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「わかってるよ。そういうひっさんこそ、話してない?」


「俺は完璧だもん」


「私に行動を見破られたのに?」


「……」


「お互い、注意しないとね。ねえねえ、ひっさんがここに来てない日も、私、ここに来ていい?」


「別にいいけど」


「やった!じゃあ、明日から何か持ってこようかな」


「来るのはいいけど、勝手に物捨てたりするなよ!あと、絶対に目立つような場所に物置くなよ、あと、犬とかネコも連れてきちゃダメ!」


「はいはい、意外とルールが多いんだね」


「そのぐらいしないとすぐにバレるんだよ」


「はーい、じゃあ、この中なら何してもいいんだね?」


「ちょっとだけだぞ」


「はいはい。大した物は持ってこないから安心して。じゃあ、私帰るね」


 そう告げると、彼女はさっさと入り口から出て行く。


「一之瀬!」


「なに?」


「貸したハンカチ……教室で返すなよ」


「なんで?」


「今まで仲良くしてなかったのに、なんで俺のハンカチを一之瀬が持ってるのかって疑問に思われると、秘密基地がバレるかもしんない」


 その理由は、半分が本気で、半分が嘘だった。


 それなら、ハンカチは教室じゃなくて別の場所で渡せばよかったし、他にも色々とやりようはあったはずだ。


 なんでそんな風に言ったのか。それは、小学生男子のもつ、異性との気恥ずかしさが関与していたからだろう。


 教室で異性に物を渡される。


 限られた空間の中でのそれは、特殊なことだった。それを見られれば、勝手に『告白だ』と言われて、しばらくは冷やかされ続ける。


 そうなるのは避けたい、そう思ったことから出てきた言葉だった。


 だけど、もう一つだけ理由がある。


 彼女とここで確実にまた会う為の口実が欲しかったのだ。


「ハンカチ返す時はここで返してくれ」


 さり気なくそう伝えると、七海は


「うん、わかった」


と言って、微笑んで帰っていった。


 その後ろ姿を見ながら、僕はまた会えることを心の中で喜んだ。




 その後、少しだけ彼女の物が増えて、秘密基地はほんの少し狭くなり、僕たちの間にあった溝も大分狭まった。『一之瀬』と呼ぶのではなくて、彼女のことを『七海』と呼び、彼女があだ名ではなく『久人』と呼び始めて少し経った頃から、僕は胸にある思いが日に日に膨らんでいくのを感じていた。


 どこでそれを伝えていいのかわからなかった。


 完全に好機を逃していた。


 僕らは親しくなりすぎていたのだ。

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