第八話 It's tiresome
「なんでそうなったの?」
亘にネックレスをつけてもらいながら私はそう尋ねた。
人の人生に関わるのは面倒だけれど、弟は別だ。
「・・・・・・」
「二度と逢うこともないと思ったから?」
私の背後で黙ってしまった弟の様子を鏡越しに見つめながら、遠い昔の記憶を思い出した。
亘は小さい頃から答えたくないことをきかれると言葉を切ってしまう子だった。
あの娘が悲痛な顔をして弟のしたことを私に訴えてきたとき、まるで弟が一方的に悪いかのように話をしたのだが、そうとは限らないのではないかと思った。
「質問に答えられない?」
「・・・・・・」
「したい気分だったの?」
「たしかめたかっただけかも・・・」
亘はうなだれた様子でぼそりと言った。
「自分の非は認めるけど・・・」
「やっていいことと悪いことの境界線はわかるわよね?」
ベッドに腰をかけた亘にスルドイ視線を送りながらそう言うと、考え込むような表情をしていた弟はやりすぎだったし、怖い思いをさせてしまったと反省した。
「化けの皮が剝がれたって感じ?」
僕の衝動的行動を告白すると、愛川は愉快そうにそう言った。
「お前はもう終わったな」
「・・・。僕もそう思う」
店内が少し混み合ってきたので僕は背筋を伸ばした。
「後始末はちゃんとしといた方がいいぞ」
そう言うと愛川は僕の尻ポケットの辺りを強く叩いてから注文を取りに行ってしまった。
「イーズィー・ゴーイング!ワタル気楽にね!」
帳さんが僕の肩を揉んでから厨房に戻っていった。
よほど悩んでいるようにでも見えたのだろうか・・・。
自覚がなかったとはいえ、あの娘に謝罪するのが礼儀だよなと思った。
家にいるときはあの娘のことが頭から片時も離れないのだが、学校やバイト先で心地いい雑音を耳にしていると、少しはそれが和らぐ。
厨房から再び出てきた帳さんは僕の顔色を伺うと、チョップチョップ!早くするよ!と言い、出来上がった料理を運ぶようにと指示をした。
いつもは帳さんにイライラさせられる僕だけど、今日はそのムダな明るさに助けられた気がした。
亘くんしんどそうです。




