第九話 理由は簡単
過保護すぎただろうか。
亘のことを考えながら、そう思った。
あのこの中にも暴力性のようなものがあったのだなと少し驚いた。
聞いたところによると、先に声をかけたのはこの娘の方からだったようだし、亘に乱暴されたというのは過剰反応のような気もするのだが。
「やめておきます」
弟が謝罪をしたいと言っているので、もう一度会ってもらえないかと願い出たところ、彼女の返事がそれだった。
「でも、それじゃあ・・・」
「弟さんが豹変したとき、最初はすごく混乱したんですけど、後から考えると、彼の、押し殺していた感情が爆発したのかなと思って・・・」
それを聞くと、亘が小さい頃両親から理不尽なことで怒られたときなどにひとりで静かに腹を立てていたことを思い出した。
「あの日あの子に何か耐えられないことでもあったのかもしれない・・・」
心が乱れる何かが・・・。
「バチが当たったのかもしれないです」
私が不思議そうな顔をすると、彼女はあの日弟さんより優位に立とうとしていたのだと言った。
「隠しきれなかったのかな」
「でもあのこは恋愛経験がないし、リードしてくれる人が向いてると思ってたんだけどな」
彼女はうーんと言って、自分が弟さんのことを見くびっていたことが会話をしている時点でわかってしまったのだと思うと言った。
「ごめんなさい」
逆に謝られてしまい、私は何も言えなくなってしまった。
「競争相手が多いほど俺は燃えるんだよ~」
錦が何を言っているのかは予想がついた。
「俺だったら好きな子に相手がいたら、それだけで関心が薄れるけどな」
錦は目をきつく閉じると、花粉症なのか鼻を強くすすった。
「それがな~、俺には抗うことができないんだよ。ゆうかへの想いに」
錦の揺るがない想いに、自分にも彼のようにチャンスに貪欲なときがあっただろうかと考えた。
「ふーん、そんなもんかね」
「亘くんは真面目だから、論外!って言われると思ったぞ」
僕はよくわからないけれど、錦のように抑えきれない気持ちになることもあるのではないかと言った。
「おまえはやり方を間違ったのかもな」
「うーん、あのときは何か見えない力に取りつかれたというか、あの子とそういうことがしたかったのかはわからない」
すると錦は歯止めがきかなかったのならば僕がそれを望んでいたのだろうと言った。
「許すよ」
錦に目をやると眠気をこらえているのか、細い目をしている。
「何が?」
「亘は不器用だけど、悪い子じゃないから、彼女きっとわかってくれると思うぞ」
彼女に再び会えたのは、それからしばらくたってからのことだった。
周りの人たちに助けられています♪




