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リオウとナナミの物語 前編  作者: ふるたく
日常の姿
4/11

昔のように


さて、その日の夜は、昼間の喧騒と打って変わって静かなものだった。


この村はとても平和だったし、別段昼間の事も誰にも話さなかったから、村の人やナナミの家の人はただ単に僕らが街に買い物しに行った、としか思っていないだろう。


ナナミの親は、"ナナミがどんな服を買ったのか"に、興味を示したくらいで、それ以上何も聞いて来なかった。


僕や老師は、と言えば、ナナミと出かけるときというものは、ああいうトラブルに巻き込まれるのはしょっ中だったので


昼間の事は当たり前の日常の範囲を越えていなかった。


つまりは日常。


いつもと変わらぬいつもの風景。



そして僕はいつものように、夜の村の見回りをしている。


いつものコース、いつもの時間、何も異常は無い。


静かな村。おかしなところは何も無い。



帰ろう。


そう思ったその時、


ポーン、と


頭に何かが、ぶつかった。


??


地面に転がったものを見ると


(どんぐり?)


僕がどんぐりを拾おうとした時、また


ポーン、とどんぐりが落ちてきた。


なんだ?


僕はそう思って、どんぐりの飛んできた方、


木の上を、見る



と、



そこには、木の上で佇むナナミが居た。



--------------------------------------------------------


ナナミ「なんだか眠れなくてね」


ナナミは僕の前方をぶらぶら歩き、僕に聞こえるくらいの小声で呟く。


空を見れば満月で、辺りを仄かに照らしていた。


僕がナナミの次の言葉を待っていると


「なんだか、ドレス買ったら急に現実見ちゃってね」


と、不安を吐露し始めた。


ナナミ「私、18歳になったから」


ナナミ「次のパーティーから、色んな貴族の男の人に声をかけられると思うんだ」


僕は黙って聞いている、、、


ナナミ「パーティーってそういう場だからね」


ナナミ「だから、私、結構早く結婚するのかなって」


ナナミは振り返り、こちらをチラリとと見る


そして


ナナミ「この村から出て行くのかなって、」


ナナミ「そう思ったら、なんか、」


ナナミ「寝れなくなっちゃって、、、」


ナナミは下を向いて呟くように話している。


僕は、その吐露を黙って、聞いていた。




だって。



だって。


僕には何も出来ないと、分かっていたから。


もう、考えて考えて考えて、考え抜いて、



僕の出来る事は、ただ、出来るだけナナミのそばにいよう、とそれだけ



それだけしか出来ないと思っていたから。



そう、結論付けたの、だから、、、

--------------------------------------------------------


ナナミは村の外れはある池に石を投げている。


ピョンピョンピョン、と、石が水面を跳ねるように水平に投げる。


子供の頃、2人で何回跳ねられるか、競争した時のように、、、、。



ナナミ「あ」


と、ナナミが思いついたように、


ナナミ「でも、もしパーティーで私、誰からも声かけられなかったら、私逆に結婚出来ないのかな?」


ナナミ「ね?」


ナナミ「そういう可能性もあるよね」


ナナミは目を輝かせて笑顔で言う


ナナミ「それとか、こんなじゃじゃ馬は嫌だーーーって言って」


ナナミ「私と見合いした人みんなが婚約破棄とかしたりして」


ナナミ「そういう可能性もあるか。」


と、少し困った顔。



ナナミ「そうしたら、私は結婚出来ず、ずっとここで暮らすのかな、、、」


ナナミ「この村で、、、」


ナナミ「1人寂しくおばあさんになるの」


ナナミ「うーーーん、、、」


腕を組み、悩む


ナナミ「でも、結婚出来ないのは、嫌だな」

ナナミ「1人寂しいのは嫌だなー。結婚は誰かとしたいなー」


と、僕の方をチラッと見て


ナナミ「もし、」


ナナミ「もし、私が誰にも声かけられなかったら」


ナナミ「もし、私が誰とも結婚出来なかったら」


ナナミ「リオウ、私と結婚する???」



リオウ「えっ、、」


ナナミのその意地悪したときのように戯けた態度で


僕は顔が赤くなってしまっていた。



何かの、反応を見る、ような、、、



ナナミ「はははははは」


ナナミ「嘘よ!冗談!」


ナナミ「私が誰からも声かけられない何てコト無いでしょう?」


ナナミ「ふふふ、冗談」


ナナミ「びっくりした?」


ナナミは笑っている。無理、している、、、?


ナナミ「ふふ」


と、さっきのテンションが下がったように


ナナミ「あーあ。」


と天を仰いで、


ナナミ「何だか、話したら眠くなってきちゃった」


と、呟いた。


ナナミは片足をふらふらさせて


ナナミ「帰ろ?」


と。こちらを向く。


そして、ピョン、とこちらに跳ねて


(そして僕の目を下から覗き込むように)


ナナミは僕の手を取って


ナナミ「可愛い弟君は夜道が怖いから1人じゃ歩けないんだよね」


と言って僕の手を引っ張って歩き出す。


僕「あっ」


僕は突然手を引っ張られてバランスが崩れてしまう。


ナナミ「仕方ないからお姉ちゃんが手を繋いで一緒に帰ってあげましょう」



と、

ナナミは僕の慌て具合は全く気にした様子。


僕「、、、、、、、、、、」


僕はナナミのなされるがまま。


後をついてゆく。


2人で、夜道を歩く。



子供の頃のように。


怖がりの僕を元気付けてくれた昔のナナミのように。


あの頃と、同じように、、、



(ずっと、そうしていたい。)


(ずっと子供でいたい。)



きっと、



2人とも同じ事を思っていたと思う。



、、、、。



、、、、、。



でも、それは叶わない願いだ。


時は過ぎて行く。


子供のままではいられない。


ナナミは貴族で僕は平民だ。


その道はこの先、交わる事は決して無いだろう。


この先、ずっと、永遠に、、、



でも、だからこそ、今一緒に居られる奇跡を僕は


僕とナナミは噛み締めておこうと思った。


だから僕もナナミの手を握り返して、


歩いた。


ナナミ「、、、、、、、、、」


僕「、、、、、、、、、」


2人、会話は無かったけれど、幸せな気分だった。


その幸せな気分が少しでも長く続くよう、


2人は、少しだけ遠回りして、帰ったんだ、、、、、

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