第1章 選ばれし者の誕生 1話 予防接種
俺、古呂名 流星にはどうしても理解できない、納得できないことがあった。
それは……予防接種である。まあ、きちんとした理由もあるのだが……高校1年にもなって、少し恥ずかしいが、「・・・痛いし、怖いから」だった。
そんな俺には今日、NEW CORONA の予防接種の予約を母さんに入れられていた。
帰りのHRが終わり、さあ帰ろうとした時だった。少し考え事をしながら廊下歩いていた俺は、ずっと話しかけてきている親友のれいじの声に気づかなかった。
「なあ!りゅうせ〜い」「お〜い!りゅうせ〜い」「もしも〜し」
「…………ハッ!!!!ナニゴト⁉︎」
れいじは少し呆れた表情で「あぁ〜やっと気づいたかぁ!」と、俺に言ってきた。
そしてれいじは俺に告げた。
「・・・・・・りゅうせい、お前は今日、とある能力を得るかもしれない。覚えておけ!!」
この時の俺は、また何かの冗談だと思って、深くは考えず、予防接種のことで頭がいっぱいになっていた。
学校の校門を出た俺は、目の前に路駐している黄色の軽自動車の助手席に乗り込み、そのまま出発した。
今日ワクチンを接種するのに予約した病院は最新の技術を用いた診療をしている大学病院なのだ。
そして時は来てしまった……。
「古呂名さん!処置室へお入りください」
その言葉を聞いてから緊張して手足が震えてきた俺は、俺自身に「大丈夫、大丈夫だ!」と言い聞かせ、覚悟を決めた。
「ちょっとチクッとしますよ〜」
そう、この予防接種こそが世界の運命を変える。
つづく