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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
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作者: ハル

悲しいことがあった次の日でも、君は笑ってるんだ。そんな奴って分かっていたけど、

バイトの面接に落ちた。

大学からの距離も、時給も、ピッタリだったのに。

週一で通ってる店だったから今後行きづらくなるじゃないか。ってか、勝手に常連だと思っていたし。

俺のこと知ってるって思ったのに。

悔しい。

悲しいってより悔しい。男だから涙なんかこんな事で流さないけれど、自分の外殻が脆く剥がれ落ちそうな気がする。自分の知ってる俺と、あの店長から見た俺には違いがあった。俺の見ていた俺の姿は偽物だったんだ。


あー、今日は誰とも会いたくねぇ。特にアイツとか。


「今日のメシどこ食い行く?いつもんとこ?」

本人曰く軽くぶつかっているつもりらしいが、俺にとってはタックル並みのスキンシップを取ってくる男がやってきた。会いたくないアイツだ。


「あ、今日は用事があるから、パス。」

って言うか今さっき連絡受けたばかりで行けるわけない。いつもんとこってのはつまり俺の希望していたバイト先のことだ。


「えー、珍しいの。あああ、そういえばあの店バイト募集してたじゃん?んで俺さいよーしてくれって面接行ったんだけど落とされてやんの。アハハハ。」


え、初耳なんだけど。ってかコイツも受けたのか?そして落ちたのか?

なのになんで笑うんだよ。

落とされたんだぞ。お前は要らないって言われたんだぞ。笑えるわけないじゃん。なんで、


「まぁ、落ちちゃったもんは仕方ないよな。まかない目当てって言うのもあったのになー。」

「なんで、落ちたのに笑ってんの?」

「んーまあ、食べ物屋はあそこだけじゃないし?たまたま相性が悪かったんだろ。次行こうぜ!」

「自分を否定されたって思わないのか?」

「世の中のたった一人の人間、というかあんま話したことない相手に否定されたって、構わなくね?それにちゃんとふさいよーの理由聞いて納得したし。」


否定されても気にしないか。

コイツは強いなぁ。喧しくても、ウザくても、タックル痛くても、漢字分かんない阿呆だけど、たまーに、ほんのたまーにだけど、器でけぇって感心させられる。


「で、不採用の理由って何?」

俺も落ちたなんて言ってもしょうがないからそのことは黙っとく。

「女の子が欲しかったんだってー。ホール担当用の制服が女子分しか空いてないってー。流石に性別は越えられねぇ。」

ガックリきた。

今時そんな理由で落とす店もどうかと思うが、そっか。俺が否定されたわけじゃなかったんだ。店側の都合だったんだ。

さっきまでふてくされていた気持ちがすっと消えてしまった。


「なに?なんで笑ってんだよ。めずらしー。」

「お前の阿呆っぷりに呆れてんだよ。」

「なー、メシ。腹へったよ。用事済んでからで良いから一緒に行こうぜ。」

「いいよ、用事もう無くなったから行こう。」

マジ?やったー。と嬉しそうな声を上げて先を歩いていく。


あんな小さな背中なのにたまにでっけぇなって思うのは、尊敬なのか、羨望なのか、はたまた。


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