秋色プレゼント
季節は秋から冬へと変わろうとしている中、私達姉妹はショッピングモールに、姉の誕生日プレゼントを選ぶ為に来ていた。この年になると恥ずかしくて、本当は一人で選んで隠しておきたいのだが、何故か姉に隠し事は通用しないし、過去に黙って選んだ時に悲しまれた事があるので、誕生日が近付いてくると毎年二人で見にくることにしている。おかしな話だと今でも思う。
「で、今年は何がいいの?」
毎回の事にちょっと不満を感じながら姉に尋ねてみた。それは多分予想できる受け答えから来るもので、
「んー、まーちゃんが選ぶならなんでもいいかな……」
真菜だからまーちゃん。と姉は私の事をそう呼ぶ。
「それじゃあ意味ないって毎回言ってるじゃん」
「えーでも」
「でもじゃない!」
他がどうかはわからないが、何でもいいと言われて、嬉しいと感じるのは最初の方だけだろう。プレゼントだと特に。
「ご、ごめん。えっと、じゃあ……」と指差したのは
「マフラー?」
姉が選んだのは、深い青色のマフラーだった。
「うん、これから寒くなるし」
「もう持ってなかったっけ?」
「持っているけど、これがいいなって」
「そうなんだ。じゃあ、買ってくるから姉さんはここで待ってて」
「はーい」
プレゼント包装を済まし、姉が待っている辺りまで戻ると、そこには姿はなく、探しに行こうかと思っていたら、少し小走りで向かってくるのが見えた。
「待っててって言ったのに」
「ごめん。ちょっと気になったものがあって」
「戻ったらいないからどこに行ったのかと思ったよ。それが気になったもの?」
「うん」
「何買ったの?」
「実はこれまーちゃんに似合うと思って買ってみたのだけど……」
「えぇ、なんで?私に?姉さんの誕生日プレゼントを買いに来たのに?」
いろいろと言いたい事があったが、どうしても先に不思議だという思いがあった。
「うん。まーちゃんとお揃いだと嬉しいなって。色違いのマフラーを買っちゃった」
「えっ……」思ってもみなかった理由に、不意打ちすぎて一瞬固まってしまった。
「えっと、嫌だった?」
不安そうに見つめてくる姉に
「嫌な訳ないし!っていうか色は?」と照れ隠しを含んだ返答しか出来なかった。
「赤にしたよ。まーちゃんは絶対似合うと思う」
少し歯痒さを感じたが、ニコニコしながら隣を歩く姉を見ると、まぁ悪くないかなと思えてきた。
絵・猫の下僕