沈黙
結局、パーティーの日は、あのまま帰宅となった。
大貴族ガレスベイル様はその後始末をしなくてはいけなかったから、ナナミを自宅へ帰した。
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さて、あの日、
あの日、パーティーがあった日以来、ナナミは良く大貴族ガレスベイル様と2人で出かける日が多かった。
それもそのはず、ナナミのほうとしても、大貴族ガレスベイル様との縁は有り難いものだったし、命を助けてくれた人。
そして、ガレスベイル様は長身で顔も良く、まさに絵本に出てくる王子様、という感じだからだ。
対してガレスベイル様はと言えば、ナナミの事を大層気に入ったらしいと聞く。
風の噂によると、ナナミのその顔立もさる事ながら、ナナミの運動神経や、熱血感、正義感など様々なところが気に入ったらしい。
、、、ナナミの行動力をプラスに見れる人ならば、ナナミを好きになる事は当たり前の事だった。
だから、2人が逢引するのは至極当然の事だった。
、、、対して僕は。
僕はナナミの護衛だと言うのに、もうほとんどナナミの護衛はしていなかった。
だって、ナナミが出掛けるときは大貴族ガレスベイル様が一緒で、そのガレスベイル様には王国騎士団がしっかりと護衛に就いているのだから、
僕の出る幕など無い。
さて、もう一つ。あのパーティーの日、僕がナナミを目から離した事をナナミは何も叱責して来なかった。
いつもなら直ぐに怒ってくるナナミが何も言って来ない事に、僕は2人の間に距離が出来たのだと
感じていた、、、、。
そんな日が続いた、、、
ある日。
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ぶん!!ぶん!!!ぶん!!!!
老師「、、、、、、、、。」
ぶん!!!ぶん!!!!ぶん!!!!
老師「どうした、リオウ、剣が荒れているぞ」
老師と共にいつもの鍛錬をしている最中、老師は僕の剣さばきを見てそうため息をついた。
僕「別に、、、、普通、、、、ですよ!!!!!」
ぶん!!!!!!!!!
僕は今日一番の力強さで剣を振ってから
剣を地面に刺した。
老師「気持ちは分かるがの、、、」
老師は何かを察して僕を慰めてくれる。
一体、何を察したのかは知らないが
僕「別に落ち込んでなんかいませんよ!良い事尽くめじゃないですか!」
と、僕は先走って老師の呟きに反論する
僕「ナナミはカッコいい彼氏が出来て、ナナミの家の人は超一流の貴族様と縁ができて!」
僕「ガレスベイル様は可愛い女の子と楽しく時を過ごして!」
僕「僕はトラブルに巻き込まれる心配が無くなって安心して鍛錬出来て!」
僕「良い事尽くめじゃないですか!!」
僕「僕の何処が落ち込んでるんですか!!」
と、僕はまくし立てる。
大声を出してはあ、はあ、はあ、と肩で息をしている僕
を見て老師は
老師「お主は分かりやすいのう、、、」
と、そんな、
前にも誰かに言われたような事を呟いた、、、。
ふん!
呼吸を整えた僕は剣の稽古を再開させる。
ぶん!
ぶん!
ぶん!!
と、そこへ
「ふふ、荒れてるね〜」
という声がした。
?
見ると、そこには、
ナナミが、立っていた、、、
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ナナミ「ふふ、荒れてるね〜」
ナナミは笑顔で歩いてくる。
僕「、、、、、、、」
僕は、思考が止まってしまっていた、、、。
なんだか、とても久しぶりな、、気分だった、、、。
なんだか、とても久しぶりにナナミの声を聞いた気がする、、、。
僕が惚けていると、老師は
「おっと、そういえばヤカンに火を掛けっぱなしだったかな、、、」
と、そんな事を言って、そそくさとその場から離れて行った。
僕「、、、、、、、。」
困った。
急に、ナナミの声を聞いて、そして、気がついたら何故か2人きりになっていた。
僕「、、、、、、、、。」
僕は、きっと、顔が真っ赤になっていた事だろう。
どくん、、、どくん、、、と
心臓の音が大きく聞こえている。
僕はそのまま黙り込んでしまって
ナナミは空の色を見るように後ろに手を組んでぶらぶらとこちらに歩いてくる。
ナナミ「どうしたの?何かあったの?」
と、先程の、剣が荒れてるね、の続きを僕に聞いてくる。
僕はそれが嬉しくて、恥ずかしくて、照れ臭くて、ナナミの顔は見れなくて
あさっての方を向いて
僕「べ、、べ、別に、普通さ!何も変わらない!」
と、強がりを言っていた。
ナナミはじっと下の方から僕の顔を見て
ナナミ「ふーーん、そうなんだ」
と、全く信じて無さそうな返事を呟く。
僕「、、、、、、、、、、」
ナナミ「、、、、、、、、、、」
僕は何もそれ以上の言葉が出てこなかった。
ナナミ「、、、、、、、、、」
ナナミも何も言って来ない。
僕「、、、、、、、、、、」
、、、、、、、、、、。
2人の間に、沈黙が続く、、、、
き、気まずい、、、、
気まずいけれど、、、
どくん、、、どくん、、、どくん、、、
という心臓の高鳴りが何故か心地良かった、、、
どくん、、、どくん、、、どくん、、
どくん、、、どくん、、、どくん、、
どくん、、、どくん、、、どくん、、
僕は「あ、あの」ナナミ「あのさ」
と、沈黙を破ろうとして、2人で同時に話しかけ、、、、
また、
お互いに黙ってしまう、、、、
僕「、、、、、、、、、、」
ナナミ「、、、、、、、、、、」
また、
更に沈黙が続く。
僕「、、、、、、、、、」
ナナミ「、、、、、、、、、、」
永遠に続くかと思われたその沈黙は
ある声によって破られる。
×××「失礼、ちょっといいかな?」
?
僕とナナミは同時に声の方へ振り向く
と、、そこには
あの凛々しい、女性騎士の姿が
あった。