第六話 Triggering factors
狙いを定めてダーツを放ったが、おしいどころかささりもしなかった。
姉に呼び出されて不承不承ダーツバーに初めて来てみたが、すごく居心地が悪い。
力なくダーツを拾って近くの椅子に座ると、近くから視線を感じたので、ふっとそちらの方を見ると含み笑いをしている女の子がいた。
2,3歳年上かなぁと思っていると、彼女は立ち上がって僕のとなりにストンと腰を下ろした。
「帰りたいなって顔してる」
初対面の娘に何と答えたらいいのかわからず、僕は苦笑いをして受け流した。
「そんな身構えないでよ~」
「はあ・・・」
ぎくしゃくしている僕に彼女はあなたって明日香さんの弟さん?と聞かれた。
「そうです。亘といいます」
「ふーん。明日香さんて実家なんだっけ?」
「はい。一緒に実家に住んでます」
すると女の子はいいな~と言った。
「私はたまにしか会えないんだ」
僕はその謎すぎる女の子を観察しながら、外見は大人っぽいけれど、話し方から中身は子どもっぽい感じだなと思った。
「ここには異文化交流をしに来ているんですか?」
酒を飲まないでいるのに楽しんでいるように見える彼女にそう訊くと、どうかな~と言った後ジュースのはいったグラスを上げると、
「とりあえず乾杯しますか?」
と首をかしげた。
何に?という僕に、
「ポーカーフェイスなきみに」
と彼女は笑った。
今日は帰らないつもりなんだ~と呑気に話す彼女の横顔を見つめながら、僕は衝動を抑えられなくなった。
気が付くと僕はラブホテルの一室で彼女の服を強引に剥ぎ取っていた。
僕のことを何も知らないくせに、上から見下すような態度をしてきた彼女が、バイト先の帳さんと重なって、無性に傷つけたくなったのだ。
がむしゃらに彼女を抱きながら、頭の片隅で僕たちの消息を知らない姉は心配しているだろうかと思った。
僕が覚醒してしまうことは、もともと僕の人生のシナリオにあったのかもしれない。
おびえた目をしながら僕に抱かれる彼女を見て、これが僕の生き方だと思った。
フェンスを越えてしまったような気がした。
僕は放っておいてほしかったのに。
人目に付かないようにおとなしく生きていたのに。
泣きながら助けを求めてきた彼女に、僕はとても遠い距離を感じた。
ダーツバーでは自由を謳歌しているかのように振舞っていた彼女が、今は目を背けたくなるような哀れな状態になっている。
初対面の僕の前で、圧倒的な発言力を持っていた彼女。
僕は段々と冷めた気持ちになってきて、これでは彼女の記憶に残ってしまうなと思った。
人に強い印象を与えないことが今まで快適だったのに・・・。
抑制がきかなくなりました(>_<)




