【SS】人生最後の思い出
時刻は、午前11時32分。
空気は澄み、雲一つない空模様。
個気味の良い炸裂音が球を挟み鳴り続ける。
息は上がり球を追う足は次第に重くなる。
足のグリップを効かせ、腕をしならせラケットに伝える。
衝撃は球へと伝わりまたも個気味の良い炸裂音が響く。
「トゥー・ゲームズ・トゥ・スリー」
球は地面で跳ねる。
「サーブ、くるよ。」
前にいる相棒から声がかかる。
球が上る。
球が太陽と重なる。
ブレる視界。
赤いランプを回しながら走る白い車、きっと救急隊員だろう。
あぁ、僕は倒れたんだとふと感じた。
「試合はどうなったの?」
「そんなことを言っている場合じゃないだろ。心配したんだから。」
「心配してくれたんだね。大丈夫、元気だして。」
「元気を出すのはお前だろ。早く直してまた、学校でな!」
騒がしく病室から去っていく相棒の背。
今日は、大事な試合だったのに。
ふとひとり取り残された病室で、暗く冷たい感情が遅い来る。
頬が濡れる。
3年最後の公式試合、相棒の足を引っ張ってしまった。
その事実が僕を縛り離さない。
「あ、そうだ、医者さんはただの熱中症って・・・お前、泣いてんのか?」
腕で目を、顔を隠す。静かな時間が流れる。
「俺達は、別にここで終わりってわけじゃないだろ。なぁ、泣くなよ。なぁって。」
「ごめんよ、僕が倒れたせいで。ごめん。」声がかすれ、震える。
「俺達は二人で3年やってきた。これで終わりじゃないさ。高校に行っても又一緒にやればイイってだけさ。」
これは、僕と相棒の中学3年最後の思い出の話だった。
友達とふと話してて急にふられた深夜4時に書いた30分くおりてぃです。
読んでくれてありがとうございました。