閉ざされてるしな」


 ゼダックは広い部屋の、一番奥の門を指差した。

 そして、自嘲するかのように続ける。


「俺らは捕虜として囚われてるんだろーな。情報を搾り取られて、殺されるってところだろうぜ。そんな重要なもん、持ってねーのにな‥‥‥ハハッ」


 ゼダックの目は死んでいた。

 この先に希望などない、と思っていたのだ。

 

 ネティンはそんな彼を励まそうとしたが、言葉に詰まった。


 確かに、目の前は地獄なのだ。

 自分も含めて、飢えた兵たちが大量に監禁されている。

 死んでこそいないが、それはさらに苦しみが続くことを意味していた。

 これが地獄でなければ、何を地獄と呼べようか。


 すると、門が開いた。


『え?』


 驚いて、ネティンとゼダックはその方向を見る。

 

 一人の少女と、一人の少年が立っているようだ。

 無論、レイとリストである。

 そして、レイは少女ではない。


「皆さん、今からパンを配給します。ゆっくり、取りに来てください」


 囚われていた兵の一部は、「パン」という言葉に釣られて動いた。


「パンだ‥‥‥パンがあるってよ!」

「はやく、はやく何か食わせてくれえ‥‥‥」


 ぞろぞろと、門の前に人が集まっていく。


 一方で、ゼダックは嘲笑った。


「ハハハッ、情報さえとれば用済みな俺らに、食事を摂らせるだけ無駄だろ。あーやって与えた希望を、次の瞬間に叩き潰すに違いねえよ」


 ネティンも思わず同調してしまった。


「本当に、いい趣味してるよな」


 彼らはベテランの兵士だ。

 戦場とはどういうものか、熟知している。

 

 敵国の兵士に情けをかけることなど、この世界ではありえないのだ。


 だからこそ、次に起こることは予想外だった。

 

「あなたも、これを食べてください。他の皆さんには、既に配り終わりましたから」

「‥‥‥!?」


 さっきの少年が、本当にパンを持って歩いてきたのだ。

 さらに、パン以外にも、温かいスープだったりと、色々なものがあった。


 ゼダックは目を見張った。


「ま、マジかよ!?マジでこれをくれるのか!?」


 ネティンもそれに続く。


「な、なぜ敵兵に貴重な食料を分けてくれるんだ?」


 戦争で、物資はかなり重要だ。

 それを敵兵に渡すなんて‥‥‥!?


 少年は小さく微笑んだ。


「私は、無駄な殺しはいらないと思います。戦いは既に終わりました。もうあなた方は敵ではありません。困っている仲間です。困っている人を助けるのは、普通の行動でしょう?」


 ネティンには到底理解できなかった。

 

 俺は敵なんだぞ?

 助けてなんの意味がある?


 ネティンは訳のわからない偽善を断ろうとしたが、彼の体は正直だった。


 グー、っと、腹が鳴る音がする。

 何日間も食べていないのだから、当然だ。


「じゃ、じゃあ、いただこう‥‥‥」

「はい!」


 ゼダックもしばらくは固まったが、後に ー


「ハ、ハッハッハ!頭のイカれたガキだぜ。でも、ありがとうよ。お前さんの上司には、感謝してるって伝えといてくれ」


 と礼を言って、貰ったパンに齧り付いたのだった。

 

 しかし、ここでもう一つ、彼らにとって驚くべきことが起こった。

 

「命令を出したのは、私ですよ?」

「え?」

「は?」


 もちろん、意味不明である。

 こんな子供が軍を指揮するなど、リズ王国 ー いや、大陸のどの王国でも、ありえない。


「じょ、冗談はよくないぞ‥‥‥?」

「そ、そうだぜ。お前さんの上司に見つかったら、怒られちまうだろ?」


 信じようとはしなかったが、少年 ー リストの言っていることは、紛れのない真実である。


「冗談ではありません。今回の食料配布も、さらに言えば前回の補給路封鎖も、私が命令したものです。ーーだから、ある意味、これは私の自作自演なのかもしれませんね」


 ネティンとゼダックは、目を見開いて仰天するだけだった。


◇◇◇◇


 リズ王国の兵士を捕虜とした翌日。

 思いもしなかったことが起きた。


「あの少年にあわせてくれ!」


 門に前でうるさくする二人組がいて、どうやら俺に会いたいらしいのだ。

 面倒だが、敵意があるわけでもなさそうだったので、興味本位で門を開けた。


 すると、昨日、食料配布を後方で眺めていた二人が姿を現した。

 コイツらが、俺に何を言いたいのだろう?


「別に応じなくてもいいんだよ?」


 兄にはそう言われていたが、いずれ大陸全土の住民が仲間となるんだ。

 ここで交流を断ってどうする。


 そんな思いで、


「どうしましたか?」


 と目的を聞いた。

 すると、彼らは急に跪いた。


『俺らを、部下にしてくれませんか!』

「えっ!?」


 急にどうしたんだ!? ー と驚く暇もなく、二人のうち、背の高い方が早口で喋り出した。


「俺たちは、あなた様のお考えに感動しました!決して有利とは言えない状況でも、敵兵をまるで自分の兵かのように大切にするーーそんな将軍には初めて会いました!

 俺たちは戦争が嫌いです。しかし、あなた様には希望を感じました!

 平和を心の底から願う気持ちが、伝わってきました!だからこそ、協力させてください。あなた様の理想に!」


 長い熱弁だった。

 簡単に言うと、俺の行動が彼らの忠誠心を勝ち取ったらしい。


 しかし、言ってもいないのに、俺が理想の世界を持っていることに気づくとは。

 ただただ偶然かもしれないが、勘が鋭そうだ。


 ステータス ー 人が多いところでは自分が念じることで表示される仕組みらしい ー を確認する。

 そこには、目を疑う光景があった。


【ネティン・アックス】(34歳)

・武力:69

・体力:69

・知力:53

・統率力:73

・政治力:34

・地位:平民


【ゼダック・メルサーツ】(35歳)

・武力:72

・体力:57

・知力:43

・統率力:82

・政治力:22

・地位:平民


 二人とも、統率力が異常に高い!

 ゼダック ー 背の低い方の人に関しては、統率力があのルフィタより高いんだが!?

 武力や体力に関しても、相当上位の方だ!


 これは、俺の方からも是非とも仲間になってもらいたい!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ