第七話 バケていく
「置き去りにするなよ~」
外階段でネクタイを外してぼんやりと座る亘に声をかける。
「・・・。悪い」
なんとなくいつもと違って見える亘に、俺はひとつだけ聞いていいかと言った。
「何が知りたいの?」
「・・・。いつもそんな感じだったっけ?」
すると亘は肯定も否定もしないで溜め息をついた。
「もしかして不健全なことしちゃった?」
ちょっとからかっただけだというのに亘は黙りこくっている。
「少し混乱してるんだ・・・」
あどけない顔をした亘は声を詰まらせた。
「僕には二つの選択肢があったんだけど・・・」
気を取り直して絞り出すように言葉を続ける亘を見つめながら、これが彼の本当の姿なのだろうかと思った。
常に優等生のような顔をして俺の隣にいるけれど、今目にしている亘は、なんだか別の惑星から来た悩める生命体のように感じる。
「確かめたかっただけなのかもしれない・・・」
バランスを欠いているような顔をしている亘を見て、なんとなく何があったのかを察し、意外だなと思う。
「おまえだけじゃないよ」
浅はかなことをしてしまったという様子の亘は少しうろたえた。
「えっ?」
「いろんな経験をして、みんな恋愛ってこういうもんかなってたどり着くんじゃねーの?」
俺たちはまだ高校生なのだから、人との関係など容易ではないのだと言いたかった。
「錦って案外考え方が悟ってるんだな」
愉快じゃなさそうに亘が言う。
「知られないようにしてたんだけどな~」
「・・・・・・。征服感」
遠くを見つめる亘の目線を追う。
「・・・。何が?」
「あの娘が泣くまでああいうことをして・・・、その後そういう気分になった」
それを聞くと見かけよりもずっと亘の中には未知数の人格がいそうだなと思った。
内心穏やかではありません。




